過去は清算されずに
彼女たちの態度が変わったのは、端的に言えばロビー活動のせい。
もちろん私はそんな活動はしてない。活動したのは基本的にレル。
熊騒動で各村への説明が終わった後に、レルは同行しなくてよくなったタイミングがあったことを思い出して欲しい。
あのタイミングで、レルは彼女たちに意識の変革を求めていたようだ。
私はあの時、「悪巧み」を仕掛けるのに夢中になっていたから、レルのそういった動きには全く気付かなかったんだよね。
そんな私は、傍から見ていると「熊来襲に備えて、身を粉にして尽くしている」ように見えていたことも、その助けになっていたようだ。
……後から気付いたんだけど。
そんなレルの活動を援護したのは、ロート村に駐在していたカルト卿だったようだ。カルト卿はそういう意図はなかったようだけど、あの時期の私って悪目立ちしてたからねぇ。
ロート村の有力者との会食なんかで、私の名前も結構出たらしい。
そうするとカルト卿はテセウスの話もしたようで。
で、そのテセウスの娘であるところの私が、あの付近の村のために尽力している――ように見える――となれば、素直に称賛するるしかなかったようだ。
これが彼女たちからどう見えたかというと、
「うんこ聖女は貴族にも覚えめでたき」
という感じになるわけで。
その前の伯爵からの感状については一過性のものだったけど、カルト卿は半月ほどロート村にいたからね。
もしかしたら、レルを通さずにカルト卿と接触したものもいるかもしれない。
カルト卿はほら。随分気易かった人だったし。
もしかしたら、レルの活動よりもカルト卿の言葉の方が彼女たちの意識を変えるのに有効に働いた可能性はあるな。
とにかく、そんな二人の活躍であの春の光景に繋がるわけだ。
かくして私は近隣一体の誉れとも言うべき立場になった――
――《《説明がこれだ》》。
~・~
しかしこの馬車、随分と速い気がする。標準的な馬車の速度なんて体感したことは無いけれど、窓の外を流れる景色の移り変わりがほぼ自動車。
それも高速に乗ってる時の。
そのくせ、乗り心地も悪くない。
見た目が戦車のくせに居住性にまで気を配っているなんて。
多分、この馬車にも魔法的な道具が組み込まれているのだろう。
あるいは御者がそういう魔法を使えるのか。
結局、魔法関係がこの世界でどこまで使われているのかは、はっきりしなかった。
その辺を知りたい素振りを見せたら、猫でも殺されそうな予感もするし。
これから入学する「アウクスブルク」で、それを学ぶ機会があるのかどうか。
何がどうなっているのかわからないけど、学校にいる間は身分については問われない、という決まりになっているらしいけど……
もちろん、そんな名目を信じる私じゃない。
「スーツでなくて結構です。楽な服装でお越しください」なんて信じる日本人はいないのだから。
あ、礼儀作法については出来る限りのことはした、とリーン女史から不安なお言葉を貰ってますよ。




