序曲(プロローグ)
投稿第一作、どうも紅釦と申します。
頭の中で湧き水のように沸いてきた物を「書こう」と思い、書きました。
文法がおかしい、読みにくい、など多々あるかと思いますが
生暖かい目で見守ってください。
尚、「まだ序章」です。
平穏、常識、日常、それらは全て崩れ去った。
誰もが皆、「この国は戦争とは無縁」などと思い込んでいた20云世紀。
その考えは、数世紀後に潰えた。
2XXX年、科学的に各国が発達した時代。
エネルギー機関、日常的に扱われる機械、乗り物、全てが進化を遂げていた。
だが、人間だけは変わらず、常に権力や偽物の平和を求め続ける。
日常の裏側。
「戦争も進化した」
この戦争は、「力による平和」を求めた理想主義者同士の愚かなる、争いだ。
「奴を討たねば我等が討たれる」「全世界を征服し、得た者が敵無き新たな世界を作る者」
愚か過ぎる理想の下、戦いに身を投じて行く者達は何を思う。
「ええい!とにかく撃ち続けろ!機兵とて無敵では無い、次弾を込めそのまま放て!機銃は地上のアリ共を掃滅しろ!」
廃墟と化した街、元は都心などと呼ばれていた場所だ。
栄えていた頃の面影も無く、ビルは崩れ、かつて道路だったと思われる物はヒビが入っている。
そのその廃墟に戦車が3台、「何か」を撃ち続ける。
その「何か」とは「体長7,8mはあるであろう鋼鉄の巨人」だ。
鋼鉄の巨人は「機兵」と呼ばれる兵器、この「連合大戦」が起きる前に完成させられた兵器。
二足歩行、道具の使用、人間とほぼ同じ動作を行える戦闘用ロボット。
日本のある理想者により作られ、改善を繰り返し、今も尚強化・改善を続けられる兵器だ。
戦車に代わる「地上主力兵器」、頑丈な装甲、強力な武装、何より戦車との大きな格差は「一人が乗れば機兵の全身を動かせる」事。
戦車の場合では、主に操縦を行う「運転手」、着弾を予測する「観測手」、その観測手が狙った位置へと砲撃をする「砲手」
など、1台の戦車を動かすに当たり、何人もの兵士を動員していた。
だが、その戦車より強力な兵器「機兵」、それは「一人一体の機兵に乗り、従来の歩兵部隊で行っていた行動を行えば良い」だけなのだ。
「全く効いていないのか・・・!?」
「隊長!第二部隊が壊滅したそうです!撤退命令は・・・」
「出ていない・・・そろそろ頃合か」
「隊長!?うっ・・・」
突如、車内が揺れる。
砲手がハッチから頭を出すと、戦車が宙に浮いていた。
正しくは、高所に持ち上げられているようだ。
「戦車隊!後ろに下がって基地に戻れ!」
若い男の声が響く。まるでマイクエコーでも掛けているようだ。
砲手は周囲を確認するが、見えた物は機兵の「胴体」だ。
つまり、今「機兵に持ち上げられている」という事である。
「その機兵・・・正宗・・・?機兵部隊か?」
「部隊?なんだそりゃ。ただ分かるのは俺の配属された軍は「新日本陸軍」で、数人が緊急発進させられたって事だ。」
正宗と呼ばれた機兵は、戦車を襲っていた機兵よりも装甲が厚く、背中には機兵用の自動小銃を背負っている。
その後ろにも、正宗が3機、小銃を構え、他の戦車を守るように立っていた。
機兵・正宗はゆっくりと手に乗せた戦車を廃ビルの裏側へと置く。
「これでいいんでしたっけ、「銀輔少佐」」
「うむ、良くやった・・・ヒヨコ共の中では上出来だ、次の任務を下す。目の前の鉄屑を壊せるか?」
「「壊せるか」じゃなくて「止める」んじゃなかったんですか」
「・・・揚げ足など取るヒマがあるならばせっせと働け」
銀輔と呼ばれた白髪に隻眼の老人との映像通信を若い男はコックピット内で行いながら、操縦桿を握りなおす。
そして、若い男を乗せた正宗は「駆けた」。人間が走る様に、両足、両腕を動かし。「駆ける」
破壊対象の機兵は4,5発、手に持っている機兵用拳銃の引き金を引き、弾を放つ。
しかし正宗は弾を受けながらも、対象の機兵の正面まで立ち、右腕を引き、そのまま突く。
その「鋼鉄の正拳突」は相手の機兵の胴体を銃弾を直撃させられた鉄板が如く、撃ちぬいた。
「任務完了」
「わしは横文字は嫌いだ。」
「すいません。」
若い男は銀輔と会話をしつつ、敵の機兵の機能停止を確認する。
胴部の前面装甲に機兵の拳大の穴が開いている事を除き、機兵はほぼ損壊無しの状態で機能を停止させられている。
倒れている敵機兵に近づき、胴部の穴を覗くと、内側では操縦者、と思わしき人間が気を失っていた。
胴部に存在するコックピットに衝撃を与え、操縦者を気絶させたから、この機兵は胴部損傷だけで済んだのであろう。
「操縦者の生死はともかく、敵機兵の状態は。」
「胴部損壊、それ以外は目立った損壊は無し。操縦者に傷は無し、流血も無し」
「・・・では、その機兵を本部へと運んでくれ」
戦車の退避を行っていた機兵も集まり、倒れている敵機兵の間接を折りたたむ。
一体の機兵に乗っていた男は機兵から降り、コックピットの操縦者を装甲車まで運ぶ。
折りたたまれた機兵は、トレーラーに乗せられ、運ばれていった。
戦車の護衛をしていた正宗の操縦者が銀輔に無線を繋ぐ。
「・・・これは野盗の機兵です。操縦者に軍服の着用は無し、軍の照合番号も有りません。」
「ご苦労だ、ゆっくり帰投するがよい。」
その一言と共に、銀輔の無線は切られる。
言われた通り、ゆっくりと機兵・正宗3機が歩きながら、トレーラーを追っていった・・・
東京・埠頭付近新日本陸軍基地
正宗三機が埠頭近くの大きな「工場のような建物」へと入り、横に並び、膝立ちの姿勢を取る。
胸部の装甲が下へと降り、そこから若い男が2人、恐らくその男達より若い女が1人、機兵から飛び降りる。
「お疲れさん。あの機兵の入手経路はじっくり少佐が聞くそうだ。」
黒い髪を腰ほどまで伸ばした男、戦車を守っていた男だ。
その男が缶珈琲を二人へと投げ渡す。
「・・・買ってたのか・・・」
「何時間前のよ・・・これ。」
「任務開始の数時間前だから、ざっと2,3時間じゃないか?飲めないモンじゃ、ないだろ。」
長い髪の男は自身の軍服のポケットから自分の分の珈琲を出すと飲み始める。
だが、数秒後に咽る。
「くそ、やはり飲めないな。」
「兄さんは珈琲苦手でしょうに。」
「2人の初任務、3人無事に帰ってこれたから祝い酒、って訳にもいかないだろう?酒自体ここに仕入れる事が珍しいしな。」
黒い髪を後ろで束ね、ポニーテールにしている女は缶のタブを外し、男とは違い、平気な顔で飲み始める。
その後ろで銀輔と通信を行いながら、敵の機兵と戦闘をしていた茶髪に少し黒い髪が混じった癖毛の男も缶のタブを外す。
少し啜ってから片手に缶を持ち、もう片手で先ほどまで乗っていた機兵に触れる。
「どうした?忠司?初任務、初戦闘でビビったのか?」
「い、いや!全然!それより怜治さんこそ護衛するのにビビってたんじゃねえの!?怜奈も!」
癖毛の男の名は「石田忠司」、新日本軍の陸軍訓練生であったが、今日正式に任務の小隊に配属された。
ポニーテールの女は「霧島怜奈」、忠司の同期生であり、この任務での小隊長、長髪の「霧島怜治」の妹だ。
「わ、私は全然!というか戦車一台守ってるだけだったし!兄さんだけじゃないの?」
「ああ・・・怖かったさ。そりゃ。」
怜治は胸ポケットからライターを取り出すと、蓋を開き、火を着ける。
タバコも、紙も無いが、その小さな火だけを見つめ、声を発す。
「戦場ではいつ死ぬか分からない。あの状況でもう1機敵機が存在し、遠距離から狙撃されていたら俺は・・・」
指で銃を作り、自分の額へと突きつける。
そして、撃つ真似をすると、口元を笑わせ、ライターの蓋を閉じた。
「まぁ、何だ?怖かったが、アメ公共と正面切るよりは気楽だったぞ。」
「何時死ぬか分からない・・・そいつは怖・・・」
「暗い顔するなよ!早々簡単に正宗の装甲が破れたりはしないさ、さっき何発が銃弾を受けただろ?あの通りさ。」
怜治は忠司の肩を叩き、笑顔で正宗の胸部装甲を指差す。
弾痕はあるが、数センチほどの深さしかない。
「それに、だ。俺や、怜奈、銀輔少佐も、他にも沢山仲間が居る。皆で協力すればまず死ぬ事なんて無いさ。」
「まぁ、兄さんがピンピンしてる訳だから大丈夫でしょ、だから忠司もそんなビビらなくて大丈夫だって!」
「ビ、ビビってねえよ!考えてただけだ!」
「・・・おい、ヒヨコ共、作戦報告はどうした?」
「げっ。・・・あ、あの・・・捕虜の・・・尋問は・・・?」
ゆっくりと軍靴の足音を響かせ、鉄製の階段を降りてきたのは軍服に白髪、そして腰に日本刀を差した老人。
片目には真っ直ぐ傷が入っており、閉じている。
「平内銀輔」、先ほどの任務で映像通信で指揮を執っていた男だ。
「ヒヨコだけだと思っていたら、ニワトリも1羽混じっているな。」
「ど、どうも平内銀輔少佐・・・そ、そうだ!少佐も1杯いかがでしょうか!」
「いらん。わしが海を渡った国の飲み物が嫌いと知っての発言かね?霧島怜治伍長。ところで・・・軍鶏のヒヨコはどいつかね。」
周囲を見渡し並んでいる機兵を見ると同時、整備している軍関係者休憩をしている軍人
全員の顔を銀輔は見ていく。
そして一通り見てから頷くと、目の前に立っている怜奈と忠司を見る。
「わしが聞いた鳴き声は雄の軍鶏ヒヨコだったな、という事は貴様か。」
ポン、と忠司の肩へと手を乗せる。
しかめっ面で目を合わせてくる銀輔、必死に目を逸らしているものの、額に汗が流れる。
「・・・貴様、名乗れ。」
「お、俺ですか!?」
「貴様しか居ないだろう!!」
声を張り上げると、周囲が静まり返る。
整備をしていた者、休憩していた者も全員だ。
上の階で話をしていた軍人達の中には転んだ者も居る。
「石田忠司、一等兵であります!」
思い切り頭を下げ、汗を床に垂らす。
無礼を働けばきっと腰の刀で斬り殺される、という思いが渦巻く。
しかし、銀輔の反応は予想外であった。
「頭を上げろ。」
「はっ!」
「こうだろう、一等兵にもなり、貴様は挨拶程度の事も忘れたのかね?石田忠司一等兵。」
腕を掴み、敬礼をさせると、一歩下がり、銀輔も敬礼をする。
口元は笑っている。
「・・・直れ。」
「はっ!」
「うむ、良いな。先程の戦闘、見させてもらった。正宗の特性を生かした良い判断だ。
だが、命は惜しめ、一等兵。使えるならば銃を持て。」
「了解であります!」
「それとわしの前ではなるべくで良い、完全に統制する訳ではないが外来語はあまり使わないでくれ
頼んだぞ。無論、隣の二人も、だ。」
帰り際に振り向き、3人を見てそう言い放つ。
3人は並んで敬礼をし、銀輔を見送った。
銀輔がドアを開け、各施設の存在する区画へ行った後・・・
「死ぬかと思ったぜ・・・」
「そりゃ、この新日本陸軍基地東京埠頭支部の鬼少佐だからだからな。」
「な、なんであのジイサンはいきなり怒鳴るのよ・・・」
「さぁ?俺が入った時からあんな感じさ。ただ・・・良かったな、忠司。」
「へ?」
「少佐に気にいられたな。」
笑顔で珈琲を啜り、再度咽る怜治を横目に、怜奈と忠司は唖然としていた。
あの鬼のような上司に「気にいられる」という事がどういう事なのか、理解が出来ず。
それは良い事なのだろうか?それとも。
「銀輔のジイサンに名前を覚えてもらえる兵士なんてのはこの基地じゃ少ないんだ。興味が無いのか老ボケか知らないけど、数人くらいしか覚えてないんだ」
「・・・良かったね、忠司。」
「軍人って・・・こんなもんなのか?怜治さん?」
「ああ」
男二人は悟った目で、帰ってくる機兵、出て行く機兵を見つめている。
そんな悟った目の怜治の肩を怜奈が叩き、目を覚まさせる。
「ねえ兄さん、さっき少佐が忠司に言っていた「正宗の特性」って何なの?」
「ん、ああ。特性か。正宗の腕部関節には大型の杭撃ち機に似た装置を搭載しているんだ」
「装置?」
「ああ、まず腕を引いて、相手をパンチする構えを取ってみてくれ」
怜奈は腕を引き、今にも右ストレートで怜治を殴りそうだ。
足や、左腕の構えも様になっている。
「で、そのまま撃ちだして・・・みっ!?」
「大丈夫か!?怜治さん!?」
見事に怜治のみぞおちに右ストレートが炸裂する。
忠司の肩を借りながらも、みぞおちを抑える。
痛みが治まった頃、また話を再開させる。
「・・・で、でだ・・・その時に腕と手の間の関節に仕込まれた装置が・・・動くんだ。」
「具体的に?」
「この人間の間接に、もう1個、前後する間接を加えた感じだな。間接を引っ込める事により
圧力か何かがそこに溜まる、だったかな?」
「なるほど
それで殴った瞬間にバネみたいに思い切り間接の部分に溜まった何かが飛び出して勢いがさらに着く、と。」
「その通りだ、これが「衝撃発生間接」と呼ばれる正宗に仕込まれた装置だ!・・・溜まった何かについちゃ上層部がだんまりだけどな。」
そう、怜治の言う通り、忠司の操縦していた正宗が相手の機兵の装甲を打ち破ったのは
この「衝撃発生間接」のお陰だ。
腕を後ろに引くと同時に内部のバネやピストン機構がそれに合わせ、後ろへと強引に押し込められる。
この時、特殊な圧力が働き、その機構に力を加えるらしい。
そして、勢い良く手を突き出すと、機構も同時に勢い良く前に飛び出し、手の辺りを一時的に衝撃波が包み込む。
これが正宗の特殊な武装「衝撃発生間接」だ。
引く力によって装置の力も変動する為、完全に破壊をしないように制御することも可能である。
その為先程の戦闘のように、操縦者が思い切り殴る体勢を取っていなければ、軽く装甲を打つ事も可能だ。
「へぇ、凄いじゃん、忠司」
「俺、全く知らなかったんだけど」
「まぁ、実戦で使うかどうかは、別だけど。コイツは正直・・・1VS1で尚且つ相手の銃器が弱けりゃ使い易い・・・いや、これは後でいいか」
「気になるって!」
「メシだメシ!任務で体が疲れたのもそうだが、少佐の話で精神的にもやられた!とっとと食堂行ってメシ食おうか!」
怜治を先頭に、二人は溜息を吐いて付いていく。
それと同時、施設内に鐘が鳴る。
支部の全部隊が帰投し、施設の防壁などを閉めたのであろう。
これでこの支部の1日の戦いは終わった、明日は一体、何人が駆りだされ、何人が帰ってくるのだろうか。
同時刻、新東京新日出町、新日本統制機関・本部
巨大な洋間に長机、椅子を並べ、酒を飲み、豪勢な食事を取る老人や、勲章を大量に軍服へと付けた巨漢が席に座っている。
新たな国の思想を作る者達の集団、政治・外交、それらを取り仕切る集団である「新日本統制機関」の幹部だ。
中央に座っている白髪、長髭の細い老人は唐突に机を殴る。
「どうかなされましたか、皇」
皇と呼ばれた老人、不愉快そうな顔をし、尋ねた巨漢を睨みつける。
他の席に座っていた、異国人と思わしき者達もその「皇」に注目する。
「・・・おぬし等、まだ統制できておらんのか・・・?」
「・・・お言葉ですが、皇、現在我が国に攻め入る国は米連合に加盟している2国のイタリアの者達、エジプトの者達に加え・・・」
「言い訳など聞きとうないわ。彼奴らを追い出し、はよう我が国に大平を築くのじゃ」
この「皇」と呼ばれる老人こそが今の新日本の頭であり、新日本が戦争へ介入する原因となった男だ。
その皇の怒り顔を見て、皇の横に座っていた黒い軍服の若い軍人が鼻で笑ってから立ち上がる。
「禁煙だ!」
「硬い事言わさんな」
ポケットから葉巻を抜き取ると、ライターで火をつける。
そして、煙を思い切り皇へと吐きつける。
「・・・アンタはアンタの国をどうしたいんだ?ええ?皇さんよ」
「・・・大平を取り戻す。それだけじゃ」
「さてな、それが可能かどうか。」
「独逸代表、お引取りを」
「おおっ?怖い怖い」
白髪の老婆が車椅子で黒い軍服に身を包んだドイツ人へと寄る。
「鬼の形相」まさにその言葉に相応しい表情だ。
「あんた等もうんざりしてるんじゃないか?自分等のやった事に対して。攻め入って領土を手に入れりゃそこで反乱が起きる」
「其の通りではある」
皇は頷き、目を閉じている。
ドイツの代表はタバコを吸いながら、話を続ける。
「お前等が返上しない限り、戦いなんて終わらない。勿論俺の親父もだ」
「代表代理、か。お主に何が分かろう?・・・父の思想も理解できぬ、愚かなる子め。」
「チッ、分かりたくもない。親父の思想なんて。俺は俺の意見を言う為に・・・おい!?どういう事だ!」
気が付けば周囲に同じ軍服を着た軍人に取り囲まれ、ドイツ代表・「代理」を連れ去っていく。
白髪の老婆と、巨漢の新日本軍の軍人、皇が残る。
「・・・仏蘭西代表、分かるであろう?この思想。」
「勿論、全ての国を統一し、今一度「新世界」を創生する。」
「その通りじゃ、腐りきった世を変えるのは我々の連合。血気盛んな奴等にはやらせん」
「・・・皇、私は少々失礼します」
礼をすると、巨漢は廊下へと出る。
そしてその廊下からエレベーターに乗り、上へと上がる。
そこに見えたのは「廃墟」。そう、本部は地下に存在している。
外に出た巨漢は溜息を吐くと、タバコに火をつける。ドイツ代表代理とは違い、葉巻ではないタバコだ。
「・・・愚かな。腐りきったこの世界、作ったのは紛れも無く、皇、貴方だというのに。」
静かに怒りを表し、横にあったコンクリート壁を殴る。
力が強いのか、壁が脆かったのか、粉々にコンクリート壁は砕け散る。
「・・・この連合も、全て・・・愚かだ。腐りきっているのは首脳共、新世界など創造は出来ん。私達は・・・人間だ。・・・何だ?」
巨漢のポケットに入っていた無線機に通信が入る。
すぐさま手に取る、というよりは「つまむ」という表現が合うだろう。
つまみ上げ、応答をする。
「・・・・・・お前達数人で征服する必要などは無い、不可能だ。私から任務を与える。」
本来であれば、軍法会議にかけられても良いレベルの行動だが、幸い皇や、首脳部は地下何百階だ。
片手にタブレット端末を持ち、「巨大な造船所」のような地図のデータを送信する。
「・・・この造船所に存在する「箱舟」を奪取し、旧八丈の船着場へ頼む。操舵?旧海軍の者が居たはずだろう、では。」
無線を切ると、ため息を吐く。
その溜息は反乱に対する背徳でもなく、皇に遣える疲れでもなかった。
この溜息の意味は、彼のみぞ知るであろう。
「これで、始まる。」
この日、全てが動きだす。
戦いも、大平への道も、彼の新兵達の生死も。
彼等は「戦い」という地に追放された追放者(Exile)か?
もしくは、「戦い」という概念を追放する追放宣告者(Banisher)か?
機兵、箱舟、皇、軍隊、これらが生み出す物は、破壊か?創造か?
人間が追放され、追放する者達であるならば
こう呼ぼう「Banishile」と