色々、足らない気もする
「――新入生総代。エルネスト・フユンル・ルーンシュタット」
と、まとめて壇上で宣言した男子が、この国の王太子であることだけはわかっている。
当たり前に攻略対象なんだろうなぁ、とは思うけど、それ以上の感想は出てこなかった。
それではいけないのは、わかってはいるんだけど。
何かこう……テンプレなキャラデザ過ぎて。
同じテンプレキャラデザなら、校長の方が……あれはどういう経緯で、あんなキャラデザになったんだ校長。モブだとは思うんだが。
学校で校長がモブというのも変な気がしてきた。ならあのデザインにも意味が?
で、あの校長はともかく、この国の王太子が同期なんだもの。同時に入学してるんだし、それは間違いないだろう。
なら絶対、主人公に関係してくるよなぁ。そういう「乙女ゲーム」のテンプレは外してこないだろう。
外す意味も分からないし。
ただ、現時点では壇上から私を見つめてくるという事も無いようだ。
一般に言うところの「おもしれー女」という認識にはなっていない感じ。そもそも私を個別認識しているのかも怪しいところだ。
王太子は攻略最難関のキャラで、すでに取り返しがつかない状態になってるとか?
いや、恐らくそれはないな。じゃないと、私を巻き込んだ意味が無い。
それより留意すべきは「エディット・クレッソン」の役どころが「悪役令嬢」だった場合、この王太子とは何らかの関係があるだろうという事だ。
それ自体は公になっていないみたいだけど……本当にどんなゲームなんだこれ?
どんなゲームなのか? と訝し気に思う部分は他にもあって。
髪色だけの話だけど、そういう意味で目立っているのは王太子含めて三人ぐらいしかいない。
この会場で見渡せる限りは、だけど。あ、ちなみに男子の制服は黒が基本みたいだね。
ショートコート着用なので、構造的には同じだと思う。
で、王太子はテンプレ通り金髪なので、それほど目立っているわけじゃないんだけどな。あとわかりやすく目立つのは緑髪。
あと目立つ赤髪もいるんだけど、この色もそこまで目立つわけではない。
でも、これぐらいなんだよね。
これは「入学式」なので、先輩にもっとわかりやすい髪色のキャラがいる可能性はあるんだけど……「乙女ゲーム」ってこんなにキャラ少なくて成立するものなのだろうか?
――もしかして「乙女ゲーム」ではない?
でも、それだと「エディット・クレッソン」の存在がなぁ。
で、問題の「エディット・クレッソン」はどうやら入学式に現れなかったみたい。
そんな事ってある? ……とは思うんだけど、出席しないと退学、という決まりもないみたいで。
そうなると出席しないという選択肢もありはありだろう。
あくまで「悪役令嬢」としては、という事になるんだけど。
果たしてそういった「エディット・クレッソン」の動きは、何を意味しているのか?
ゲームのシナリオ通りなのか?
それともパブリックイメージに忠実足らんとした結果なのか?
やっぱり、会ってみないとわからないなぁ、と思っていた私なんだけど、その機会はすぐに訪れた。
彼女「エディット・クレッソン」は入学式が行われた、その日の夜のこと。
多くの使用人を引き連れて彼女は女子寮に現れたのだから。
……それも、かなり印象的に。




