あるまじき反応
「……クレッソン侯令嬢、エディットさん。一体何があったというのです?」
見上げた職業意識というべきか。寮母さんが「悪」を体現したかのような「エディット・クレッソン」に声を掛けていた。
語尾が震えていたけど。
ちなみに今、私が……というか寮生の大半がいるのは、食堂だったりする。
今は夕食を摂ることが出来る時間帯――大体、19:00ぐらいといったところ。
カーテンは降ろされているけど、魔法の道具による照明によって、食堂は煌々と照らされており「エディット・クレッソン」を視認するのは何ら不自由な部分はない。
「――島からこちらに向かう船が……そうね。調子が良かったとは言えなかった。そういう事です」
寮母さんの問いかけに「エディット・クレッソン」は、割とちゃんと答えた。
「わたしとして入学式にもちゃんと出るつもりでした。だからこそ、このように制服も用意していたのですから」
「そ、それは……」
果たして制服なのかどうか? という疑問をスルーすると、確かに彼女は「入学式」に出るつもりはあったのだろう。
寮母さんはそういう風に解釈したようだ。
……そう解釈ぜざるを得なかったというか。
私たちのように先に入寮した者は、この時当然私服だ。この私服に着替えるというのが貴族のお姫様にとっては難物みたい。
それをきっかけにして、平民の私たちとの交流が始まる、という思惑もあるようだ。
私はそういった機会を積極的にスルーしているので、そんな交流の行く末がどうなるかは見当もつかないんだけど。
これ、ゲームでもこういう仕様なのかなぁ? と思ったことはある。
そして今も、それと同系列の疑惑が私の中にある。
「エディット・クレッソン」のこの動きは、果たしてゲーム通りなのか?
それとも、何らかのイレギュラーが発生しているのか?
「クレッソン侯爵家」は「イル・ラーリア島」が領地だというし、天候不順でスケジュールが読めない、なんてトラブルは割とありそうではある。
だが、シナリオ的にそれをするメリットがあるのかどうか……何らかの伏線がこの動きには含まれている?
そうやって、考察に夢中になり過ぎたせいだろう。
私自身「悪」だという印象を持ったはずのヤクい奴。「エディット・クレッソン」を注視してしまっていたのだ。
それはヤンキー界隈では「メンチ切ってる」とか「ガン付けてる」とか呼ばれる行為に思われたはず。
これはマジでヤクい! と視線をそらそうとしたその時――
フイッ
――と「エディット・クレッソン」の方が先に視線をそらしたのだ。
ん? これはどういうこと?




