王太子エルネストの苦労
やはり攻略対象を中心に話を聞いた方が良いだろう。それぞれでシナリオも違ってくるのだろうし。そこで顔もわかってるし、想像しやすい王太子エルネストから説明してもらう事にした。
そうやってエリーに話を聞くまでは王太子エルネストに対する印象は、
「テンプレすぎる容姿で、特に注目すべき点もない」
という感じだった。良く言えば「王道」って事なのかな。だから一番に話を聞くことにしたんだよね。
でも、こういうキャラって、あんまり人気出ない。星矢も人気なかったし。
それなのに校長に怒鳴っていたのが意外と言えば意外だったんだけど……
「ああ、それはね。この『アウクスブルク』を変えたのがエルネストなのよ。それもごく最近」
というエリーの説明で、怒鳴っていた理由についてはすぐに判明した。
そう言えばロート村でも「アウクスブルク」が最近変わったという話は聞いた覚えがある。
となるとエルネストは「理事長の息子」ではなく、実質的に「理事長」だったというわけだ。あの時校長に怒鳴っていたのも、その視点で見れば、
「改革派の理事長」vs「保守派の校長」
なんて構図が見えてくる。
と、ここまで理解するとエルネストは何故「アウクスブルク」を変えようと思ったのか? という点が疑問になるわけで。
エリーはちゃんとその理由も覚えていた。
実質未来予知だもんなぁ。そんな理由が「図書室」に転がっていたら、それはゲームの破綻か、別ジャンルのゲームになってしまう。
それでエリーが言うにはリーヒルト王国、かなりヤクいらしい。
その原因はまず第一に、
「国王がバカなのよね」
と、他に漏れたら物理的に首が飛ぶんじゃないか? って言うぐらいの直接的な表現で説明してくれた。
それだけで十分という気もするけど、もう少し具体的にお願いしてみる。
「……言ってしまうと、変にやる気のある無能なのよ。会社でもそういうの一番厄介でしょ? それであれこれと手を出して、結局全体がダメになる感じの」
エリーの中の人も苦労してきたんだろうな。
これは、この世界に巻き来れた理由も過労死みたいな線なのかもしれない。
……もちろん、確認したりはしないけど。
話を進めよう。
「じゃあ、エルネストはそれを嫌がってるんだ。それだと彼は少なくとも無能ではない感じ?」
「うん、そういう感じではあるんだけど、エルネストの問題は貴族なのよ」
と、侯爵令嬢が仰る。何だかおかしな気持ちになるシチュエーションだ。今回はエリーがフル・フラット形態だから尚更だ。
スコーンの様なものを齧って、気持ちをリセットしよう。
「結局、そういう無能をいいように操っているのが貴族たち。で、王国の運営に関わるのも結局貴族なわけでしょ? エルネストはそれを何とかしたいと思って『アウクスブルク』に手を入れた、ってわけ。平民に人材を求めて」
スコーンの歯ざわり以上に、なかなかしっかりとした設定が明かされた。
歴史上でも、ありそうな話だし。則天武后を思い出すなぁ。
でも、それが上手く行っていないのが現状なんだろう。
それに、エリーが説明を避けているとしか思えない部分もある。そこは確認しなければなるまい。
「――それで、クレッソン侯爵との関係性はどうなってるの?」
そう私が尋ねた瞬間、エリーの顔に縦線が入った。




