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東方融合札  作者: 面無し
7/12

逆さ回転

「魔理沙、今日も宜しく頼む!」


「おう、私に任せとけ!」


 本日は体術を教えてくれるそうな。

相手の弾幕を避けるためには必要とか何とか言ってた。

それにあたって、服を紺色の胴着と袴に着替えて挑戦だ。


「ほらほら、さっきから逃げてばっかだぜ!?」


 魔理沙は先程から箒と拳を使い俺を攻めてくる。

 俺はというと、後ろに下がったり、受け流している。

 やはり、女に手を出すのはいただけないと思う。


「女に手を出す男はだめだと思わないか?」


「えー大丈夫だって、これ練習みたいなもんだし」


 そうは言うが、やはりどこかやりにくい。

女の子を相手にやたらと攻撃することはできない。

 そう思ったところで弾幕って攻撃じゃないかと思った。

そう、俺はもう女の子に向けて攻撃をしていたらしい。

……うん、じゃあ悪いが割りきって攻撃しようか。

やりにくくてもやるしか無いだろう。

 さて、戦るか。


「わかった。じゃあ俺からも行くよ」


 振り下ろされた箒を横に弾き、魔理沙に向けて拳を振る。

が、魔理沙は箒を振り下ろした体制にも関わらず、

一気に上体を起こして後ろに飛んで俺の拳を避けた。


「おお、けっこう動けるんじゃないか」


「いやいや、人里のおっさん達のほうが絶対強いよ。

取っ組み合いの喧嘩も勝った覚えが一度もないからね」


 動けるとかそういうのが有るはずはない。

そういう心得が有るんだったらさっきの一撃を当ててるはずだと思う。

つまるところ、俺には体術の技術は全くない。が、女の子に負ける気はない。


「じゃあ、戦ってみようか。勝ちにいってみようと思う」


「いいぜ、ボコボコにしてやるからな!」


 そう言って魔理沙は俺に向かって突っ込んできた。

ただのタックルだが、これを避けるにはかなり横に動かないといけない。

素人からすると、タックルというのは意外と避けにくい技だと思う。

なので、避けるのは諦め、受け止める方向で行こうと思う。


「よっ」


 腰をかがめ、突っ込んできた魔理沙に上からかぶさってみる。

タックルは相手をこかす技だから、下のほうが有利だ。

しかし、下だからといって勝てるとは限らない。

 俺は足を左右に開くのではなく上下に開き踏ん張りをつけると、

魔理沙の腰に手を回しそのまま逆さになるように持ち上げてみた。


「え? う、うわああああ!!」


 魔理沙が大声を上げる。慌てているであろう顔が想像できて、

戦闘中だというのに少しだけ笑ってしまいそうになる。

 魔理沙は力のない俺でも十分に持ち上げられる体重だった。

 箒や拳で来たならこんなに早く終わることはなかっただろうが、

タックルを選んでしまったのが悪かったということだ。

多分俺のほうが年上だし、男だし、負けるつもりは全くないんだぜ。

 魔理沙を逆さにしたままグルグルとその場で回転する。


「それそれー」


「ま、まってまって、スカートが、スカートがあああ!!」


 スカートがめくれてしまいそうらしい。

が、大丈夫だろう。ここには俺か霊夢しか来ないし、

俺は魔理沙の腰を抱いているために、彼女の背中に顔がひっついている。

見えない見えない大丈夫。飽きたら放してやるさ。


「はっはっはー」


「誰かー!」


「統治ーー!!」


 ん? 何やら少し怒りの混じった声が聞こえた気がする。

 少し止まって見ると、何処からか空気を着る音が聞こえた。


「れ、霊夢待て。それ私も巻き添え…」


「せいっ」


 掛け声とともに魔理沙の方から強烈な衝撃が襲った。

油断しまくっていた俺はそのまま何もできずに倒れてしまう。

魔理沙の背中から出てみると、目の前にはお祓い棒が。


「統治」


「はい」


 怒気のこもった霊夢の声に顔もあげられずに返事を返す。


「何してんの?」


「えっと、体術訓練を」


「女の子を逆さに釣って回す練習?」


 だめだ。これは説得できそうな気配が全くない。

でも、さっきのは俺が悪いのだろうか? 俺何も見てないぜ?

ここはゴリ押しが吉か? やってみよう。


「いえ、戦闘訓練です」


「女の子のスカートの中をさらけ出す練習?」


「いえ、そんなつもりは全くありません」


「無いならするんじゃないわよ!」


 頭を何かで叩かれた。強い衝撃に一瞬目が眩んでしまった。


「ほら、魔理沙も。簡単に捕まってんじゃないわよ」


「いてっ……酷いぜ霊夢。叩かないでくれよ」


「あんたが誰かーって呼ぶから来てやったんじゃないの。

感謝はされても、文句を言われるきはないわよ?」


「はいはい、ありがとうございました」


 そんな二人の会話を聞きながら体を起こす。

魔理沙はこっちを向くと、はっとしたように三角帽を目深に被った。

そして、すこし声を潜めながらこう聞いてきた。


「あのさ、スカートの中……見えたか?」


 年頃の女の子だし、そこら辺は気になるのだろう。

俺も男だし正直すごく気になる。が、そこは置いておこう。

ここは正直に。


「いいや、見えてないよ。俺が見てたのは魔理沙の背中だけだ」


「そっか、じゃあいいや。心配して損した!」


 魔理沙は「あーあ」とでも言うふうに両手を伸ばすと。

すぐに立ち上がって、次は弾幕にしようかと言った。

 実は今日の朝にちょっとだけ弾幕で発見をした。

魔理沙の言う弾幕の命である高火力の弾丸を見つけたのだ。

俺はそれを見せられることに少しだけワクワクしながらボードを取りに戻った。


     ****

 時間は今朝に遡る。魔理沙によると、弾幕は火力とのこと。

だからそ、の言にそって火力の高そうなものを適当に空に放ってみた。

 まずは『広範囲爆殺用光線』というなんとも物騒な名前のものだった。

が、細い光線が一本出るだけで特に何も起きず、とても拍子抜けの威力だ。

 次に選んだのは『広範囲薙ぎ払い極太光線』というもの。

薙ぎ払いと言っているので、案の定大きな光線が目の前をなぎ払うものだった。

しかし、その太い光線も魔理沙のに比べると細いし、少々物足りない。


「うーん……」


 悩みながらも打てる弾丸を選んでみる。

三つ目、一番物騒だし可能性ありの『絶滅の一撃』というもの。

期待に胸を膨らませて撃ってみたが、出てきたのは小さい黒い球体だった。

なんだこれ、名前に負けているじゃないか。これは却下だ。

 魔理沙が来るのでそろそろどれがいいのか見極めないといけない。

最後として選んだのは『流星の尾』となっているものだ。

流星の尾という名前なんだから、それは見事な尾になるはずだ。


「せーのっ」


 掛け声とともに空に向けて放ってみた。

赤黒い巨大な光線が、その巨大さで目の前の空を覆う。

これを放ちながら跳んだなら、まさしく流星の尾に見えるだろう。

これはいい、魔理沙に見せるいいものができた。

と、俺は拳を握った。……というのが朝の話。

 今にもどそう。俺は光線を魔理沙に披露しようとボードをとってきたところだ。


「いいもの見つけたんだ。火力の有る弾丸」


「本当か!? いいぜ、じゃあ後で見せてくれよ」


「おう」


 俺は魔理沙の言葉に親指を立てながら頷いた。

 さて、今回は弾幕バトルの基本、打ち合いだ。

だって勝負なんだし両方が攻撃できないと不公平だ。

と、言うわけで、打ち合いをすることになったわけだが、

残念なことに、俺にはまだ特定のスペルカードがない。

 なので、今回は魔理沙のスペルを避けまくって、

俺は適当に弾幕を撃っての勝負だ。

俺が全部のスペルを避けることが勝利条件で、

俺が魔理沙のスペルに撃墜されるのが敗北条件だ。

 まぁゴチャゴチャ言うよりやったほうが速いだろう。

 俺はボードを足に括りつけ、空に浮き上がった。

 ふと、今朝にはなかった妙なものを見つけた。

人里の向こう、に何やら赤い霧が噴出している。

今まで見たことがないだけに気になってしまった。

幻想郷なら赤い霧も有りえたとしても不思議じゃない。

が、俺にはそれがどこか不吉に見えた。


「統治?」


「あ、ごめん」


 まぁそれはいいだろう。もしかすると俺の勘違いかもしれない。

魔理沙も気にしていないようだし、俺も気にしないでいいだろう。

いちいち細かいことに気を取られるとハゲるらしいからね。

 気を取り直して魔理沙と対面した。うん、魔理沙は可愛い。

やはり、同年代では見たことがないほど可愛い。

美人には美人が寄ってくるとどっかで聞いたことがあるが、

あながち間違いではないのかもしれない。


「じゃあ、開始の合図は私の宣言からでいいよな?」


 そんなことを思って呆けていたら魔理沙がそう聞いてきた。

「いいとも」と軽く返事をして、気持ちを切り替える。

つかえる弾丸は多分無限だ。が、無駄撃ちは避けたい。

焦らず冷静に、よけながら撃墜するのが吉だろう。


「じゃあ、そこそこに頑張ろうかな」


 小さくそう呟いた。

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