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18. 二つの伝承

二日ぶりです。



 ザ・執務室。


 入って左側にある木製のローテーブルに、西欧風の2人掛けくらいのローチェアーが二脚。右にはこの部屋の主が仕事をするのだろう、大きな木製執務机に多くの書類がその上へ無造作に重ねられ、今にも崩れそうな山となっている。その後ろには本棚。どんな内容の本かはわからないが、こっそり持ち出してやりたい衝動に駆られる。

 今度機会があったら借りてみようと思う。


 そんな、まさに執務室と言えばこうだ!を形に表わした部屋へと勇輝達は通された。


「やあ、初めまして。君達がユウキ君にエル君だね? 期待のホープだと受付のジェナから聞いているよ。随分と彼女に気に入られているらしいね。どうかな? このセリューは。ジェナが君に見せる好意ほどに君もこの街を気に入ってくれてはいるかい?」


 軽口を言う口に反して、垂れた目に穏やかさはない。戦闘向きではない細身の体に、少し禿げ上がった髪の毛は肩に着いて若干ハネ上がっているが不潔感はなく、白髪というよりは銀髪だろう、あくまで髪の毛に当たる朝日が眩しく反射する。想像していたギルドマスターとはだいぶ違った印象だった。


「ジェナさんがどうかは置いといて。ええ、とても気に入っていますよ」


 当たり障りのないように答えると、「ミューラン。まずは無駄口よりも自己紹介を先にしたらどうだ?」と、威圧混じりにローズが言う。


「はっはっは。いやはや、ローズは相変わらずせっかちだね。だがまぁ、それもそうだね。では改めて。ギルドセリュー支部のマスターを務めさせてもらっている、ミューラン・セズ・イルファンだ。今日はこんな早くからの突然の呼び出しですまないね」


 ミューランが自己紹介をすると、ユウキとエルも頭を下げてから名乗った。


「ティアーナ君とレイント殿は長い道のり、ご苦労様でしたと申し上げよう。それにユウキ君達。昨日は賊を捕らえてくれて感謝する。少しばかりではあるが謝礼金を用意してあるから、後でジェナから受け取るといい」


「え? お金貰えるんですか?」


「そうだ。通常ならああいった賊からの被害報告がギルドへ入ると、こちらでランクを決めてから討伐依頼を出し、冒険者に出向いてもらうんだ。状況によってはギルドから指名依頼することもあるんだがね。ただ今回は偶然とはいえティアーナ君達の一行がちょうど襲われた際に、ユウキ君達が助太刀に入ってくれたのだと報告を貰っている。だから今回は謝礼金という形で用意させてもらったんだよ」


「なんだかすみません。でも助かります」


「いや、こちらとしても助かったからね。あと、デューベル家からも礼金を預かっているからそれなりの金額にはなると思うよ」


「え?」


 勇輝は驚いてティアーナとレイントを見ると、「助けていただいたお礼をするのは当然です」と頷いた。


 俺達だってあの賊が向かってきたから反撃したまでなんだけどな。人生初の賊に出くわしてテンション上がったのも含まれるけど。

 とは言え、領主の立場みたいなものもあるだろう、と素直に礼を受け取る事にした。


「それから、先にこれを伝えておく。今ここにいる皆だけがオータ様との繋がりを持つ。この意味はわかるかい?」


 ここに集まるエルノア以外はオヤジの(つて)だ。オヤジが国王の息子だという事を知っていなければミューランさんも敬称では呼ばないだろうし、『この意味は』なんて遠回しな言い方はしないだろう。

 ということは。


「俺やエルノアの事、それからオヤジの正体も知っている?」


「そうだ。なかなか話が早くていいね。私もローズもレイント殿もティアーナ君も、皆君達の仲間だ。オータ様から別世界とか別時代とかの話を聞いた時は、正直頭がどうかなりそうだったよ」


「あー。なんかわかります。あのオヤジの突拍子のなさはもう何ていうか」


「ははは。あれでオータ様はキレ者なんだがね」


「この国の人達はいいんでしょうかね? あんなのが次期国王で」


「こらこら。そんな事は冗談でも言うものじゃないよ? だが、私個人的には賛成だがね。っと、話を進めようか。今日君達をここへ呼び出したのはその賊達に関係していてね。君達の中に"魔人の秘薬"、というモノに心当たりはあるかい?」


 勇輝はもちろん、エルノアもローズも首を振る中、レイントが返答する。


「もしやそれは、禁呪アイテムの事でしょうか?」


「レイント殿はご存知でしたか」


「はい。と言っても聞いた事がある程度ですが。魔力を持たない者であろうと、そのアイテムを手に取れば魔法が発動する、と」


 ミューランは机の上で手を組み、目をつむりながら頷いた。


「それなら回復薬と一緒じゃない? あれだって魔力がなくとも使うだけで体力や魔力回復に至るんだし。言ってみれば回復魔法のアイテム版でしょ? アーティファクトとかのレアアイテムになってくると、使用するにも魔力の流れとかを理解しないといけないから」


「うん。いい所を突いたね、エル君。だけど、その禁呪アイテムというのはそんな生易しい類の物じゃないんだ。なにせその対価が魔人、だからね。私の杞憂で済めばと思っているんだが、あくまで想像だという事を前提に聞いて欲しい。賊達がリスクを冒してでも欲しかったもの。普通ならそれに見合った大金だろうが、同時に捕まる覚悟も、命を落とす覚悟も決めなければならない。だが、絶対的な力で金が簡単に手に入り、捕らえようとする者をまた絶対的な力で退けられる。そんな力が手に入るアイテムを"報酬"で支払うと聞いたら、どうかな?」


「え? 報酬?」


 エルが驚きを声にする。


「ああ。君達が捕らえてくれた賊達は、誰かに雇われていたそうなんだ」


「ちょっと待てミューラン。……奴等が狙ったのは金品類などではなく、ティアーナの拉致が目的だったた……という事か?」


 言いながら殺気が上がっていくローズに、隣に立つ勇輝は冷や汗が出るほどだった。


「落ち着こうか、ローズ。それではまだ半分だ」


「どういうことだ?」


「確かにティアーナ君を拉致しようとしたのは事実だ。だが狙いはそこじゃない」


 ミューランがローズに向かってそう言うと、その目線を勇輝へと移した。


「ユウキ君、キミだ。いや、正確にはその腕に嵌るハリオベル、だね」


 怪訝そうに勇輝が左腕を見る。


「こんなのが狙い?」


「いや、こんなのってユウキ君。それがどういうものか、エル君やノア君、それにオータ様からだって聞いてはいるだろう?」


「聞きはしましたよ。結構レアなアーティファクトだって。身体能力を上げてくれて、魔力とかも引き上げてくれるアイテムですよね? あ、あと昔は呪いの類があるとか信じられていたそうだけど、ただの噂レベルだったとか………って、な、なんだよ」


 確かそんなことをオヤジが言っていたよな、と思い出しながら話していると、みんながどんどん「な、なんて不憫な子なんでしょう……ううっ」と言いたげな視線を勇輝へ向ける。


「ユウキ、本当にそれだしか思い出さない? 私やノアについては?」


「は? だってこれの話だろ? なんでエルの……ああ」


 合点がいったように、手をポン、とついた。

 エルの故郷に伝わる伝承か。エルノアが俺を見て『勇者さま』って言ってたな、と思い出す。


(けい)がもたらす7つの混沌、陽がもたらす7つの福音、一つになる(とき)、道は開かれる」


 ミューランが話す。


「今のユルドに伝わる伝記だよ。そしてアイオライズにあった『天星の緋色落ちる時、菫にて無色を伝い、巡り合いとて祖を救う』だったかな?」


 羊皮紙に書き出しながらエルへ確認すると、コクリと頷いた。


「エル君の祖国にあった伝記と似ているだろう? 両方にある菫、それに陽と緋、福音と祖の救い、という部分が」


「この1000年で変化した、ってことです?」


「オータ様の話ではそこらへんは確定していないそうだが、同じ意味を持つという考えでいいそうだよ。つまりは、祖を救い、福音をもたらす力を持つであろうハリオベルの存在が誰かに漏れている、ということだね」

お読み頂きましてありがとうございます。


さて。

とってもマイペースに書き殴っておりますが、もう少し先の話数あたりで

あれ?これ書き直しか?的な新たな話の流れが浮き出てしまい。


もしかしたら書き直す部分が多々出てくるヨカーン

プロットってなにそれ初耳ですけどー


きっとそういうのも、ここ なろう の楽しみの一つですよね。

うんうん。

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