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第一話

 翌日。出発の準備を前日の内に終えていた俊紀達3人は朝食を終えたであろう時間を見計らってギルドへと向かい職員に話しをつけ、エルフの子供たちを伴い転移アイテムを湯水のように使い、大陸と大陸をつなぐ橋から最寄りのエルフの集落までやってきていた。


「そこで止まれ、人間」


 しかし、待っていたのは歓迎ではなく警戒心を露わに弓と槍で武装した十数人の人間の成人男性とそう見た目の変わらないエルフ達であった。


 後ろに同族の子供たちが居る上で武器を構えているのに向こうも多少の抵抗を覚えているのか若干の申し訳なさのようなものが顔に滲みでている。しかし、それでも武器を下げないのはここ最近の人間の行動を考えれば当然のことと言えるだろう。


 実際に多大な問題を起こしたのは俊紀達ではないが、他の種族からして見れば彼ら3人も人間と言う同じ種族であることに間違いはない。問題を起こした本人ではなくとも同じ種族である以上、また同じようなことをしないとは限らないのだ。


「……話がしたい。駄目か?」

「……」


 武器らしいものを持たず、両手を上げ抵抗の意思を見せない俊紀達に、一番前に立つ男性は若干気を抜いた顔になり、体の隅から隅までを観察する。そして、今のところ害は無いと判断したのか持っていた槍の穂先を地面に落とし口を開く。


「よし、良いだろう。しかしその場から動くな。妙な動きをすれば後ろの弓兵が矢を放つ」

「分かった。単刀直入に言おう。俺達の後ろに居るエルフの子供たちを返しに来たんだ」

「何故だ?奪ったと言うのに何故わざわざ返しに来るようなことをする?」


 自分たちの用件に返してきた言葉に思わず一瞬目を見開いて驚く俊紀。自分の子供ではないかもしれないが、同族としてその言葉はどうなのだろうか。しかし、表情に出たのもその一瞬でそれに過剰な反応をすること無く俊紀は冷静に言葉を返す。


「人間がそちらの子供を奪ったのは、そいつ個人が欲望を満たそうとしただけだ。人間が全体でそう決めたわけではない。子供たちを帰しに来たのは和解をしようなどと言う考えではないが、こちらとしても不始末を放っておくわけにも行かないし、何より子供たちが帰ることを望んだからだ。子供たちを攫った犯人は今頃裁かれているだろうさ」

「……分かった。そなたらの言葉を信じよう」


 俊紀が口を閉じ、数秒ほど間を置いたのちにエルフの男性がその言葉とともに完全に鉾を収める。それを見て3人は子供たちの正面から退き、大人たちの方へ行くように促すと、漸く帰ることが出来る喜びがあふれだしたのか雪崩のように走って行く。ギルドでは大人しくしていた子供たちだが、帰りたいという気持ちは強かったのだろう。


「……先ほどはすまなかった」

「いや、気にしなくていい。人間側がやったことを考えれば当たり前だと思ってるしな。今後こういうことをする奴が出ないように願うだけだな」

「そうか。それで、君たちはどこに行くつもりなんだ?」


 雰囲気が緩んだことで口調が軽くなる先ほどまで槍を構えていた男性と俊紀。その周りでは喜びの声が上がっているので、先ほどまで警戒心が高かったエルフの男性ですら口調がフランクになるのもそう不思議なことではないのかもしれない。


「少し山の方に用事があるんだ。こういうのも悪いんだが子供たちを返しに来たのはその通り道だからってのもある」

「あの山まで行くのか?これまでも結構な数の人間が行ったが、無事に帰ってきたのはほとんどいないぞ」


 俊紀の付けが行き先を聞き、真剣な表情になって忠告をするエルフの男性。俊紀達も知っていることではあるが、今から行こうとしている山は厳しい環境的と、それに対応できるだけの力を持った魔物が多数住んでいる。危険な場所だと言うのはエルフ達の共通見解である。そんな場所に行くと言うのだから子供たちを送り届けてきた恩人であると言うなら止めないわけにはいかないだろう。


「一応危険な場所だと言うのは知っているさ。それを知って準備をしたうえで行こうとしているし、何より、俺達にとっては何か重要な物が有る可能性が高いからな」

「……そこまで言うならこれ以上止めはしないが、行くなら無事に戻ってきてくれ」

「分かった」


 最初の交渉の時とはまた変わった雰囲気の真剣さに若干押されながら、無事に帰ってくることを約束させるエルフの男性。心から願うような様子に俊紀は真剣な表情を頬を緩ませて答える。


「まあ、それはそれとして、だ」

「ん?」

「これから集落で子供たちが無事に戻ってきた祝いの宴をやるんだ。もちろん来てくれるよな」

「……断っても?」

「駄目だ」


 肩の後ろに手を回され、宴に参加するように誘われ断ろうとするも笑顔で却下される。ファンタジー世界の住人と言うのは宴などの祭の類が大好きなのだろうか。などと考えつつ、俊紀は悠司達にアイコンタクトで断れそうにないことを伝える。


「さっきはそんな話は全く聞こえなかったが一体いつそんなことを決めたんだ?」

「連絡の手段なんて色々とある。まあ後で少し話しても良いだろう」


 宴から逃げることを諦め、大人しくエルフ達に連れられ集落に行くことにする3人であった。

ここ最近モチベーションが上がらず執筆が滞り気味です。

更新が遅れることもあるかもしれませんが、どうかご容赦を……

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