まずは挨拶とルール設定
おおう。
と心の中で呟いておく。何しろ「フル・フラット」が「フル・フラット」じゃなくなってるからね。やはりあの珍妙な髪形を維持するには、何かしらの細工が必要だった、って事になる。
……待てよ?
そうなると、この「中の人」がいる「エディット・クレッソン」は、苦労してそれを維持していることになるわけで……これはさらに希望が持てそうだ。
「先に確認しておくけど“日本人”よね?」
先に立って、私を居間、あるいは応接室に招き入れながら「エディット・クレッソン」は、そう尋ねてきた。
「はい。それはあなたも“そう”ですよね?」
と、返す刀で私も確認しておく。
この辺りは挨拶のようなものだ。
「エディット・クレッソン」は肩をすくめながら頷くという器用なムーブを見せて、私に椅子を勧めてきた。
ああ、こっちの生活を受け入れてるのか。靴を脱いでもいない。
それなのに、着ている服は良いように言えば「リカバリーウェア」。
つまり、ベージュのスウェットに見えるわけで……これもしかしたら侯爵家の財力に任せて開発したんじゃないだろうか。
「で、何から話そうか? 呼び出したのはいいけど、いざ、となってみると何だかまとまらなくて」
「私もです」
「それ」
「エディット・クレッソン」は悪役らしい素振りで、私を指さして来た。
「どうして敬語なの? っていうか、まず自己紹介よね。わたしは――」
「それは止めておきましょう」
「エディット・クレッソン」が自己紹介と言い出すパターンは想定してあったので、私はオートマチックにそれを進めることが出来た。
「え? じゃあ、話を聞くのも無し?」
「いえ、それは是非ともお願いします。だからこそ、お互いの《《本名》》は知らない方が良いと思っているんです」
「エディット・クレッソン」が何か言いかけたのを無視して、私はその理由を並べていく。
お互いにこの世界での名前――「立場」と言い換えても良い――がある。
それなのに、それと脈絡のない名前で呼ぶようなことがあれば、周囲からはおかしな目を向けられることになる。
それならいっそ知らない方が良いのではないか?
長い付き合いになりそうだと思っているならなおさら、と。
私としては「テーブルトークリプレイ」で、お互いをキャラ名で呼ぶような感覚だったんだけど、先に言った理屈の方にも十分説得力があったのだろう。
「エディット・クレッソン」は、力強く頷いた。
その代わりに、二人でいる時はお互いを「ジョー」と「エリー」と呼ぶこと。敬語は無し、という取引を持ち掛けられた。
ふむ。やはり「ブレイクエイジ」の色が見えるな、と思いつつ私もそれを了承。
頷きながら「愛称」の仕組みはよくわからない、と諦めながら、私は急所に突き刺すような質問をしてみた。
色々考えてみたけどなんか面倒になった、なんてことも理由だけど。
「――それでこの世界はゲームが元になってるって事で良い?」




