シナリオは連鎖してゆく
おい。目を逸らすな。
何か隠しているのはわかってたけど、この辺りが関係してるな。
自白を待つのも面倒なので、勝手に推理してみよう。
「……エルネストの場合は、通常なら婚約状態なんだから……貴族……いや、クレッソン侯爵領は当然、鉱毒の被害は無い」
間に海があるんだから。
という事は、クレッソン侯爵家による救援? そこから王国の乗っ取り?
それでも、それで多くの人が助かるなら……ああ、だめだ。
「イル・ラーリア島」は一段下に見られてるんだ。それが鉱毒の影響で立場が逆転。圧倒的優位になれば……報復という流れになってもシナリオに説得力が出てくる。
「イル・ラーリア島」出身者――彼ら自身も劣等感があるんだろう。何せ元は王国の民なんだ。どうしても「劣っている」という感覚も醸成されてしまう。
それを抱え込んでいたが、ある時それが逆転する。
王国の風潮に従わない事で、自己を確立する精神作用だ。
そんな時によく使われる手法は、自らを「悪」と自認する事。
そしてそういった「悪」の象徴が「|エディット・クレッソン《悪役令嬢》」。
……それはもう「乙女ゲーム」の範疇のキャラなのかなぁ?
で、そういう「悪」と、ギルバート・ログレスというナチュラル「悪」が王国を舞台にやり合うのが、ギルバートシナリオって事になるのか……
何だか、オラわくわくしてきたぞ!
――じゃなくて。
いや、そもそもそんなルートに入ることはもう不可能。何せまず目の前のエリーは「悪」には思えないのだから。
だからこそ、私はエリーに色々尋ねることが出来るわけだし。
そんなわけでギルバートシナリオがそんな展開になるのかをエリーに確認してみるとしよう。
多分あってると思うし、それなら今度こそ自白してくれるだろう。
「……もう何回聞いたのかわかんないけど、ホント~~~にこのゲームやったことないのよね?」
「ない」
「とてもそうは思えないんだけど……まぁ、ギルバートシナリオはそんな感じよ。エディットが厳しすぎて、みんなカーディス地方に逃げちゃうのよ」
ああ、そこで《聖女》の私がギルバート・ログレスを更生させる感じになるのか。
よくもまぁ、それを説明しないで済まそうと思っていたな。
実際、ギルバートシナリオだけなら上手くいってたけど、ヘクターシナリオでは無理があったみたい。
ヘクターシナリオでは、勢いを増すグラナドス侯爵家とクレッソン侯爵家が中央でせめぎ合う感じになるんだろうし。
一応、それも確認してみるとエリーはあっさりと頷いた。
で、いい加減自分で申告してくれないかな。
だってあまりにも攻略対象が少なすぎる。
多分、エリーが隠しているのは、その辺りだろう。
ここはじっくりと攻めた方が良いのかな? せっかく淹れてくれた紅茶に口を付ける。




