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熊ショック

 まぁ、一年ぐらいは続けた方が良いか、と日和っていた私。

 冬になれば、物理的に通う事も難しくなる。そこから自然消滅を狙ってみてもいいだろう、と言い訳を重ねている時に、我が家に客を迎えることになった。


 お客さんはハンナおばさんだった。ハンナおばさんの孫が生まれたので、ハンナおばあさん、とするのが正しいんだろうけど、それは身内の間の事なので、私は今までどおり「ハンナおばさん」と呼んでいる。


 元々、ふくよかな人だったけれど村の食糧事情が良くなったせいもあるのだろう。

 今ではきっぱりと太っている、という事でいいのだろう。


 もちろん、それを本人には言うはずもなく。


 ハンナおばさんが訪ねてきたのは休日の事なので、最初は遊びに来たのだろうかと思っていた。けれど、この時のハンナおばさんは首周りにレースを羽織っている。


 という事は、何かちゃんとした通達があってのことだろうと察した。

 公式に、という表現は大げさすぎるけど、雰囲気としてはそんな感じだ。


 ……そんな感じであっても、ハーブティーと一緒に出した、バターがしたたり落ちそうなフィナンシェみたいな焼き菓子はしっかり食べるようだ。

 羊毛に留まらず、乳製品もしっかり増産されてるからね。


 将来ハンナおばさんの死因は何になるんだろう? 何て不謹慎極まりないことを考えていたら、ようやくの事でハンナおばさんが話を切り出した。


 私はその時まで、


 ――「村を出て、街に行ってみるつもりはないか?」


 という感じに噂の確認にしに来たものだと思っていた。

 だからそれを否定する方向での回答を用意していたんだけど、ハンナおばさんが持ってきた話はそれとは全然違っていた。


「ゲルトは、ジョーに伝えなくても良い、って言ってたんですけどね。わたしはこういうことは知っておいた方が良いと思って」

「ゲルトおじさん? ゲルトおじさんが関係してる話なんですか?」


 そう尋ねてみると、ハンナおばさんはティーカップをソーサーごと持ち上げながら、深く頷いた。

 上品な仕草に見えるから、ハンナおばさんもどこかで礼儀作法を習ったんじゃないかな?


 ――それはともかく。


「ええ、そうなのよ。実はちょっと……いえ、大分面倒なことが起きてしまっていてね。村のみんなはまだ知らないだろうけど、その内知ることになるだろうし」


 思わず、お母さんと顔を見合わせてしまう。

 お母さんの表情から察するに、お母さんも心当たりが無いようだ。


 ハラー村の幹部というか、世話役みたいなポジションの人だけが知ってるって事だな。


「な、何か問題が? 危ない事ですか?」


 ハンナおばさんはもったいつけているつもりはないんだろうけど、事実上そういう話し方になってしまっているので、私から促してみる。


 するとハンナおばさんは、ソーサーを置いて、こう口にした。


「……厄介な熊がね。村の周囲にいるみたいなのよ」 

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