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第十二話

 かんしゃく玉を使いゴブリンの巣を跡形も無くした後、ギルドにゴブリンを討伐したことを伝えに戻ると金色の短髪でメガネをかけた職員が俊紀達の元へと駆けてくる。俊紀達にゴブリン退治の依頼を渡したのと同じ人物だ。


「だ、大丈夫だったんですか!?」

「えっと、何がですか?」


 近づいてきたかと思ったら凄い勢いで迫ってくる職員に若干引き気味になりながら問い返す俊紀。確かに現場に居た本人達からすれば何が起きていたのか分かっているので不思議に思うこともないだろう。しかし、その場に居なかったギルド職員は事情が分からないのでこの反応も当然のものだ。


「何が、って貴方達が向かったゴブリンの巣の近くに流星群が落下したという情報が出てきて、その後処理を…」

「ああ、それなら大丈夫です。火炎系の魔法を使ったところゴブリンの巣に火薬か発火性の何かがあったのかそれに火がついて爆発を起こしただけなので」


 ギルド職員の言葉を遮り、さらっと話を捏造する俊紀。実際のところゴブリンが火薬類を持つことはほぼ内に等しいが、ごく稀に巣の建材に火薬の混ざった土が使われていることがある。これまでにも報告例は数件あるので決して話しを聞いただけで嘘だと決めつけることの出来ないところがいやらしい。更に火薬を使ったことは事実なので調べれば逆に真実だと知らされてしまう辺りなかなか策士だと言えるだろう。


「おかげでゴブリン達は木端微塵になって討伐証明部位をほとんど持って来れませんでしたが」

「いえ、爆発はこちらでも確認しているので依頼は達成とさせていただきます」


 ほっとしたような顔で俊紀の差し出す数の少ないゴブリンの討伐証明部位を受け取ると、中身を確認して奥に戻ると、報酬の入っている袋を持ってくる。


「こちらが報酬になります。しかし、無事で安心しました」

「あの程度なら異変を感じた時点で逃げれば大丈夫なので」

「そうですか」


 職員から袋を受け取り、中身を見てから仕舞う俊紀。


「悠司、まだ何かやるか?」

「日も傾いてきているからもういいだろう。それに…」


 悠司に向き直り、クエストボードの方を指さしながら他の依頼も受けるかを聞く俊紀だが、悠司が首を横に振り、自分の横、正しくはシロノを見るように促す。


 シロノは既に目が半分閉じて船をこいでいる。何かと疲れてしまったようだ。普通に考えても子供からすれば結構な距離を歩いている上、雑草の中から特定の物を探すという集中力を使うような作業もしていたので仕方が無いだろう。


「…戻るか」

「ああ」


 俊紀はそんなシロノを見て柔らかい笑みを作ると宿に戻ることを提案する。断るような理由もなくうなづく悠司を連れてギルドを後にした。










「どう思いますか?あの冒険者達」

「…運に恵まれているのか、実力を隠しているのか気になるところだな」


 3人の去った後のギルド内、先ほどの職員と上司と思わしき人物が窓を背にして俊紀達の事に関して話しをする。


「そろそろ村長に許可証の発行を頼んでみては?」

「邪心もなさそうだし、大丈夫だとは思うが。しかし子供を連れているとなると色々と危険だと思わざるを得ないだろう。途中で例の奴隷商人に会ったならば退けられるかどうか」


 1枚の紙を手に取りながらそんなことを呟く上司と思わしき男性。先ほどまで事務に当たっていたからか机の上には様々な書類が散乱している。


「しかし、あの冒険者達に本部がこんな依頼をしていたとは思いませんでしたね」

「それよりも伝達よりも先にこの村に付いている方が異常だと思うんだがな」


 新しく入ってきた職員がそういうと、男性は顎に手を当て考える仕草をする。王都ランゲンのギルド本部から依頼を受けている冒険者の詳細が通達されたのは3人が出て行った直後の事で、通達されるまで重要な人物だと気づくことのできなかった自分を衰えたものだと感じる男性。


 とは言っても、男性は普通に若い見た目をしている人間であり、部下にあたる職員達の方が歳が上だったりする。それでも男性のほうが上司なのは信頼あってのものだろう。


「まあ、村長には依頼の事は伏せ、それとは別に発行を頼んでみよう」

「分かりました。すぐに行きますか?」

「ああ」









 宿屋に戻って来た3人。まず悠司がくっ付いて離れないシロノを引っぺがしベッドに寝かせると、どこからか水差しを出して水をコップに入れ飲み始める。もはや何でもありである。それを見た俊紀がため息をつく。


「現実になって便利になったのは分かるが、くだらないことで使うなよ…。誰か見てたらどうするんだ?」

「周りに誰も居ないことを確認してからやっているから問題は無い」

「はぁ…」


 悠司の言葉に再度ため息をつく。通常の魔法使いなどはMPの消費を抑えるために焚き火を起こす時は魔法を使ったりはしない。だと言うのに、魔法を使って物を用意する悠司にため息が止まらないのだ。


「…ああ、それと今回の依頼の件だが、ここのギルドは白だろうな」

「どうしてそう言い切れる?」

「さっき報酬を受け取っている時に王都側からの使い魔と思わしきものが来てたからな。恐らく俺達に関してのものだろう。信用してなければ連絡など取らないはずだ」

「ふーん」


 自信満々な様子で告げる悠司に軽い返事の飛び出す俊紀。それを見た悠司は若干眉をひそめるがすぐにいつもの涼しげな表情に戻るところからそこまで気にしてはいないのだろう。


「寝るには早い上にまだ夕食を取っていないから何をしようか」

「シロノをおいて宿を出るのも少し問題があるしなぁ…。俺としては一応シロノ用の防具とか用意してほしいんだけどな。攻撃はできても防御はまだ出来ないだろ」


 俊紀が自分達の戦闘の事を思い出し、シロノの防御についての問題を提示する。悠司がそれを聞いて目を泳がせながら眉間に皺を寄せる。何かを思い出す時の悠司の癖のようなものだ。周りから見ると不審者にしか見えないのが残念なところだ。


「…よし。俺は2時間ほど時間を埋められるが、お前はどうする?」

「俺は…、まあ適当に時間を潰すさ」


 各々夕食までの中途半端な時間を埋めるために気合を入れるのだった。

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