誤算がダブルなのかもしれない
これは完全に私のミスなんだけど。
仕込んだ悪巧みが、ちゃんと働くかどうかを、私はこの目で見ることが出来ると思っていたんだよね。
――そんなこと出来るはずもないのに。
何しろ私は、まだまだ「少女」という年齢なのだ。背伸びをしたところで「小娘」ぐらいのものだろう。
そんな子供を、実際に巨大熊と対峙するような現場に連れて行くはずはなかったんだよね。
少し考えれば、そんなことは当たり前だというのに。
どうも「悪巧み」に夢中になり過ぎて視野が狭くなっていたみたいだね。
冬眠用の寝床を用意する――ぶっちゃけるとそれは大規模な罠でしかないんだけど――その準備は一応完成した。
三つの村でそれぞれ。
ザーギ村は十年前に罠に使った洞穴を再利用。
これはちょっと大変だったけど何とか「悪巧み」を仕込むことが出来た。
メナン村は大木の下にそれっぽい空洞があったので、それを利用することに。
こっちも大変だったけど「悪巧み」は完全分離状態で、実際に使う時には楽になりそうで。
で、ハラー村はただの一般家屋……とは言い切れないけど、ゲルトおじさんの狩猟小屋を使う事になった。
これもまた「悪巧み」を仕込むのは大変だった。簡単な家だから密閉させるのが一苦労で。
全部の罠に対して、アレコレと出まかせの理屈を作って、それでも納得してもらわなくていけないのだから、私が夢中になって、肝心な部分を失念していても許して欲しい。
そして熊出現を知らせる狼煙の合図が上がったのは――
やっぱりハラー村だった。
これはゲームの強制力というより因果応報を強く感じる展開だったね。
それで私は当たり前の顔をして巨大熊を見に行こうとして、当たり前に追い返されたって事。何とか、肝心な注意だけは伝えることが出来たのだけど……
それで私が仕方なく家に引っ込むと、ガチャガチャと金属の接触音が聞こえてきた。ロート村で待機していた兵士たちは一番に到着したようだ。
ついで他の村からの応援も到着したみたい。
外ではずっと篝火が焚かれていて、何だかお祭りのようだったけど、雰囲気が違い過ぎる。「殺伐」というのはあの時の雰囲気を表現するための言葉だったのだろう。
そして私はお母さんに抱きしめられそうな強さで監視され、そこから一晩。
歓喜の声も、悲嘆にくれる泣き声も聞こえてこない早朝を迎え――子供の体力なので、結局寝てしまいました。
ついに何らかの声が聞こえてきた。
思わず外に出てしまいそうになって、お母さんをどうかわすか、なんてことを考えていたら、冬の冷気が家の中に入り込んでいた。
お母さんがもう外に出ているらしい。
「ジョー! もう大丈夫! 無事に熊を倒せたって! ひどいケガの人もいないって!」
お母さんが玄関先で喜びの声を上げていた。
それを聞いた私は――表情をしかめるのを何とか我慢しなければならなかった。




