五年後、とりあえず日本文化の侵入
そんなこんなで五年ほど経過しました――
そして未だにこの世界が何なのかは判然としていません。日本人の感覚で言うなら「異世界」という事には間違いないみたいだけど。
そういう世界であっても、世界は世界として成立しているようなので、私も順調に成長してます。
何しろ、取り立てて貧しさを感じることのない経済事情。さらには半端に便利な世界観。
これでは生物としては順調に育つしかないわけで。
すでに幼児というよりは少女と呼んだ方がいい見た目になりました。
お母さんが仕立ててくれた服を着て、やっぱり特筆することも無い生活を送っております。学校というか寺子屋みたいなものにも通い始めました。
女神アリスの礼拝堂が、そういった学校になるみたいだね。
日本人としての知識がある身としては、文字さえ習得してしまえば、課題になる計算とかは簡単なもので、何だか理系女子みたいな扱いになっている。
……うう。数学で赤点常連だったんだけどなぁ。
お友達の、フランちゃんとレナちゃんも私を尊敬のまなざしで見つめます。
何だか途轍もない詐欺を働いている気持ち。いや実際、これは詐欺なんじゃないだろうか?
かといって「その辺りは知ってるから学校行かない」というわがままを言えるはずもなく。
そのせいか、家の中ではかなり好き勝手するようになってしまった。
……間違いなくストレスのせいだと思う。
重ねて言うけど、この世界は半端に便利ではあるんだよね。
お風呂もちゃんとあるし、石鹸もある。コンロのような調理機器もあるし、灯りについては改めて言うまでもなく。
そういう環境がある中で、私がずっと不満だったこと。それは家の中まで靴を履いて生活する事だったりする。
日本人としては、ここがなんとも窮屈に感じてしまった。
そこで私はお母さんに訴え続けて、住居環境を整えて、何とか靴を脱いで生活できるようにした。
玄関というか三和土を設定して――床自体を上げるのは難し過ぎた――その先にカーペットを置いたわけである。
カーペットは贅沢品だったので、玄関マットといった方が良いのだろう。大きさもそれぐらいだし。
お母さんは最初は戸惑ったみたいだけど、実際こうした方が掃除が簡単になることに気付き、今では積極的に受け入れてくれている。
私もこまめに掃除をすることになったし。
そう。家の中の掃除は背が届く限りは私の担当になったのである。
中身が大人である私は、これで大いに面目を施したわけなのだが、やっぱりこっちの世界観とは相容れぬものがあったよう。
靴を脱いでの生活に関しては、村の中で知れるに従って奇人扱いになった時もある。
けれど私は《聖女》認定された身でもあって、その内にこの村では「家の中では靴を脱ぐ」生活がスタンダードになってしまった。




