とりあえずゲーム世界で確定
そう尋ねた時のエリーの表情は驚愕に満ちていた。……まぁ、私もそう思うよ。やってることが無茶苦茶だ。どちらかというと黒幕の方が。
「ちょ……ちょっと待って。君、ああ“ジョー”だったわね、と、とにかく何にも知らないの? この世界について」
「残念ながら――知らない」
「知らないのに、この世界に来たって言うの? これ転生よ!?」
その辺りも疑問があるんだけど、いつまでもエリーに付き合ってはいられない。
私は淡々と話を進める事にした。
「エリーは知ってるって事で良いみたいだね。この世界について」
「そ、それは……」
「ゲームのタイトルは?」
「あ、『アリスの為に鐘は鳴る』」
それ元ネタは「カエルの為に鐘は鳴る」じゃないのか?
いや、落ち着こう。そのさらに元ネタの「誰がために鐘は鳴る」が元ネタかもしれない。
待て待て、その前に「アリス」か。
あの女神、もしかして重要なのか?
それにしても……やっぱりこのゲーム開発者はどうにも胡散臭い。それはそれで願ったりなんだけど。
「……ジャンルは『乙女ゲーム』で良いのかな?」
「う、うん。それはそうね。選択式のADV」
なるほど、エリーはある程度は《《話せる》》知識は持っているようだ。
そうなると次に尋ねるべきは――
「エディット・クレッソンという名前は知ってる?」
「そんなの決まってるじゃない。《《わたし》》の名前だもの。フールミが抜けてるけど」
これは……本物のクズ「エディット・クレッソン」は知らないのか。
知らなければそれで済む、というかこの世界では重要な知識ではない。
私が確認しなければならないことは、他にもある。ゲームの基本情報……というと、おかしくなるな。つまりマニュアルに載ってるような導入って奴だ。
そこを素直にエリーに尋ねてみると、
「それ、もの凄く大変なんだけど。一から説明しないといけないし」
そんな“よつば”のような覚悟が返ってくる。それなのにエリーの表情は嬉し気だ。悪役令嬢の雰囲気が台無しである。
でも、このままエリーから話を聞くのはいかにも効率が――あ、あれが使えるかも。
「――この学校に図書室はある?」
「図書室? ああ、確かにあるわよ。わたしはこっちに来てから行ってないけど」
「あるのは確実と。私は先にそっちで勉強することにする。その方が楽でしょ?」
「それは……うん、そうかも」
私に説明する苦労を想像したのか、エリーはあっさりと私の提案を了承した。
そこで私はさらに踏み込んだ。
「多分、これから私がやろうとしてる動きって無茶をしてると思う。だから『悪役』が『主人公』に無茶を言っているという形にした方が良いと思うんだけど……頼める?」
「え、待って? このゲーム本当に知らないの?」
知らないからこんなに苦労してるんだけど……あ、そういえば確認しておきたかったことがあったんだった。
緊急じゃないけれど、知っておきたい事。
それにエリーの持つ知識がどれだけ信用できるかの目安になる……かも?




