原紗友里か高橋李依か
ところでお茶請けって、他にないのかな。
クロテッドクリームと……これもしかしてルバーブジャムって奴かな? ちょっと勇気がいるなこれ。
そもそもスコーンしかないのが……いや、学生の身の上なんだからこれぐらいでいいのか? ああ、街に出て買ってくるパターンもありだな。
シナリオの基本的な流れもわかったし、答え合わせ的な気分で市場調査とかしてみたくなってきた。
その時に……うん、まずはハムだな。アフタヌーンティーならサンドイッチも欲しかったところだ。
そんな感じで思考がわき道に逸れていたら、エリーが恐る恐るこう切り出して来た。
「……えっと……やっぱりこのゲーム……」
「それは知らないんだって。それでどれだけ苦労したか……でもこの世界良く出来てるから、何となくわかる」
それで嬉しそうな顔したら誤魔化しようがない。
あともっとメタ的な事を言ってとどめを刺すしかないか。
「でも『乙女ゲーム』に間違い無いとなったら攻略対象が三人って少なすぎる。倍はあっても良い。それなのにあなたはそれを先に説明しない。隠そうとしてるのは見え見え」
「う……実は確かにもう一人いるんだよ……攻略対象」
《《もう》》一人?
一人しか残ってないのか。それは……いやこれは私の《《推測》》の補強に繋がるか。ここでエリーに言っても仕方のない事だし、ここはスルーだな。
今はエリーの供述を集めることの方が優先順位は高い。
「ええと、攻略対象はどこに? 先生とか? まだ登場してない?」
「どこって言われると、私の家なんだけど……」
「エリーの家? え? どういう事?」
「何でここまで言ってわかんないのよ! 私の弟! 二コラが攻略対象!」
お、弟? 日本でもこっちでも兄弟ってものとは縁が無かったから、全然気づかなかった。
ああ、そうか。そういうパターンもありか。ヘクターのとこでは子沢山って知ってたのにな。
「ってことは来年あたりに登場するわけだ。この学校、入学者の年齢結構バラバラなんだけど……」
「ゲーム的にはそうだけど! 私は生まれた時から二コラ知ってるのよ。ずっと大事にしてきたの!」
うん? うううん?
私はまず、ティーカップを丁寧に置き直した。
そして、背筋をまっすぐに伸ばす。
ジト目でエリーを見つめる。
エリーの瞳孔の無い瞳がさらに茫洋としてきた。額に浮かぶ汗も、もはや冷や汗の量ではない。
「――エリー、あなた日本にいた時から二コラが好き、というか推しキャラ?」
「うう」
「それで、こっちの世界に来て自分が二コラの姉になってるって知って……まぁ、その辺りはいいか。つまり愛情が溢れ出して注ぎ込んだ」
「うううう」
「そんなに好きなんだ二コラの事」
「うん!! 好き! 大好き! だって可愛いんだもの! どうしようもないほどに!」
く……こいつ原紗友里か! あるいは高橋李依か!




