彼女はゼフィランサスのように
堀江美都子が歌う「春の兆し」って曲がある。特番の「若草物語」の曲なんだけど、これの歌詞が何とも不思議で。
この歌は、
春が来たら、きっとつらいわ~
で、終わるわけだ。
良い曲であることも手伝って、何度も聞いていたんだけど、この歌詞の意味が読み取れないというか。共感できないというか。
でも、今の私はそんな歌詞にちょっと共感している部分がある。
冬の間にたっぷり発酵させた堆肥を、田起こし――ではないんだけど、それに類する作業で忙しい間は、私も配達に忙しい。
なので、すでに雪が交通の邪魔になるような状態ではないのだけれど、私は礼儀作法教室への参加を見送っていた。
このままフェードアウトが理想的かなぁ、と思っていたらレルが吶喊してきましたよ。
ゼフィランサスのように。
とにかくこれでフェードアウトルートは選べなくなってしまいました。
となれば、きちんと辞める意思を伝えなければならない。
今は早春という感じなので個人的には「卒業式」な気持ち。
そこで「春の兆し」に込められた思いも「卒業式」……とは言わないけれど春の別れみたいな心境を表しているのではないか、と思い至りました。
何しろこの世界への不信感が一杯の状態では、何事に対しても真剣になれないというか。
割と「働いたら負け」という心理ではあるんだよなぁ。
剣心のように「絶対働きたくないでござる!」という断固たる意志とまではいかないんだけど。
まぁ、そんな感じで私は荷馬車に乗って、久しぶりにロート村のホールに向かっているというわけだ。
「春の兆し」を鼻歌で奏でながら。
~・~
パチパチパチパチパチ……
え、拍手? 拍手で出迎えられてるの私?
レルがそうするのは何かやりそうな気もしないではないけど、私を嫌っていた他の受講者まで?
それよりもリーン女史までパチパチやってるのは、本当にわけがわからない。
さらにこの教室には参加していない、レルのご両親にロート村の村長までいる。
え? マジでどういう状態なんだこれ。
エヴァの最終回? おめでとう?
私はまだ辞めるとも何とも言ってないんだけど。
「あ、えっと……レル。これは一体何?」
とにかく一番話しかけやすいレルに声を掛けてみる。
それに前後の状況から鑑みるに、レルが首謀者っぽいんだよね、この状況。
そしてその推測が当たりなのか、レルが一歩前に出ると同時に、周囲の拍手も止まった。
「ジョー! おめでとうございます!!」
「え……?」
突然、世界がネタバレを始めたのだろうか?
いつの間にか、私はゴールしていた?
そんな風に私が混乱していると、レルは私の様子には構わず、こんなことを言い出した。
「あなたの『アウクスブルク』への推薦が決まったのですよ!」




