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第3話

今回は活字パラダイスですね(笑)

まだ夕暮れだというのに空はどす黒い雲に覆われ、太陽の光は完全に遮断されていた。まあ、そっちの方がヴァンパイアの血が混じってる俺にとっては好都合だが。


この町はかつて、ヴァンパイアや狼人間、ケンタウルスなどの人間ではない(本人たちに言えば怒られるだろうが)ものたちが普通の人間と共存し幸せに生活していたことで有名だった。...一ヶ月前までは。


今はそんなの見る影も無い。建物という建物は崩れ落ち、白骨遺体や腐りかけの死体が大量に散乱している。焼け焦げた匂いと血や肉の匂いが混ざり合い、鼻が狂っちまうような悪臭を漂わせていた。こんな場所じゃ仮に匂いが分かっていたとしても22番を探すのは無理だろう。だが、幸いにも探していた場所は見つかった。

「マダムの宿...ここか。」

あまりにも砂ぼこりで汚れた看板で普通の人間なら見落としていただろう。

22番が泊まっていた宿だ。"あの女"のいう事が正しければの話だけれども。



ガレキをまたぎ、中に入った。外見からして今にも崩れそうな感じだったが中に入ってこの建物がかろうじで形を保っているのも奇跡同然だと確信した。柱はほぼなくなり、太い木の棒が重いガレキを支えているのが随所にある。

「ったくよくやるな。」

1人でぼそりとつぶやいて、ハハハとから笑いをした。リュックからメモを取り出し番号を確認した。

「303....やっぱ上に上がらなきゃダメか...」

階段らしき石の集まりはあるが、階段としての役割を果たすものは見当たらない。それに、上に上がれたとしてもこの木の棒がボキリと折れそうだ。その音で連中に感づかれたら面倒だ。



考えた結果、まずはここを物色してからにしようと決めた。ここにいたのなら少なからず手がかりはあるだろうと思ったのだ。

ガレキの中に紙がいろいろと散乱している。その紙を一枚ひろった。

"宿泊リスト2月分

211 アイリス

222 メルセデス

303 イリーナ

307 エリザベス"

女しかいない。偶然か?それとも、ここは女のみというルールでも存在するのか?でも、これであの女の言ってた事が本当だったってことが分かったな。

もう一枚の紙はどこからか破られたようなもので、走り書きをされていた。

"ナイジェルへ

今日は私はいないからショーの準備をお願いね"

ショー?まあ関係ないか。

他に物色したが、手がかりらしきものは宿泊リストくらいだ。



「行くか。」

階段らしき石の集まりの中に入ると、空洞が広がっていた。四角い空間に規則正しく穴が空いている。その穴の先に部屋があるんだろう。リュックを目的の穴に投げつけた。

助走をつけて軽く飛ぶとふわりと舞い上がった。一つ目の穴を通り過ぎ、二つ目が見えたところで腕を伸ばして床を掴んだ。

着地してよじ登ると床がずいぶんと斜めっている。

「さっさと終わらせるか。」



303...303...あった。

ご丁寧に"個性的な扉"がお出迎えしてくれた。大きな石が通せんぼするように塞がっている。蹴って破壊しても大丈夫だろうか。木の棒は耐えられるのか?

バゴォォォォォォォォォォン!!!

なんとか耐えてくれたみたいだ。ギシギシいっているがそれは無視だ。



"個性的な扉"は最初の方にこの部屋を塞いだらしい。他の部屋に比べればかなり整ってるほうだ。家具も損傷を受けていない。

写真たてに目をやった。4枚くらい写真がある。1枚は男と女と赤ん坊で2枚目は男3人女3人で笑っている。3枚目は男と22番、最後は集合写真のようだった。

今までで最も手がかりらしい手がかりかもしれない。

そんなことを思いながら、写真たてごとリュックに突っ込んだ。写真たては飲み込まれるようにリュックの中に消えていく。それを見届けながらさらなる手がかり探しをした。






何分たっただろうか。机の周辺は欲しい情報が大量に出てきた。情報屋に渡した金を返してほしいくらいだ。

"親愛なるイリーナへ

全く君は何を考えてるんだ?3日で帰ってくると言ったくせに2週間帰って来ないなんて!居場所が分かってるからいいものの、もうドゥンケルハイトのときの時間で動かないように!いいね?

まあ、説教はこのへんにしよう。今日手紙を書いたのは、あいつの昔の職業がわかったからだ。ずいぶん苦労したんだぞ?あいつの職業は死刑執行人で決定だ。あの時代にヴァンパイアが光をよけるための指輪を支給される職業なんてそれしかない。あと、この手紙絶対にあいつに見られないようにしろよ?なんなら読んだら燃やせ。じゃなきゃ俺の首が飛ぶ。それにあいつのストーカー癖知ってるだろう?今も執拗に君を追いかけてるだろうしな。まあ、君の幸運を祈っている。

親愛をこめて オリオン"



ほぼ暗号みたいな文だったが、読める人には読めるんだろう。オリオンは...アージュドールのリーダーだな。ドゥンケルハイトから逃げたあとはアージュドールにでもかくまわれてたのかな。またリュックに放り込む。

"出生証明書 ナンシー 出生日 リア歴11年12月22日"

左上に赤ん坊の写真がある。...22番のことならかなり有力な情報だ。イリーナってのは偽名なのか?あと髪の毛とか血とかがあると嬉しいな。日記が開ける。ガサガサとその辺のガレキを漁っていた時だった。


ガタンと音と同時に床がグラグラと揺れた。

...誰かが入ってきたんだ。足音はゆっくりとでも確実にこちらへと歩み寄ってきた。


バラリオか?クリスティーンか?どちらにしろこの窓から身を投げ出すか?いや、そんなことしたら確信犯だと告白してるも同然じゃないか。誰か分かってから戦って逃げる?この建物が持つか?...武器だけいつでも用意できるようにしよう。それで、誰であっても何食わぬ顔でいればいい。バラリオでも俺のことは知らないだろう。

ガレキの隙間から風が通り、相手の匂いを感じた。知らない奴だ。しかも完全なるヴァンパイア。勝てる見込みがあるか....

足音はガレキをまたぎ、入ってきた。





「おや、先客がいたみたいだね。」

そいつと目を合わせた時、あの写真を思い出した。22番に嬉しそうに抱きついていた男...まさにそいつだった...




ジョーカー....







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