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東方融合札  作者: 面無し
6/12

弾幕

「あ、調度良かった。魔理沙、あんたに頼みがあるのよ」


「ん? なんだ?」


「魔理沙に統治を強くしてもらおうと思って」


 俺を強くする? そういえば、博麗の巫女は妖怪退治もするのだったか。

霊夢のお手伝いさんは妖怪退治も手伝えるように、ということだろう。


「えー、私がかぁ?」


 魔理沙はずいぶんと不服そうだ。

 自分がつけようと想わないのに誰かの稽古をつけるのは嫌だろう。

魔理沙の考えは至極最もだ。


「あ、じゃあ、やってくれたら……これあげるわ」


 霊夢は先程買ってきたものの中から、一つだけきのこを取り出した。

人里に先程行った時「めずらしいわね」なんて言いながら採ってきたものだ。

 見た目はすごくカラフルなきのこ程度のものだが、

それを見た魔理沙の視線はレア物でも見つけたように輝いている。


「本当か!?」


「いいわよ、私は必要ないし、あげるわ。

あ、でも、統治を強くしてくれるなら、ね」


「わかった、わかった。任せとけって」


「じゃ、頼むわね」


 霊夢は魔理沙にきのこを渡すと、さっさと神社に入っていった。

 魔理沙は、それを手を降って見送ると、くるりと俺を振り返った。


「じゃあ統治、お前を強くするように頑張ってみようか」


「ああ、うん。頑張るよ。で、何で戦うんだ?」


 魔理沙は俺を強くしてくれるらしいが、

どうやって戦うのか、それを知らなければ始まらない。

それに、できれば殺したり何だりというのは避けたいところだ。


「『弾幕』だよ」


「弾幕……危なくないのか?」


 魔理沙が言ったことが、俺には一瞬よくわからなかった。

俺の十七年の知識で弾幕といえば、銃撃戦くらいしか思い浮かばない。


「ああ、大丈夫大丈夫。怪我はするけど、死なないから……たぶん」


「たぶんってことは、万が一も一応あるわけだ」


「おう、当たりどころが悪ければ死んじまうぜ」


 おそらくかなり物騒な戦闘法なのだろう『弾幕』というのは。

 正直に言うのであれば、命の危険があるならば避けたいところだ。

 が、今の俺にはうれしい特典が有る。元凶の零に、蘇生してもらえるらしい。

紫いわく「粉微塵になろうと大丈夫」らしい。なら、大丈夫か?


「うーん」


「大丈夫大丈夫、向こうも加減してくれるはずだしさ」


「それって希望的すぎないか?」


「……大丈夫だって!」


 魔理沙は俺に大きく迫ってきた。

まぁ、そこまで言うからには……少し信じてみようか。


「わかった。じゃあ、よろしくね、魔理沙」


「おう、任されたぜ!」


 魔理沙は大きく胸を叩いた。


    ****


 魔理沙によると、『弾幕ごっこ』という決闘方法が流行りらしい。

 技名として名をつけ、その名に合った技を契約書などに書き記し、

その技を相手と任意の枚数ずつ使用し決闘する。

被弾して体力が尽きるか、提示した技を全て攻略されると負けとなってしまう。

 そして、肝心な部分は、美しさを争う勝負ということらしい。

 勝負といえど、『殺し合い』ではなく、あくまで『遊び』らしい。

 故に、当たりどころが悪かったら死ぬですんでいるらしい。

 まぁ、まず最初の基本として相手の弾幕を攻略しないといけない。

そのための訓練として魔理沙が選んだのは単純なものだった。


「そらそらー! 当ったっちまうぜー!」


「弾幕の嵐とはこういうことを言うんだろうな!」


 魔理沙から放たれるカラフルな弾丸が俺を襲う。

『遊び』の弾幕らしい、とてもコミカルな感覚を受ける。

 遠目から弾幕を大きく見ると、撃つ必要がないはずの後方含め、

四方八方いろいろな方向に弾幕を放っている。

撒かれた弾幕は一枚絵のようであり、これで美しさを競うということなのだろう。

 カラフルでとっても綺麗だ。


「………いでっ」


 見とれて弾幕に被弾してしまった。意外と痛い。

当たりどころが悪いと死ぬかもしれないとは嘘じゃないな。

これを受けて倒れたのに、無理をすればそのまま死んでしまうだろう。

 そんなことを考えていたら、目の前に弾丸があった。


「あいたっ」


 思い切り、頭を弾丸に強打してしまう。

それによって少しふらつくと、一気にいくつも被弾してしまった。

 大勢に殴られたような感覚になって、息が詰まる。

 強打で怯み、落ちそうになったところを、箒に乗った魔理沙に受け止められた。


「大丈夫か? 途中まで良かったのに、一気に当たったな」


「ああ、うん。ちょっと見とれちゃってね」


「え? ああ、そうか、うん。……ありがとう」


 魔理沙は照れくさいのか少し顔をうつむかせて頬を掻いた。

彼女は意外と小柄なようだ。帽子があるから気付かなかったが、

霊夢より少し小さく、ちょうど撫でたくなる高さだ。

 帽子が邪魔しているので、やらないが、なかったら撫でてたと思う。

理由は、魔理沙がとっても可愛いからだ。

 さて、それは置いておこう。


「魔理沙、続きをやろうか」


「あ、おう!」


 今度は俺の弾幕をどうするかを考えてくれるそうな。


****


 思いの外、目の前の統治は物覚えがいい。

彼が乗っているボードに弾幕を撃つ機能があるというので、

彼に撃つ側をやらせることにしてから少しだけ時間が経った。

今日はじめて使うといっていたが、案外使いこなしている。

 統治の弾幕はルールにある通り、被弾を直接狙うものもあるし、

相手の動きを制限できるように囲う弾幕も存在する。

初めて弾幕を造ったとは思えない出来だと感じた。

でも、打ち出される弾幕はなぜか白と黒と赤の三色だけ。

美しさの点では、まだまだだと言わざるをえない。


「お前器用だなぁ」


 私は弾幕を正面で躱しながら、一番最初に感じた印象を言ってみた。


「ありがとう。そこそこに器用なこと以外に何もなくてね」


 彼はそう言って笑った。が、私にはその笑顔がどこか悲しそうに見えた。

半ばあきらめの入った、飽きたとでも言うような悲しさが。

 ふと、その笑顔の質が変わる。どこか、不敵な笑みに。

嫌な予感がして、後ろを振り向く。そこには一際大きい弾丸。


「あぶっ」


 慌ててそれを躱そうとすると、統治が指を鳴らした。

その音につられるように、その大きな弾幕が弾けた。


「うわぁ!」


 弾けた弾幕からは、小さな弾幕が射出され、私を嵐のように襲ってきた。

躱すことはできない、ならば……奥の手だ。


     ****


 『全方位拡散弾丸』物騒な名前の機能を使ってみた。

あえて、後方から当たるように円曲弾として撃ってみたところ、

魔理沙は後ろの弾丸に気付かなかった。


『指を鳴らして本領発揮☆』


 こんなうざったい説明文に従って、指を鳴らすと、

弾丸が弾け、その中から、更に小さい無数の弾丸が魔理沙を襲った。

 捉えたと、完全にあたっているはずだと思った。

次の瞬間に、大きな大きな光が空に向けて放たれるまでは。


「ふいー、危なかったぜ。危なく負けるところだった」


「……何あれ」


「あ、あれか? あれは私の『マスタースパーク』だぜ」


 『マスタースパーク』つまる所は極太レーザーといったところか。

あれで、自分への弾丸を全部吹き飛ばしたのか……無茶苦茶すぎる。


「どんな火力してんだよ」


 口から出た素直な感想。魔理沙はそれに頷いた。


「そう、どんな火力ってこんな火力だ。

いいか、弾幕に必要なことをもう一個教えてやる。

弾幕はパワーで決まる。弾幕はパワーだぜ」


「弾幕はパワー」


 そうか、さっきみたいな細かい弾幕で追い詰めて、

高火力で吹き飛ばすのがいいのか。そうか、そうなのか。


「なるほど、よくわかったよ魔理沙」


「ふふん、魔理沙師匠って呼んでもいいんだぜ?」


 胸を張る魔理沙、これは乗るべきところか……乗ってみよう。


「魔理沙師匠!」


「ああ、どうした?」


「ご指導ありがとうございました!」


「おう、いつでも頼ってくれよな!」


 ここまで言ったところで、二人共が真顔で見つめ合った。

数秒後、俺達の間で大爆笑が起こった。


「師匠って……似合わねー」


「うんうん。私も師匠って柄じゃないしな」


 こうして俺は基本的な弾幕を覚えた。

次は、スペルカードだったんだが、その前に霊夢に呼ばれてしまった。


「早く入りなさい。ご飯にするわよ」


「え? 私も食べていいのか?」


「統治が世話になった礼よ。きのこのおまけ」


「本当か? いやー得したなー」


 そんなことを言いながら、魔理沙は神社に入っていく。

俺もその後を追いかけた。居間には霊夢の味噌汁の香りが漂っていた。


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