第8話
やっと主人公のイリーナが登場です!!
目を開けたら、灰色の世界が広がっていた。
あたしは天井に顔を向けて寝ていたようだ。何か薄いものが体の上にかかっている。むくりと起き上がると左には鉄の棒が何本も並び、あたしは小さい部屋の中に閉じ込められてるみたいだ。
少し寒い...
「ハーイ。」
どこからか可愛い女の子の声が聞こえた。
「ハーイ。」
一応返しておく。これで男の子だったら笑えるな。
「元気?」
「ええ。一応ね。あなたは?」
「少し寒い。」
「そう...」
沈黙が流れる。
あたしが話しているのはどこの誰なのだろうか?そもそもここはどこ?それに...
「あなたの名前は?」
「なまえ....?」
なまえ?あたしのなまえは...なまえは....
「覚えてない...ごめん。」
「いいのよ。私の名前はイリーナ・グランドシファーよ。」
「イリーナ...?」
聞いたことのある名前だった。
「いいなまえだね。いきなりだけど、あなたは今どこにいるの?」
少し間があいて、あなたの隣よ。とイリーナは言った。
頭を触ってみると髪の毛がどうも不自然に長いところと短いところがある。そんなもんなのかな。左目に髪の毛がかかって邪魔だ。鉄の棒の反対の壁には穴があいていて、風の冷たさや外の音がこちらに入ってきている。
「ねえ...」
「ん?」
「...あなた、ここから逃げられる?」
「ん〜?雰囲気的には無理そうだけど...」
あたしは固い鉄の棒を殴りながらそう答えておいた。指が折れるかと思った。
「逃げられたら逃げて。お願いだから...!!」
さっきとは違ったイリーナの悲痛な声が響く。
「なんで?」
「...あのね、このまま逃げられなかったら...」
ガチャっ
扉を開ける音と同時に、イリーナは黙り込んだ。ドカドカと荒々しく足音を慣らして誰かが入ってくる。あたしたちを閉じ込めた人だろうか。隣のほうで鍵を回す音とガシャンと何かを乱暴に壊す音した。
「やめて...!!お願い...!!」
イリーナ...???なにをそんなに怖がっているの...??
バシッ
「きゃぁっ」
え...今...
バシッ、バシッ、バシッ、
「大人しくしろっ!!!」
イリーナの泣き声が聞こえてきた。イリーナが誰かに傷付けられてる...
ビリビリと何かを引きちぎる音が絶えず聞こえる。
「やめてっ!!!」
あたしは叫んだ。無駄だと分かっていながらも鉄の棒を掴み、揺すった。
「お願いだから!!!!」
あたしはイリーナの泣き声をしている方へ近づいていく。
「イリーナ...!!!」
鉄の棒が曲がらないかと全体重を一本にかけた。
キィッ。
....え...あいた。ふつうに。
普通にあいたので、体が前のめりになってしまった。あたしはあたりを見回し近くにあった大きな石を掴み、声の方向へと向かった。すぐ隣の部屋に女の子に覆いかぶさる男がいた。きっとこの女の子がイリーナだ。
あたしは男の頭に狙いを定め、石を叩きつけた。
「ぎぃっ...」
男は虫のような声を出し、バタリと動きを止めた。
「イリーナ?大丈夫?」
あたしはイリーナに手を差し伸べる。
「あっ...ありがとう...」
小さい手があたしの手を握り返した。くりっとした目があたしの体を上から下までまじまじと見ている。
「タオル一枚で寒そう...」
「寒い...」
イリーナは太ももまである茶色い長い髪の毛をいじっている。
「イリーナも閉じ込められているの?」
「うん、ずいぶん昔からね。」
「じゃあ、一緒に逃げよう?ここにいたらものすごく危険な気がしてきた。」
「ええ...とんでもなく危険よ。」
「やっぱり?」
あたしはイリーナの手を引いてあたしのいた部屋に来た。
「この窓から出れるんじゃない?」
風の通る穴を指差す。
「小さすぎない?」
「何かで破壊するわ。例えば...」
あたしはさっきの男のところへ行った。
「こいつの...なにこれ?」
黒くて変な形のものを見つけて拾い上げる。それを片手で持ち上げようと...
「重ぉっ!!!」
腕が抜けたかと思った!
「彼...死んじゃった?」
「いや、あたしの石にノックアウトされただけだよ。」
腕の感覚を確かめるために腕を振り回す。
「ここ...私が元は住んでたところだから秘密の通路とか知ってるけど...」
「ホント?!なんでそれ早く言わないの?!」
「まさか逃げることになるなんて思わなかったから...でも、見つかったら?殺されちゃったら?」
イリーナはうるうるとこちらを見つめてきた。リスみたいで可愛い。...って、こんな状況で思うことじゃないよバカ!
「大丈夫よ。」
「どうしてそう言い切れるの?」
「かん。」
「...」
気まずすぎる沈黙...あたし何か言ったかなぁ?もしそうならごめん。