Prologue. 前日譚
操るまでもなく運命だった
人間「ノルド」魔法を操る者「ミスティカ」
かつて共に在った二つの種族は、
いつからか“異なる存在”として切り離された。
そして時が経ち戦場に立つ少女がいた。
星座魔法を操り運命すら“書き換える”と言われた存在。
そしてもう一人。
影を操り、戦略を極め、
“勝ち続けること”だけで戦場に立つ男。
彼は信じていた。運命は変えられない。
だが、勝つことはできる、と。
しかし、出会ってしまった。
本来、交わるはずのない“光”と“闇”が。
血に濡れた戦場で、世界がわずかに揺らぐ。星が軋む。
かつての、王子と魔女のように。
ただそれだけの小さくて、残酷で、美しい物語。
これは幸せを追い求めるお話。
そのプロローグとしてこのお話をいたしましょう。
昔むかし、人智を超えた存在に神という名をつけ初めた頃、この世界には数多の生命がいました。その中で一際美しく、発達した種族が1つ。それは「人間」。その人間も神の気まぐれのうちにふたつに別れました。神は片割れに「科学」を、もう片割れには「魔法」という進化を促しました。神や他の生命たちはそれぞれを「ノルド」「ミスティカ」と名付け、親しみました。
ふたつの種族は互いを補い合い高度な文明を築き合いました。
友好に見られたノルドとミスティカですが、ある時、ノルドの研究者が言いました。
「ミスティカとは自然に反するものたちだ。科学は運命にのっとるのに対し、魔法はその定めを書き換えてしまう。口から火を吹き、手足で地を割り、空を睨めば槍の雨を降らせるだろう。」
と。初めこそ誰も信じませんでした。ですがミスティカに比べ短命なノルドの認識は次第に崩れていきました。
これではいけないと立ち上がった2人がいました。1人はミスティカ、名前は「ハニエラ」黄金の髪に大理石のように白い肌。魔法を使うと色の変わる目が、確かにその容貌にノルドと違う美しさを醸し出していました。
そしてもう1人はノルド、名前は「セオドア」少しうねった黒髪に緑の目が特徴のノルドの王子様。ふたりは公言こそしないものの、心の通じあった者同士でした。
ですがどれだけ彼らが愛を謳っても時代が信じる訳もなく、ふたりはまもなく引き離されました。それからハニエラはひとりで山奥の塔に篭もりきり、ノルドとミスティカが再び友好の道を進むべく魔法を磨き続けました。
そんなハニエラに悲劇が訪れます。セオドアが死んでしまったのです。聞けば、早朝に侍女が彼を起こしに行くと、眠ったように動かなくなっていたと言います。ハニエラはすぐさま葬儀へ向かいました。ですがノルドの王はハニエラを冷たくあしらい葬儀にも出席させませんでした。
そのうち、王子が死んだのは寿命や病ではなく他殺だったということがわかりました。ハニエラは酷く取り乱し、ミスティカの城壁から飛び出しノルドの王を問い詰めにゆきました。王は今度もハニエラを追い出し、あろうことかハニエラにその罪を着せ大罪人として処刑を命じました。
処刑の前日、ハニエラは魔法で身を隠し、ひっそりと王子の墓へ行きその棺を掘り起こしました。棺を開けると、王子は顔に赤みがあり本当に眠っているだけのようでした。ハニエラは彼に手をかざし呪文を唱えました。
『アストラ・レガリア・リインカーネイション』
眩い光が2人をつつみ、セオドアは少しずつ青白く死人のようになりました。
王や城のノルドが駆けつけた時には、ハニエラはミスティカの秘剣で胸を刺し自死していました。
おしまい。




