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第四話

「もう行ってしまうのか」

「はい。急いでいるわけではないですが、いつまでも留まっているわけにもいかないので。大事にはならずに済みましたが、昨日のようにガルーダの劣化種が襲ってきても困るでしょう」

「……そうだな。俺個人としては困らないが、ここの村長としては見過ごせないことだ。仕方が無いな。余裕があればまた帰りにでも寄ってくれ」

「ええ。ではまたいつか」


 宴会の翌日。村を発とうとする俊紀達を出迎えにオルムが村の端までやってくる。俊紀の言うとおりに何事も無かったかのように片付けられたガルーダらしき魔物の劣化種の襲撃だが、普通に考えれば村の壊滅の危機であったのだ。本当は引き留めたいオルムだが、村の安全を保つと言う役目が有るため厄介事を引き付けかねない俊紀達を引き止めるのも難しい。よって引き止めたいという本心がだだ漏れの渋い顔でオルムは寂しそうに見送りをする。











「さて、昨日は散々な贈り物を頂くところだった訳だが……しかしまたおかしなことが起きるものだ」

「知能と誇りの高いと言われるガルーダが意図的にあんなことをするとは思えないしな。普通なら生まれた時点で排除されるはずだし、面倒事かもな。早速登るか」


 エルフの集落から出て、森を山の見える方向に真っ直ぐ突きぬけ約15分。獣道という表現が正しい山道が見える場所まで来ると、山を見上げながら軽く言葉を交わす。


 なお、この山は獣道が少し続いたかと思うとすぐに反りかえるほどの断崖絶壁が立ち、その上鳥型の魔物が襲ってくるロッククライマー涙目の険しい山となっている。


 そんな難易度を誇るこの山の頂上付近の霊峰にガルーダは住みついている。俊紀の言うとおり知能が高く、人語を理解し、また、認められた者以外にはその姿を見られることすら拒むある種傲慢とも言える誇りを持っている。


 劣化種と言うのはそんなガルーダから漏れ出る魔力から生まれ出る、ガルーダ自身に言わせれば垢やゴミのようなものであり、そのような物が出れば基本的にガルーダ自身がそれを排除する。排除されずに残っていたと言うことはやはり何かしらの異常があると考えて良いのだ。


「しかし、この崖も懐かしいなー」

「真面目にロッククライミングしていたころは何度落とされたか」


 山登りから崖登りに変わったところで、攻略当時のことを思い出して雑談を繰り広げる2人。シロノは悠司の背中にへばりついている。


2人がこの崖の攻略に手間取っていたころ、他のプレイヤーも同じく崖攻略に勤しんでいたが、この手の物が苦手なプレイヤーは当然存在する。その時に現在のシロノのように他のプレイヤーに背負ってもらったり、吊ってもらったりするのは有効な手段の1つであった。


 しかし、現在俊紀と悠司は時々来る魔物を叩き落としながら登り続けているが、真面目に登っているわけではなく、魔法を使って崖に垂直に立ってごく普通に歩くように登っている。攻略が進むころには今2人がしているようにこのような崖登りの手段も開拓されていた。


 よって、真面目に登っていない現在の状態ではシロノは悠司の背中に貼りつく意味は無く、本人がそうしたいだけだろう。


「この魔法が見つかる前はほとんどが自力で登るか崖から階段みたいに壁生やしてたからな」

「魔法名もウォールウォーキングでこの為だけの魔法じゃないかとしか思えないしな。足場は少し悪いが」

「実際にはいろんなところで使ったけどなー、闘志の塔とかだと外壁登って最上階の窓から殴りこんでみたり」

「必要に駆られて使ったんじゃなくって、面白そうだったから使ってみたんだろう、それは」


 この魔法、ウォールウォーキングはその名前の通り壁を歩くことを可能にする魔法だが、実際には天井を歩くことも可能だったりする。魔物の多いダンジョン等も天井を歩いて戦闘を回避したり、今俊紀が言ったように窓から侵入するなどの手段で卑怯ともとれるような方法で攻略をすることが可能だったりする。


 とは言っても、この魔法はMP消費が継続型の魔法なので、いきなりボス部屋に殴り込みをかけるほど塔の外壁を登ったり、天井を歩き一切の敵を無視して攻略するなどプレイヤーのレベルが足りなければ不可能である。何れにせよ、苦労なしに楽はできないのだ。


「よし、着いたな。少し休むか」

「計17匹、ウィンドバードがお亡くなりになったな」


 崖の上まで登ったところで俊紀が荷物を腰を下ろしたところで悠司が崖を登っている途中で撃ち落とした魔物の数を確認する。なお、余談ではあるが、俊紀達はウインドバードを撃ち落としただけで死亡したのは落下ダメージの結果である。


「ふいー……さて、腹減ったな。昨日色々と貰っておいたから色々有るぞ」

「お、おう」


 腰をおろして一息つくなり荷物の中から昨日見た覚えのある物を次々と取り出し始める。それに1番に反応したのはシロノで取り出されるものの端から手をつけ始める。そこそこの量を取り出したところで俊紀と悠司も少しずつつまみ始める。


 と約1時間後、昼食にしては少し重いメニューを済ませ、同じく昨日貰っていた飲み物を飲んでまったりしていたところに1つの大きな影が接近する。


「……!悠司!」

「ん?ああ。敵意は今のところないから放っておいたんだが」


 その影は辺りにとてつもない風をまき散らしながら俊紀達の近くに降り立つ。雄大な巨体にエメラルドの如く輝く翼。磨き上げた翡翠のような2つの鋭い眼が3人を見下ろす。


「遅いではないか……」

「……ガルーダ、まさかそちら側から来るとは思わなかったな」

お待たせしました。


余談ながら、今回の話を書きながら、まったり登山ピクニックの回というサブタイトルを思い浮かべてました。

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