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第9話

受験おわったああああああああああああ

「あわわわわわわ!」

「しっ!!」

あたしはイリーナの口を塞いだ。

「ばれちゃう....」

イリーナを説得しあそこから出たはいいものの、広すぎるお城の廊下をうろちょろしていた矢先だった。誰かの人影が曲がり角から見えたのだ。あたしはイリーナと気色悪い銅像の後ろに身を隠した。

「...全く、この武器使い物にならないわね...」

女の人の声だ。コツコツと足音が廊下に響く。敵だ。絶っっっっっっっっ対敵だ。じゃなきゃこんな場所いない。服が真っ黒だし顔がみるからに悪女だし。しかも髪の毛は真っ白。絶っっっっっ対敵!

「赤いドアのとこで武器でも調達しようかしら...ついでにこの服もあきたからそこで変えよっと。」

あたしたちには気がついてないようで、気色悪い銅像を通り過ぎてあたしたちが閉じ込められてた場所の方向へと歩いて行った。

「...あの人知ってる。」

完全に足音が消えた時、イリーナが塞いでいたあたしの手を取りつぶやいた。

「いい人?」

「うん、すごくいい人よ。...それより、さっきと服と武器がある赤いドアの部屋の話してたわよね?」

「あ〜...確かに。」

いや、明らか悪女っぽかったけどね。

「武器も必要だし、あなたには服が必要よ!」

まあ確かに裸にタオルぐるぐる巻き状態で飛びたしたら寒いもんね。

「でも、服を選ぶ時間なんて...」

「あるの!赤いドアの部屋なら知ってるわ!メイドさんたちの部屋だったもの!」

「えっ、でも...いっイリーナ?!」

あたしより身長ちっちゃいくせに力だけはとんでもない。腕をグイグイと引っ張り勝手に赤いドアへと到着してしまった...





「なんか物騒な部屋だね。」

武器と服がところせましと床に散らばってるのをまたぎながらあたしは言った。

「服っていってもさ、何着ればいいの?」

「うーんとりあえずオシャレに!」

「おーしゃーれー?」

「はい、文句は無し!まずこれよ!」

服に関する主導権はイリーナにあるみたいだ。投げられたものをとりあえず履く。

「レディは常にオシャレをしなきゃってお母様が言ってたのよ。」

「ふうーん。」

お母様...ねえ。

「あとは...これとか?」

「えええ?!そんなの着るの?!」

あまり記憶のないあたしでも、イリーナに渡された服がブリブリのフリフリ乙女ルンルンであることは分かった。

「いやだよ〜!」

「じゃあ、そんな下着姿でお城の中をうろつくの?タオルよりひどいわ!」

バンバンバン!!!





2人の口論がピタリと止んだ。




「あたい着替えたいんだけど?入ってもいいかい?」

「「ちょっと待って!!」」

2人で知らない人に叫ぶ。イリーナはあたしに勧めたワンピースを、あたしは周辺にあったひらひらと、着ててなんとか寒さをしのげそうなものを羽織った。

「どうしよう?!」

イリーナはあたしに顔を近づける。

「落ち着いて...私たちの存在はほとんど知られてないはずよ...私は一般には死んだことになってるし...だから普通にここから出ても...大丈夫なんじゃないかしら...?」

「そんなのどうして分かるのイリーナ?」

「かん。」

かんって...

「呆れた顔してるけど、あなたのしたことと同じよ?」

「分かった...こんな気持ちになるもんなんだね...もうしないよ。」

「今は?」

「あなたを信じる。」

2人で手を握りしめた。かんと言われたけれども、これで包囲されてたら?逃げられてもあたしたちを知ってる人に遭遇したら...握りしめている手に汗がにじむ。



カシャと何かを踏んだ。



2人で小さくひゃあっ!と飛び上がった。どうやら金属を踏んだらしい。拾ってみると、少し重みがある。目の高さまで持ち上げるとそれはナイフだった。あたしとイリーナの両腕を合わせたくらいの大きさだ。

「早くしてくんねえかな?!」

「ごめんなさいっ!!」

外の人はイラついてる。絶対イラついてる。


護身用にこれを持って行こう。


イリーナにそう目で合図し、ゆっくりとドアを開けた...


「ったく、おせーんだよ。」

腕を組み、黒い巻き髪の女の人は目の前に立っていた。チッと舌打ちまでされたらあたしたちどうしたらいいの...?

「ごめんなさい...」

相当お怒りのようなので早々と去ることにしよう...バレるとまずいし...






「ちょっとあんたら待ちな。」

2人でピタリと石のように止まる。

「へっ、はい...」

ツカツカと近づいてくる...後ろを見たくない...ナイフ!ナイフ!ナイフを用意しろ!

「あんた...」

真っ赤な爪の指があたしを指す。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ

心臓がバクバクなり、汗が額をつたっていくのがよく分かった。

「服の着方違うから。」

「...へ?」

「ちょっと貸しな。」

イリーナから引き剥がされ、女の人はあたしの着ている服をいじり始める。

「あんた、どういう着方してんの?どーも変だと思ったんだよねー。一回脱いで!」

言われるがままに上に着ていた寒さをしのげそうなものを脱いだ。

「ちょっ...!!!ねえここ廊下よ?!男の人が来たらどうするの?ほぼ裸じゃない!」

「フリフリ嬢ちゃんはちょっと黙ってな。」

「うわっ、寒いっ!!!」

「体を丸めるんじゃないよ!腕を広げな!

...そうそう、あんた良い体してんじゃん。ちゃんと着ればこの服はあんたにぴったりだよ。」

「はあ...」

そんなこと言われてもあんまし嬉しくない。だって分からないもん。

「はい、腕通して!」

数分間廊下で服を直されてるわけだが、これはラッキーとして捉えるべきなの?それとも...



「ほら、よくなった。少しはマシだろ?」

イマイチ違いは分からん。ただちょっと寒くなくなった気がする。ちょっとね。

「うん、少し寒くなくなった!」

「だろ?これなら、男もイチコロだぜ?」

お姉さんはニヤニヤとあたしを笑う。褒められて...る?一応ハハハと笑っておいた。

「あと、これ持って来な。」

手渡されたものは長い紐のようなものだ。

「ナイフを持ち運ぶやつだよ。腰にこれを巻きつけて小さいポケットみたいなトコにナイフを突っ込め。そしたらちょっとは楽になる。」

「あ...ありがとう!」

「気にすんな。初仕事かい?」

「え?...ああ、うん。」

「まあ、がんばんな。うまくいけばもっといい環境になるさ。」

お姉さんに頭をポンポンと叩かれ、赤いドアの部屋にお姉さんは消えた。

「...なんのことだろ?」

「さあ?まあ、捕まらずに済んだわね...」

「さ、イリーナ!早く逃げよう!」

「うん!」

あたしたちは反対方向へと走り出す。誰もあたしたちに会わないことを願って...






「ここよ。」

イリーナに連れて来られたのは厨房だった。

「他にもいろいろあるんだけど、1番近いのはここだっ...!!」

「ん...!!」

話しがそこで切れた。なぜなら、扉を開けたらとんでもない悪臭がしたからだ。

(これをあけて!)

とイリーナが指でジェスチャーした。どっからどう見ても大きなタイルの1つだったが、よくみるとタイルとタイルの間にわずかなすきまがある。

あたしはさっきのナイフを取り出し、すきまに突っ込んだ。すきま以外に何かを刺した感覚は無いのでこの先は穴になっているんだと思った。ナイフを斜めらせてタイルの1つを浮かせナイフを足で固定しつつ、イリーナとタイルを持ち上げた。小さな穴から新鮮な空気が入ってくるのを感じる。

「穴ちょっと小さいね〜。」

イリーナにではなく、穴に向かってしゃべりかけるあたしは頭のおかしい人だろうな。

「じゃあ、イリー...」

「よけてぇっ!!!!」

イリーナに押し倒され、あたしは気がついたら白い壁に頭をぶつけていた。


「いたぁっ...!!」


がきんっ、


鈍い金属音が響いた。


振り向くとあたしが今いたまさにその場所にナイフが刺さっていた。

「大丈夫?!」

「うん...イリーナありがとう。」

ドス、ドス、と地面を揺らしながら誰かが近づいてくる。



巨大で汗だくの男がいた。ギロリと睨む姿は決してあたしたちを逃さないと言っている。


あたしは"こんな時"どうするのか知っていた。ナイフを素早く取り出し、構える。

「イリーナ先に行って!」

「でっで..「早く!!」

イリーナは裾を握りしめ走ったと同時に手を伸ばす男の腕にナイフを突き立てる仕草をする。反射的に男は手を引っ込めイリーナは無事に穴へと飛び込んで行った。

飛び込むイリーナを見たあと、男はさっきあたしに飛ばしたナイフを抜く。

「あんた正気?...あたしは強いよ。」

根拠はない。でもなぜだか昔にもそんな言葉を言った気がした。そして勝利したような...

「はっ!!バカバカしい。女は陛下に"若さ"を捧げるために生まれてきたんだ...」

男はブーブー鼻息を荒くしながら言う。

巨大な体であたしにのしかかるように襲ってきた。幸いこいつほど体重が軽いであろうあたしはすいっと避けつつ、足を引っ掛けた。


どかっと音を立てて転んだ男の背中にナイフを突き立てる。

「...やりい。」

自分でも恐ろしいと思ったのは、さっきまで男の手中にあったナイフが自分の反対側の手にあったことだ。男はヒーヒー言って、頼む殺さないでくれと懇願していた。

あたしはそいつを鼻で笑い、イリーナと同じ様に穴へと飛び込んで行った。


















ドシュ。










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