逃れられない運命
知らないふりをするまでもなく。
レルが何を言っているのかさっぱりだったので、順番に説明してもらった。
まず「アウクスブルク」というのは「トレヴォロ」という街にある施設という事がわかった。
で、「トレヴォロ」という街は、ただの街ではなく首都らしい。
「リーヒルト王国」という私が今住んでいる国の首都。
意識的に、その辺りの固有名詞を把握するのは避けていたが、キチンと設定されていたようで何よりだ。
で、改めて「アウクスブルク」とは、何の施設なんだ? という質問に立ち戻ってみると――
「も……もしかして《《学校》》?」
「何だ。知っているではありませんか。そう『アウクスブルク』はまさに学校です。国中から期待された俊英が集う学問の府!」
こ、これはヤクいぞ!
礼儀作法教室卒業どころではなくなった!
卒業どころか、入学の話になっている。真逆じゃないか!
いや、そういう事ではなく――
――《《入学の時点で本編が始まる》》仕様のゲームだったら?
「で、でもそいうのはレルこそでしょう? 私はほら、色々と臭いわけで」
私は何とか抵抗を試みる。
そのために施していた準備を振りかざして。
だけどレルはそんな私の訴えを待ち受けていたように、こんなことを言い出した。
「そこがあなたが選ばれた理由ですよ。あれはあなたしか出来ません」
「そんなことは無いでしょう。レルがやったって同じことが出来ます」
「出来ません。あなた、わたくしが試しもせずに、そんなことを言うと思ってますの?」
「それは……」
……ああ、そうだね。思ってない。
レルは何と言っても真面目なのだから。
真面目だからこそ《聖女》の役目にも熱心で――レルが「臭い」と理由だけで、実際に効果がはっきりしている堆肥の発酵を躊躇うはずはないわけで……
私は、自分の策に溺れて、レルを見誤っていたのか。
そんな私の変化に気付いたのだろう。
やれやれと言うように肩をすくめる。
「おわかりになった? あなたの《聖女》としての力は飛び抜けているんですのよ。推薦されるに相応しいのです!」
そ、それはわかったけど、このままでは……そうだ!
「で、でも私は怪我の治癒とかは出来ないんですよ?」
「練習しましょう。幸い『アウクスブルク』に行くまで二年ほど余裕がありますから。あなたならすぐに出来ます」
簡単に言ってくれる。
確かに今までやったことが無いので、出来るかどうかはわかんないんだけど!
「その間に礼儀作法も完璧にしましょう。わたくしも協力させてもらいますよ」
こ、この強制力少女が!
はっきりわかった。レルこそがゲームを進める強制力を司っているということが!
そ、それでもなんとか……
「――閣下からご下命いただいたと考えるべきですね」
そんな私の抵抗を粉砕するように、リーン女史まで参加して来た。
「件の熊の毛皮。随分話題になったそうでしてね。他の領からも問い合わせがあったとのこと。こうなると閣下としても、ジョーさんを送り出さないわけには行かないようで」
あの巨大熊か! その毛皮か!
……じゃあ自業自得とも言えるのか。
この逃れられそうにない運命には――立ち向かえそうもない。




