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5. ちっこいオヤジ

今回は少し短めです。

「な、なんて厨二くさいんだ!」


「ちゅ、ちゅうに? が何を意味するのかはわかりませんが、こんなにも早く見つかるなんて……。アイオライズに伝わる伝承では緋の……いえ、セレスレッドアーマーと呼ばれていますが、まさか魔装アイテムだったとは……大変興味深い事ではりますが……うーん」


「せれすれっど……? いやいや、そんな更にゲームみたいな厨二くさいものがあるわけ……って実際俺が着てるもんな」


「はい。申し訳ございませんがユウキ様。今一度、ボクの話を聞いていただくには参りませんか」


「だから、その言葉遣いはやめてくれって言っただろう? ノア」


「で、ですが」


「エルからも言ってやってくれよ。じゃないと俺の理性が……ああああ! もう! はいはい! わかりましたよ! もう何でもやってやるよ! っていうか軽いなこれ! 見た目に反してめっちゃ動きやすいわー! 昇竜◯! なんつって! はっはっは!」


 なぜか某ゲームの技を繰り出す勇輝。

 しかしなぜここでその技なのか小一時間ほど問いただしたい気もするが、今はそれどころではない。


「あわわわわっ。ユ、ユウキ様がとうとう」


「うっさいわ! こんなトコへ勝手に飛ばされるわ、厨二の格好までさせられるわで、理性はガタガタですよ! キャパオーバーだっての! もう何でもこーい! はっはっは! よし、ノア! とりあえずいっちょモフらせてくれ!」


「ちょっ、ゆ、ユウキ様! く、くすぐったいですぅぅ!」の声もなんのその。「ええ感触やぁ。こらぁたまらへんのぉー!」とお構いなしの勇輝は、誰がどう見てもまさしく壊れていた。


 それもそうだろう。見知らぬ土地に飛ばされ、行く先も見えない中で今度は"ヘ・ン・シ・ン!"してしまったのだから無理もない。


 今では読書が唯一の趣味とはいえ、勇輝はここ数年ではライトノベルの類に手を伸ばしていなかったし、好きだったゲームは辞め、帰宅すれば道場での稽古。休日も稽古と試合ばかりでそこに費やす時間は取れなかったので、次第にそういうファンタジーの世界からは遠くなっていた。


 そう、何より黒歴史の封印が解けぬように稽古に打ち込んでいた背景もあるからだ。正しくは、縁遠くしていた、となるのであろう。決して道場の繁栄に繋がれば、という理由は嘘なんかじゃない。だが、そうする事で黒歴史と思ってしまう事に蓋をするにはうってつけであったのは間違いなかった。そうして壊れながらもモフること数十秒、不意に勇輝の耳に声が届く。


「ほう。勇輝のそういう一面は初めて見たが、中々に面白い」


「……え?」


「それにこうして改めて見ると、おまえは案外父親似なのかもな。その姿ならワシでも見間違うかも知れん」


 エルでもなくノアでもない声。というか聞き覚えがありまくる声がした方へ、ギギギ……と顔を向けると、そこには見慣れた顔があった。


「お、お、オヤジっ!! な、なんで!?」


「がはははは! 想像通りのリアクションで嬉しいわい! いやあ途中でおまえの魔気が消えた時は焦ったが、楽しませてもらったぞ? がはははは!」


「やかましいわっ! て言うか何なんだよあの本は! あれのおかげでこんな砂漠に……って待て待て! オヤジまで何ちゅう格好をし……て……」


 そこまで自分で言って繋がりを得た。たぶん、いや、きっとそう言う事なのだろう。


「ん? もう理解したのか? さすがは勇輝だな! がはははは」


 しかしよく笑うオヤジである。


「ああ、それなりに合点したとは思う。あれもこれも全てオヤジの仕業なんだろ?」


「全てって言うのがどこからどこまでを言っているのかは分からんが、勇輝をここへ飛ばしたのは間違いなくワシじゃない」


「だろうな……っておい! んな訳ないだろ!」


「まぁ待て。とりあえず落ち着け。その前に聞きたいんだが、そこで固まっておる子供は……知り合いか?」


「あ? ああ、ついさっきそこの建物で、ってオヤジの知り合いじゃないのかよ? お、おい、エル? ノア? 生きてるかー?」


 勇輝が光に包まれた後からずっと停止しているエルの肩を揺すってやると、ノアもハッとして勇輝に未だ抱きしめられながらも「エルさまー?」とペシペシとやった。


「お? それはマスコットじゃないのか。精霊か? 子供が従えるにしては珍しいな」


 太田がそう言うと、やっとエルの焦点は戻り、口を開く。


「そうなのよー。このヌイグルミをゲットするまでどれだけ大変だったか、涙無くしては語れないわ! 今のヌイグルミはすごいのよ? こうしてお尻の尻尾を引っ張るとねー? って違うわ! 誰がピンクの部屋でキャッキャウフフしている少女よっ!」


「お、おう、それはスマン。な、なんだか面倒くさい子供だのう」


「ああ……同感だ。で? おい、エルさんや。このちっさいオヤジは俺の知り合いなんだが、お前達は知らないんだよな?」


「ちっさい言うな! 勇輝よ、なんかおまえキャラが変わっておらんか?」


「こんな所に放り出されてこんなもん着せられちゃあね。で、オヤジは何を企んでいるんだ? とりあえずはオヤジが何でああして遊び半分で店をやっていけてるかっていう理由と、オヤジがこの世界の住人かもしくは元住人、なのかはわかったけどさ」


「ねぇちょっとユウキさん? その前に私達にも話すことがあるんじゃなくて? 散々と私達に隠し事のことで文句言った割には随分とユウキにもお返ししなきゃならない事が出てきたみたいね?」


 アホ言うんじゃねぇよ。と頭の中で悪態つく。


「アホって言う方がアホなんですーう」


「今のやり取りを聞いてなかったのか? 俺も今さっき色々と辻褄が合った事が出来たからこそ、こうしてお前達とオヤジから聞き出そうとしてるんだろう」


 念話というのは邪魔くさい力だな、と思えばまたどうせ読まれるだろうと、スルーして口にする。


「だって私、今さっきお花畑から帰ってきた所だもの。そんなの知らないわよ」


「ある意味キャッキャウフフしてたんじゃねぇか。ボケになってねぇよ」


「まあまあ、エル様。ここはひとまずユウキ様の話とこのお方のお話をお聞きしましょう。アイオライドの伝承が確かならば、ボク達にも関係がないわけではありませんし」


「ふむ。どうやらただの精霊じゃないようだな。その魔気と知力からすると聖獣に近しいのう」


 ニヤリと口元を曲げる太田に、ノアは「やはり、ですか」と答えた。



本日もお読み頂きましてありがとうございます。


これから更にツッコミ所満載な話に突入して参りますが、

生ぬるい気持ちで読むのを忘れずに、マッタリとお楽しみ下されば幸いです。



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