ジョーは彼女と関係したい
まずは「シナリオ通りの反応である」という可能性を考えてみる。
だけどこれは……考えるまでもなく、
――「そんなシナリオは成立するのか?」
という根本的な疑問が襲い掛かってくるわけで。
何しろ、「シナリオ通り」を成立させるためには「主人公」もまたシナリオ通りに動いていなければならない、という制約があるからだ。
もちろん私の動きはそんな制約など、無いかのような動きになっているはず。
つまり「エディット・クレッソン」の動きがおかしく感じたのは、そもそも私が元凶という事になるわけになるな。
一応、そのパターンで色々考えてみた。
せっかくなのでフローチャートなんか書いてみたりして。
その結果としては「もう手に負えない」と、事態を投げ出す踏ん切りがつくだけだった。
それでも成果らしきものがあって、
――「なぜ彼女はどの攻略対象にも関係が無いのか?」
という疑問に気付くことが出来た。
これ「乙女ゲーム」の場合、随分特殊なのでは? と気付いたのだ。
「エディット・クレッソン」の情報は出来るだけ集めたけど、将来の約束をしている、みたいな話はついぞ出てこなかったんだよね。
秘密にしている可能性もあるにはあるんだけど、秘密にする理由を思い付けなかった。
何しろ「乙女ゲーム」というものは、そういった「悪役令嬢」が最初は有利なポジションにあって、そこからの下剋上もまたカタルシスになるはず。
という事は「目を逸らす逸らさない」という問題以前に、シナリオがおかしくなっている可能性すら出てきたわけだ。
その可能性は、そのまま、
――「エディット・クレッソン」の中にも誰かがいる。
という想定を補強することに繋がる。
だって私、この「アウクスブルク」に入学するまでの人生をしっかり歩んできたんだもの。その間に、おおよそ《聖女》とは呼ばれにくい称号も獲得している。
それなら「エディット・クレッソン」の中の人もまた、ここまでの人生を歩んできていて、元のシナリオでは取り交わされるであろう将来の約束を「無し」にしてきた。
だからこそ、あの「エディット・クレッソン」はフリーになって「アウクスブルク」に現れたと考えると、かなりスムーズに推測出来るんだよね。
それに「エディット・クレッソン」が、そういう方向――つまり私と同じように、あまり人と関わらない事を目標としているなら……
(目を逸らしたことも説明できるか……)
と、口の中で「答え」を呟いてみる。
何しろ私は主人公だ。関わったら最後、何かしらの強制力が働くと考え、警戒するのも当然とも言えるのだから。
ただそれを前提とした場合、それでも疑問は発生するわけで。
それに何より、私自身は彼女と関わりたいと思ってるんだよね、残念ながら。
……中に人がいるって言うならなおのこと。




