歪んだ瞳がせせら笑う
「そ、それは……」
「それは?」
逃がさんとばかりに、私はエリーに詰め寄った。
「ほ、本当のシナリオなら、クレッソン侯爵家がエルネストの後ろ盾になる感じだったのよ」
「は~ん?」
それではエルネストが目指している改革の障害にしかならない気もする。
どうもチグハグだな。「エディット・クレッソン」を「悪役令嬢」として立たせるためだけに、無理やりそんな設定にしたとか?
詳しく説明してくれとさらに詰め寄ってみたところ、エルネストとエディットの婚約を進めたのはエルネスト母親、王妃であるゾフィーであるとのこと。
息子がやろうとしている改革も、その意義も理解している感じではあるが、それでは当たり前に貴族の恨みを集めてしまう。
それなら、いっそのことどこか強力な貴族の後ろ盾があった方が良い。
……みたいな理由があったらしい。
エルネストもそれを受け入れて、エディットとの婚約を受け入れる――本来なら。
「……そういう話は聞いてない。婚約は内緒……では意味がないんだよね。その説明だと。という事は、婚約の話は《《無くなってる》》?」
あ。あからさまに目を逸らしましたよ、この女。
「何をした?」
「うう……それは……」
「入学式の時に遅れてきたのも関係ある?」
「あ、それは……ええと……広い意味では関係あるのかも?」
随分やらかしてるご様子。
それについては私も人にどうこう言えたもではないのでスルー。というか、全責任は私たちをこの世界に巻き込んだ奴にある。
ただそうなると、彼女は「エディット・クレッソン」のパブリックイメージを守ろうとしているのかがよくわからなくなる。
いやそれよりも……
「それで、そういうきつい現状がある中でエルネストと主人公は交流して……ええと王国を立て直すの?」
本来のシナリオではどうなるのかを知っておいた方が良いだろう。
「うん。大体そういう流れね。ただこれから大変になるわけで……」
「ああ、そうだった。そういう話だった」
どうやらエルネストvs貴族連合以上に何かしらのトラブルが発生するようだ。
当然、そこは聞いておきたいところなんだけど……ちょっとエリーの動揺が激しいな。たいして暑くもないのに、手でパタパタと扇いでいるし。
後から確実にそのトラブルは聞き出すとして、先に他のトラブルの話を持ち出した方が良いのかも。
そっちに話が流れても、それはそれで効率的になる可能性もあるし。
「――話は変わるんだけど」
「う、うん? いきなりね。でも、どうぞ」
何だかホッとした様子のエリー。
……一体何を隠したいのか。
でも、自分で言い始めたことなので、キッチリ話は変えるために、こう切り出した。
「緑の髪の男子がいるでしょ? 名前は確かギルバート・ログレス。あの男子も攻略対象?」
そう告げた途端、エリーがにへらとした笑みを見せた。瞳孔の見えない瞳も歪んでいる。藤田和日郎のキャラみたいに。




