ギルバート・ログレスの家庭の事情
「な、何? その笑みは?」
たまらず私がそう尋ねてみると、エリーはフル・フラットの髪を揺らしながら、どういうつもりなのかふんぞり返った。
……何だか、腹が立ってきた。
「ああ、ギルね。そうか……気になるんだ」
「気になるって言うか、私図書室に行ってたでしょ? その時にログレスと会ったんだよね。それで少しだけ会話したの」
エリーの反応を見る限り、攻略対象かどうかは確認するまでも無いみたいだし、それはスルーしておく。
何しろエリーの反応が目に見えて変だし。
「……そのイベントは知らないわね。試したかしら? いえ、この時期にあちこち自由には動けなかったはず。……なら、これはギルの『内職』に関係があるってこと?」
ん? 「内職」?
そんな私の訝し気な表情に気付いたのだろう。エリーがすぐさまこう尋ねてきた。
「先にマニュアル確認したんだよね? なら王国の西側についてももう知ってるわよね?」
「うん、それは覚えてる」
王国の西側はカーディス地方と呼ばれ、良港を多く抱えている。外国との交易もあるとのこと。
そんなわけでカーディス地方には多くの商人たちが集まり、自治権を獲得。自由都市となっている。
長い歴史の中でそういった商人は実質上貴族化してゆき、その中で覇権を握ったのが「ログレス家」という知識を、ギルバート・ログレスに会った後に入手したんだよね。
先に知っていたら、どんな反応になっていたんだろう私。
結局、貴族様かーい!
みたいな表情になっていた可能性はあるな、うん。
ただあのアクセサリー満載のキャラデザは、ログレス家の富を表しているのだろうと、そこは綺麗に納得出来た。
「……という事までは知ってる」
「ああ、そこまでは説明されてたんだ。それじゃ、ログレス家のややこしい話は?」
「ややこしい? いえ、そう言われると心当たりが……」
……やっぱりない。
「今、ログレス家の実質上の当主は先代の奥さん、メアリーなのよ」
「あ、そうなんだ。……それなら確かに心当たりはある」
メアリーの名前は普通に歴史書というか、カーディス地方の解説書に出てきた覚えがあるし。
でも、ややこしくはないような。
跡目が決まるまで、奥さんが実権を握るっていうのは、平穏ではないかもしれないけど、割とありそうな話だ。
ヤクザなら「何代目姐」とかみたいな奴。
「それでギルは、そんなメアリーを義母にしてるのよ。どう? これでややこしくなったでしょ?」
「義母? 本当の親子じゃないんだ?」
「うん。ギル自体は一族の中でも、随分端っこの方の生まれでね。でも、見込みがある、ということでメアリーが養子にしたってわけ」
ははぁ。
そうなると確かにややっこしい話になって来た。
私がそんな風に納得していると、エリーは例の、にへら、とした笑みを浮かべてこう続ける。
「で……ネタバレするわよ? いいわね?」
……ええい、その笑い方をやめろ。




