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第7話

「...なんだ。おめーもイリーナ探してるんだ。」

俺はドゥンケルハイト内の柱に縛り付けられ、尋問を受けていた。ただの縄だから簡単に解けるが、こいつらはどうも22番の知り合いみたいだったので聞ける情報だけもらっていこうと思ったのだ。

「ああ、まあそんなところだ。」

「ブラット、ますます怪しいじゃないこの人。」

褐色の肌をした女が言う。ブラットと呼ばれた男はスキンヘッドでこんな寒い中でTシャツ短パンだ。

「そうだよ。なんでイリーナのこと探してるのかも分からないのに。」

この中で1番年上と思われる男は俺を見下ろす。黒髪で何やらいろいろ武器を装備してわずかながらケンタウルスの匂いがしていることから、こいつは若干注意していた方がいいと思った。

「まあさ、こいつイリーナの友達かなんかじゃねーの?」

「もう、ブラットったら...」

このブラットってやつ、かなりのバカだ。

「おめーイリーナの友達か?」

「違う。」

俺は即答した。

「じゃあ、なんの目的で?」

年上の男は屈み込み、俺と目線を合わせた。

「お前らには関係ない。」

「あるわ、イリーナは友達だもの。」

めんどくせえな。こいつら。

「速くこの紐解いてくんねえか?俺、結構忙しいんだよね。」

「下手な芝居はよせよ。」

ずっと黙って丸まっていた男が口を出した。

灰色のパーカーとジーンズを着た茶髪のやつだ。

「芝居?」

「こいつ、よくわからないけど普通の人間じゃない。魔法使いでもヴァンパイアでも狼人間でもない匂いがするんだ。少なくとも縄を引きちぎるくらいのパワーは持ってるはずさ。」

こいつ...狼人間のハーフか。

ぶちぶちと縄を切り、立ち上がりながらそんなことを考える。

「あっ!!」

男が俺のこめかみに銃口を向けた。

「こいつらは、手を出す対象じゃない。」

「他の人には手を出すのか?」

「攻撃してきたらね。あと、俺のリュック返せよ。」

坊主頭がリュックを探ろうとしているのに1番腹が立っていた。見られたくないものが大量に入っているし、それに...


「あれ?取れねえ...」

「バカ、そんなに腕を突っこ...」

「うわぁぁっ!!」

坊主頭がリュックの中に引き込まれていったのを見届けた。

「あーあ。」

「ブラット?!」

「おい!なにしたんだ?!」

また銃口を突きつけられそうになった瞬間、銃口を掴みグニャリと上に曲げた。

「そうそう人に銃口を向けんなよ。すぐに坊主頭は戻ってくるんだから。」

俺はリュックの中に手をかざし、心の中で"坊主頭"と唱えた。


手のひらに収まった"坊主頭"を引っ張り出すと女が安堵したように坊主頭に近づく。

「ブラット大丈夫?」

「ん?なにがだ?」

こいつ....

「バックの中に呪文でもかけてるのか?」

「まあな。普通のバックだといろいろ入らないもんでね。中が宇宙みたいになってるんだよ。」

さっき曲げた銃口を今度は逆向きに曲げ、元に戻してやった。

「うちゅう〜?」

「ああ。この中は無限に空間が広がってる。だからなんでも入れられるが、俺以外のやつが中のものを取り出そうとすると、さっきの坊主頭みたいなことになる。持ち主が呼び出さない限り一生あの中って訳だ。」

「つまり、どういう意味だ?」

「俺以外のやつが中身を盗もうとしたらこの中で死体となって腐るって意味だよ。」

こいつらは、どうも22番の友人だということ以外に役に立つことはないようだ。絡むと面倒なだけ。

「じゃあな。」

俺はリュックを背負い、門に向かった。今度はそれを妨害するようなことは無かったが...

「待って!1つだけ!」

門越しに女が黒髪を揺らして走ってきた。

「なんだよ?」

「あなたはバラリオじゃないってことよね?」

「バラリオなら既にお前らを殺してるだろうな。」

「じゃあ...名も無い集団?」

「....まあそんなところだ。」

後ろから襲ってきた男を蹴り上げながら答えた。

「じゃあな。お前らが死なないように祈ってるよ。」

もうこいつらと話すのも面倒だったので、全速力で道を走り抜けた....







俺はリュックに"写真"と念じた。写真たてが手のひらに収まる。歩きながらそれを見た。

どうもあいつらが友達なのは本当みたいだった。写真の1つに坊主頭と褐色女、狼男が22番と一緒に写っていた。あとはガキと金髪女。

「もう少し、粘ってれば良かったかな...」

だけど、あまりにもめんどくさい奴らだった......


がさっ、がさっ、


ん?誰かがついてきてるか...まさかあいつらか?いや、こんな遠くにこんな速く来れる奴らじゃないはずだ。


がさっ、がさっ、


「....兵器番号22番....」


耳もとでささやくような声がしたと思ったら、小さい手に頭を掴まれ思いっきりアスファルトに強打させられた。

「いったぁっ...!」

誰かは見るまでもなかった。

「なにすんだ....クリスティーン...!!」

目の前には8歳くらいの巻き髪の"ガキ"が立っていた。こいつこそが、俺たちの集団の中で最も恐れられている奴だ。

「裏切り者....お姉ちゃんを泣かした...」

「勝手に行って悪かったよ。でも裏切った訳じゃねえっ!お前を待つのが面倒だったんだよ!」


ばきぃっ!!!


顔面を蹴られた。多分首が折れたんだ。激痛なのに言葉が出ず、首から下の感覚がなくなっていく。ガキのくせにバカ力持ちやがって...!!!


コツ、コツ、コツ、コツ


「あらあら、ずいぶん近くまでたどり着いてたのねダンスト?」

キャンディスの声がした。音からして俺の落とした写真たてを拾ったに違いない。

誰かに頭を押さえつけられる。また首がギシッ音を立てた。

「かっ...!!!」

「残念だわ、これで2回目よ。あなたが私を失望させるのは...」

2回目?何を言ってるんだ?今まで任務はしっかりやってきたし俺が単独行動を勝手にとったとしても何も言わなかったじゃないか。むしろ褒められたことすらある。

「どうも私たちはソリが合わないみたいね。」

頭を押さえつけられる力がなくなり、今度はつま先で顔を持ち上げられた。キャンディスの顔がぼんやりとしている。キャンディスは写真たてを目の前で落としてみせた。音を立てて割れていくのがかなりゆっくりに感じられた。

「あなたの強さは素晴らしいけど、こうするしかないわね....」

どんどん意識が遠のいていく。おかしい。こんな怪我すぐに治るはずだ。俺の中にはヴァンパイアの血が混じってるんだぞ?

「あなたは私が"作りだして"あげたのに。」







やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!




ダンスト視点はひとまずここで終わりです...

次からやっと主人公登場だぁ...σ(^_^;)

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