私の推しは「次元大介」
えっと、それは……
何というか、随分それっぽい戦記物になるな。いや「乙女ゲーム」って元々、そんな感じなのか?
いまいちパッとしない少年が立身出世。姉弟の対立。古い王朝の衰退。そして滅び。そこから新しい王朝の始まり。
大河ドラマだねぇ。
そういったシナリオの中では《聖女》の役割が見てこないけど……
「ああ、主人公は鉱毒で苦しむ中央で救済活動を続けるのよ。それで二コラと離れて連絡を取り合って、やがて合流するって感じ」
それは本当に「乙女ゲーム」なのか?
ただ、そうなると不思議に思っていた部分がますます不思議になる。
「二コラが『アウクスブルク』に来るのって一年後なんだよね?」
「そうよ」
「じゃあ、《聖女》と二コラって、ほぼ触れ合う時間が無いんじゃない?」
「……触れ合うつもりなの?」
ええい、面倒な。
「元のシナリオについての疑問だってば。接触……もダメか。つまり話す時間もないんじゃないのか? って事」
「だからね。二コラと《聖女》はほぼお互いに一目惚れみたいな感じになるのよ。でも、鉱毒騒動ですぐに会えなくなるでしょ? そこで手紙のやりとりで愛を育て合うのよ」
そう言われると「乙女ゲーム」っぽい気もしてきた。
でも、このゲームやっぱり――
「それで、ホント~~に、大丈夫なの? 二コラに一目ぼれとかされると困るんだけど」
「それは大丈夫だって。私の好みは『次元大介』だし」
エリーがしつこいので具体的な名前を挙げてみた。「同じく、井坂十蔵」もそうなんだけど、これ言うと話が逸れ過ぎるので言わないことにする。
「え? じ、じげん? 誰?」
「『ルパン三世』ぐらいは知ってる? ルパンの隣にいる顎髭の――」
「あ~~あ~~、あのキャラか」
さすがの知名度が高いな「ルパン三世」。
それでエリーも具体的に想像できたのだろう。
私が決してショタ……ではなかったニルスに一目ぼれしないことを納得――したんだよな?
今までの証言があるから、今度はこっちが信頼できなくなってる。
これ以上、好いたの惚れたので言い争っても仕方ない。
もっと実務的な話に持って行こう。
「エリーはこれからどうするつもり? 二コラと島に引き上げて、そこで引きこもるの?」
「そこまでは……実は『アウクスブルク』にも来たくなかったんだけど、それやろうとすると二コラがしっかりしない感じがして。結局来ちゃったのよね」
そっちでも強制力が働いたのかもしれない。
「でも、いざ別れるとなると、お互いに悲しくなっちゃって……ああ、やっぱりかわいいわ。わたしのにこら~」
ひらがな多めの発音になってやがる。
しかし、エリーが入学式に遅れてきたのが、そんなしょうもない理由だったとは。
「――それより、君はどうするつもりなの? このゲームに次元みたいなキャラはいないよ?」
うん、それは期待してない。




