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氷は陽射しで溶けるもの
「おーっ!おはよう!」
学校への道を歩くクラスメイトの後ろ姿を見つけて、自転車を飛び降りる。
「……どうも」
ゆっくりと振り向いて、毎日のことながら氷の瞳、他人行儀な挨拶。2-4の雪女は今日も健在だ。でも。
「今日は名前呼ばなくても振り向いてくれたね!」
顔を覗き込むと、彼女はそういえば、と口を押さえた。
「……だって、まあ、そろそろ慣れたし」
ぼそぼそと呟く彼女は、思い切り目を泳がせている。雪女の白い頬はほんのり赤く染まっていた。
「……なに……」
「ん?暑そうだなと思って」
「馬鹿にしてる」
つん、とむくれた。今からこんなに魅力的な君の、氷が溶けて春が来たらきっと咲く笑顔を、俺が見たいから明日も。