国際総合新鋭救命救助部隊(IALRT/アイアラート)日本養成学校 ―A級被検体適合記録― 全体あらすじ
【起】温暖化のタイムリミットと、救命救助を志す少年
2040年代。地球温暖化による破局的な気候変動のタイムリミットが迫り、巨大台風、豪雨、山岳災害、感染症、国際紛争が人類の生存を脅かしていた。スイス・ジュネーブのレマン湖畔に本社を構える世界最大級の総合科学企業AGB PharmaTechは、医療、防衛、環境、都市開発などを通じて国際社会に絶大な影響力を持ち、極限環境での救命救助を担う「国際総合新鋭救命救助部隊(IALRT)」を育成していた。
主人公シムラ(志村 蓮)は、岐阜県高山市出身の18歳。かつて事故に遭った父親をIALRTに救われた経験から救命救助隊員を志し、工業高校で培った機械制御の知識を武器に、長野県の山岳峡谷にある養成学校へ入学する。しかし、新入生200人を待っていたのは、マカベ校長と鬼教官たちによる冷酷な選別制度だった。厳格な点呼や連帯責任、些細な失敗による退学処分、両親との別れ、残雪のグラウンドでの過酷な教練を通じ、シムラの想像を超える3年間が幕を開ける。
【承】過酷な24時間――科学技術と極限の生存試練
午前4時30分の起床から始まる訓練では、氷水のペナルティー、雪山での救助、AGB Biohazard Maintenanceスーツの装着、実火災・爆発環境での精密作業が続く。脱落者が相次ぐ中、シムラは疲労と恐怖に耐え、午後には高度生体医工学、災害救急医学、極低温物理学などの難解な専門講義と実技演習に挑む。
夜にはライメイ教官による暴風雨下の医療機材組み立て、フカミ教官による暗黒の水中救助が待ち受ける。続くイオウダニ教官の地下鉄テロ想定実習では、1995年の地下鉄サリン事件などの教訓を基に、約200人が救出、対テロ対応、搬送、汚染監視、区域除染、救命処置を分担。各階で任務が同時進行する中、シムラはAGBスーツに仕掛けられた人為的な酸素供給エラーと人格を否定する叱責に追い詰められながらも、自力で危機を突破する。
しかし、訓練後も休息はなく、深夜には暗闇の通信リレー、氷水耐久、機材組み立てなどが続く。人命を守る高度な技術と、人間の尊厳を削る教育制度が、異様な対照を成していた。
【転】三年間の淘汰――最終面接と冷徹なプロフェッショナルの誕生
三年間の過酷な教育によって、200人いた同期は激減する。最高学年となったシムラは黒いスカーフを身につけ、感情に流されず任務を遂行する精鋭へと成長していた。
やがてIALRT資格試験が始まり、生き残った42人は筆記試験、AGBスーツを用いた極限環境での実技試験、最高幹部による最終面接へ挑む。32人まで絞られた候補生を待ち受けるのは、サイジョウら最高幹部による冷徹な尋問だった。シムラは、過失の即時報告、データに基づく判断、自己の限界を認めた際の交代など、救命救助隊員としての信念を語る。
幹部たちは表向き厳格な職業倫理を評価しながらも、人間の感情や脆さを排除すべき不確定要素として見ていた。最終的に30人が合格し、シムラの資格情報はジュネーブ本部へ登録される。
卒業後、各地の養成拠点から巣立った135人は正式なIALRT隊員となる。シムラも世界各地の災害現場や紛争地域で活躍し、看護隊員デリアと結婚、娘エレナを授かる。彼の人生は、救命救助の理想を実現した英雄の歩みに見えた。
【結】ジュネーブの深部――A級適合者と人類進化計画の真実
スイス・ジュネーブ本社最上層。世界各国の国旗が360度に並ぶ巨大オペレーションルームでは、一般職員の退出後、兄ジェイムズ・アダソン、ディスカー夫妻、CEO直属の幹部や世界各地の中枢関係者たちが極秘会議を始める。一方、地下最深部「生命維持統括室」には、弟でAGB PharmaTechのCEOマック・アダソンが、極寒の生命維持装置と特殊車椅子につながれた最初の実験体「PROTO-TYPE 0」としてただ一人存在し、神経通信で会議を統率していた。
両親を奪った暗殺テロと社会の無秩序に絶望した兄弟は、人間の感情と個性を争いや環境破壊の根源と考え、「全人類ポストヒューマニティー計画」を進めていた。IALRTの選抜は、その数ある経路の一つだった。AGB PharmaTechは医療、教育、IT、防衛、都市・月面インフラなど全6大事業の表向きの活動を利用し、本人たちに気づかれぬまま世界中から「A級適合者」を選別・収集。人工薬物「アルティメット」と「アルティメットウイルス」により、感情・個性・記憶を失う新人類「ポストヒューマン」へ変異・進化させようとしていた。
幹部たちはシムラの最終面接記録にも注目し、その強靭な生体耐性と救命への揺るぎない倫理観を、進化の副作用を乗り越える重要な適性と評価する。シムラたちも一般市民も真実を知らぬまま、人類の運命を変える巨大な計画が静かに進行していた。




