ジョーの旅。過去への旅
心に浮かぶのは「ザ・サード」。あるいは「ウエルベールの物語」。
どうやら私の心は戦車に占められてしまったようだ。
ロート村からギーガーまでは普通に見送られて、今はジャコメッティ伯爵家所有の馬車によって、王国の首都である「トレヴォロ」へ送ってもらっている最中だ。
伯爵家が親切であることも理由になるんだろうけど、領の誇り、みたいな心情もあるんだろう。
だから私を乗せて送るだけの馬車が随分物々しくて。いや、荷物も結構あるんだけど。
最初は本当に戦車と思いました。
馬で引くので「馬車」であることに間違いはないのだけれど。六頭立てなんて本当にあるんだ。
だから古代中国で言う「戦車」を思い出すべきなんだろうけど、ビジュアルがかなり「マークⅠ」に似ている。
キャタピラはないんだけど。別に塹壕突破する必要もないだろうから、それはそれで良いと思う。だけど、とにかく四角い箱なんだよね。
こんなので首都に乗り込んだら、反乱を疑われるんじゃないかと思うんだけど、もちろん口には出さない。
二年余りの特訓で随分口数が減ってしまったよ。
意図してそうなったのではなく、何かずっと諦観していたような感覚がある。
馬車は完全な箱ではないので窓はある。その窓の外を流れる景色を見ながら、もう随分遠くなったであろう故郷での二年間を思い出してみる――
~・~
入学が避けられない身であることが判明しまして。そうなると「うんこ聖女」としては、堆肥が一番に気になるわけで。
「アウクスブルク」が長期休暇になれば、ジャコメッティ領に帰省する段取りにはなっているけれど、それでも村から長期間離れていてもいいように対策を講じた。
まず、ハラー村の吹き溜まりに依存するのを止めました。
その決意に至る第一段階として、あれから他の村からもさらに堆肥が欲しいという声が上がりましてですね。
熊退治で協力してくれたこともあって、出来るだけご要望には添いたいと。
伯爵家でもそれを推奨していたので、前向きに考えざるを得なくなったんだよね。
そうなると吹き溜まりだけで発酵させるというのは、いかにも効率が悪い。
私が各村に行った方が、圧倒的に省エネだ。
とは言っても、各村に吹き溜まりのような立地の良い場所があるはずもなく、まずはその場所を作ることから始めることになった。
洞窟とか、それこそ熊の巣穴とかそういう場所を利用することになったみたい。
強烈な臭気は動物避けという効果も見込めるとか。
そのせいで、猟師の方々とは一悶着あったらしいけど、それは余談になるのだろう。
こうしてメナン村とザーギ村では、無事に堆肥の集積場兼発酵場が完成。
吹き溜まりのような便利な地形は無かったので、村ごとに三か所ほどそういうポイントがあり、私がそこで祈りを捧げる事になった。
面倒ではあるけれど、効率の面ではいちいちハラー村に糞を運んだり、それを持って帰るのと比べれば、考えるまでもないだろう。
ただ問題なのはロート村だった。




