目を逸らされた意味を
疑問を覚えた事はいいとして。さすがにその場で、そのまま「エディット・クレッソン」に詰め寄るなんてことは出来なかった。
初対面であることは間違いないし、相手は貴族令嬢なのだから。
学校では身分は関係無い、何てお題目は信じられないし。
けれど……何というかな。
疑問が噛み合わない、とでも言うべきか。
そこで私は寮の部屋に戻って、さらに疑問を中心とした推測を深めていくことにした。
ちなみに私の部屋はもうもう改造済みで、土足厳禁状態になっている。
それだけで部屋に戻ると随分リラックスできるんだよね。三和土の設置は出来なかったけど、靴を脱げるスペースがあることは進歩と言えるだろう。
寮の部屋は、寝室と居間という二部屋の構成になっている。それぞれなかなか広さがあって、圧迫感が無く快適だ。
むしろ圧迫感が無いことで快適さが減っている感じさえもある。
寝室と居間を別な言い方で表現するなら「私室」と「応接間」になるだろう。
寝室にはクローゼットもあるので、着替えとかは基本的に寝室で行う事になる。勉強のための机も寝室に備わっているしね。
で、居間の方は完全に人を招き入れる用だった。テーブルセットが中央にドンとあり、あとはタペストリーやレースが吊るされている感じ。
……つまり今の私には、居間は全く必要ないスペースという事で。まだまだ色々改造の余地はあると思ってるんだけど、とりあえず今は絨毯を敷いただけで満足しておくことにしよう。
もちろん、そんな風に「借りてきた猫」みたいな佇まいを見せる居間はさっさとスルーして寝室に入る。
そして、書くことも必要になるかも、と思い、ベッドに身を預けるのはやめて、学習机と向き合うことにした。
まず――
彼女「エディット・クレッソン」は「ジョセフィン」を認識していたのか?
そこから考えてみる。
これには二つの意味があって、まず「エディット・クレッソン」が私の存在を認知していたかどうか。
あの瞬間を、しっかりと思い出してみると……うん、やっぱり私に気付かなかったとは思えない。私が彼女を見つめすぎていて、一瞬とは言え目が合ったのだから。
目が合って、それに気付いたからこそ彼女は眼を逸らした。
ここまでは間違いない。
すると次は彼女は私を「主人公」として認識したのかどうか?
そこが問題になってくる。
かたや茨城で、かたやピンク髪なのだ。ビジュアルの面では悪目立ちし放題。
「エディット・クレッソン」の方でも私が「特殊な存在」であることを気付かないはずがない。
では、気付いた後はどういう反応になるのか?
それには二通りのパターンが考えられる。
即ち「シナリオ通り」に反応する。もしくは――
――中に別人格が入っている場合も考えなくてはいけないのだろう。
そう。「ジョセフィン」と同じパターンだ。




