プロローグ前から因縁があった
王国が魔獣から受けるであろう被害を、グラナドス侯爵家が受け持っている。
それは確実な話なのに、王家はグラナドス侯爵家へと援助をしない。
「いや、そうじゃなくて……援助はしてるのよ。食料とかは」
「それはそうだろうね」
エリーの説明が彷徨い始めた。
実は食料援助はそのまま相手の生命線を握ることに繋がるから、あまりいい感じの援助の仕方ではないとは思うんだけど。
それを口に出したら、エリーが混乱しそうなのでやめておいた。
説明はまだ続きそうだし。
「でも、武器を渡さないのよ。いえ渡すんだけど、それが少ないって言うか……」
「それはかなり無茶な気がする。魔獣と戦うのに、武器はいるんだろうし……あ、そうか。渡さないわけではないのか」
武器を制限してるのか。
魔獣相手に戦う事で、濃い戦闘経験を持っているグラナドス侯爵家はそれだけ強いって事なんだろう。
でもそれって……
「グラナドス侯爵家が自分で武器を用意すれば済みそうなんだけど」
「ああ、よかった。そういう話になって」
安堵で胸をなでおろしているエリー。何だかわからないけれど正解したみたいだ。
「武器を作ろうにも、グラナドス侯爵家の領地では鉄が出てこないんだって」
「ほうほう」
「で、鉄が採れないから、王国に押さえつけられてる、って言う事で、それが採れる鉱山? そういうのがグラナドス侯爵家から一番近いのが、ジャコメッティ伯爵領」
「あ」
なるほど。
そういう感じで繋がるのか。
「じゃあ、テセウスが死んだ戦争の理由も、グラナドス侯爵家の『鉄が欲しい』っていう悲願があったわけか」
「そうそう。それを主人公が知って、複雑なことになるわけ。だからヘクターとはロミジュリみたいな感じ?」
そうだった。これ「乙女ゲーム」の話だった。
やっぱり随分凝っているように感じるなぁ。いや私、「乙女ゲーム」は全然わかんないんだけど。
ヘクターという赤髪の攻略対象とは、そういう因縁があり、シナリオを進めるにあたって、テセウスが戦死した戦いの理由、リーヒルト王国の褒められたものではない統治方法を知って、思い悩む感じか。
そういった苦悩はヘクターも……うん?
「ヘクターって、私たちと同年代になるんだよね? テセウスの戦死には直接関係無いと思うんだけど」
「うん、それはそう。ヘクターは戦争のこと自体は記憶にないわけよ」
「ああ。それでロミジュリか」
「そうそう。上の世代の確執が、いまいち実感できてない。今のグラナドス侯爵家はハト派が実権を握っていてね。ヘクターは圧倒的に強いんだけど――」
「強いんだ」
そういうパラメーターとかある感じなのか。
「――うん。強い。多分ゲームで一番。でも、それが意味が無いみたいな扱いになっていてね。それがヘクターをひねくれさせた、みたいな?」




