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発見してしまった「名前」

 熊退治の顛末、というか「悪巧み」の顛末によって、私は諦観に浸ることが多くなったんだけど、それでもこの「世界」で生きていくためには、何かしら動機は必要になるな、とはうっすら考えてはいたんだよね。


 選択肢の一つである「自殺」については、私に勇気が無い事が選べなかった理由ではあるんだけど、


(そもそも自殺できるものなのか?)


 という、疑いもあった。


 強制力というものがあることは確実に思えたし、無茶をすれば、どんな後出しルールを組み込まれるかわかったものではない。


 となればゲームでは恐らくエンディングを迎えるだろう、


 「アウクスブルク卒業」


 までは、下手なこと(自殺)はしない方が良いだろう、という判断になったわけだ。


 では、そこまでボーっとしていれば済むかというと、そんな悠長な見通しも立てられない。

 かなり自由度が高いはずのハラー村での生活でさえ、いつの間にかイベントに巻き込まれている。


 ……私自身が、積極的に巻き込まれに行った部分があることは認めるけど。


 とにかく、この強制力を刺激するように逃げ回るのもヤクいという判断に私は辿り着いたわけだ。

 そして逃げ回るためにも、情報収集は必須だと。


 ここで通常なら「乙女ゲーム」の攻略対象者に接触するのが王道ではあるのだろう。けれど、それで誰かをいつの間にか選んでしまった場合、自由度が無くなるのでは? という恐れがある。


 自由度が無くなる――


 それは私がこの世界で生きてゆくため、うっすらと考えていた動機に真っ向から逆らうような選択になる。

 だから、攻略対象者との接触は出来るだけ控えたい。


 それは私自身が露ほども攻略対象者に興味を持てないことも、理由の一つに数えて良いと思っている。

 好き嫌いだけの問題ではなく、私をこの「世界(ゲーム)」に巻き込んだ奴は、そういったまともなやり方を期待してはいない。


 そう推測出来るからだ。


 しかしそれでも情報収集が必要なことには変わりがない。

 で、あるならこの世界の中心にいるであろう、他の情報提供者を求めるしかなくなるわけで。


 ここまで思考を進めれば、答えは明らかだ。


 通常のゲームならば 「敵」になるであろう存在。

 「悪役令嬢」こそが私の希望になる可能性は高い。


 「悪役令嬢ルート」というものが存在していた場合……それはもう潔く諦めるしかない。

 元々、私はこの世界を諦めているのだから。


 だからこそ私は入学式で、それっぽい存在を探すつもりだった。

 多分ゲームはその辺りから始まりそうだし、そういう出会いイベントも組み込まれているのだろうと。


 そのために覚悟を決めていた私だったのだが――


 その覚悟は覆されることとなった。

 入学名簿を何と無しに確認した時、見つけてしまったのだ。


 あの名を。


 「エディット・クレッソン」の名を。

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