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空気を読むか読まないか

 敬われつつ忌避される。

 その辺りが私が目指した《聖女》なわけだけど、少しやり過ぎた?


 ……と最初は思ったけど、お母さんの話を続けて聞いて行くと、そういう事でも無いようだった。


 私は《聖女》として、これ以上なく立派に恵みを村にもたらしてくれている。

 さらにご領主様にも声を掛けて貰って、今は隣村まで礼儀作法を習いに行っている。


 立派だ。とても立派だ。


 ――だからこそ、この小さな村から出て活躍して欲しい。


「……という雰囲気があるのよ」

「ははぁ」


 と、相槌を打つしかなくなってしまった私。

 何となくわからないでもない気がするのは、日本でそういう心理を描いた作品を読んだ覚えがあるからだ。


 田舎全体でそういう雰囲気になるものかどうかはわからないけれど、そういう考え方をしている人たちが一定数いるのだろう。


 あ、それで――


「ハンナおばさんなんですね。最初に名前が挙がったのが。将来的に私に役目を引き継いでもらいたい、みたいな」

「そうね。街に出たジョーが、この村に誰か連れ帰ってくる、みたいなことも期待してる感じね」


 そっちの方が私としては動機が具体的な分わかりやすい。

 ただ、それぐらいの希望なら――


「ご領主様が手配してくれる気もしますけど」

「それはやっぱり、この村出身のジョーが良いって思うものなのよ。それで街に出て有名になって戻ってきて欲しい、って」


 何だか矛盾してる気はするけど、故郷に錦を飾らんかい、みたいな心理もあるって事だろうか。

 その前提として、まずは村から出て街に行け、みたいな。


 ……あれ? お母さんもギーガーという街に出たって聞いてるけど。


 その時も村がそんな雰囲気だったのだろうか?


 それを尋ねてみると、お母さんは目を伏せてしまった。


「お母さんがギーガーに出た頃とは、全然村の様子が違うからね。お母さんたちがこの村を出たのは、ちょっと不作の時があって……」


 ああ、そうか。言ってみれば村全体の口減らしの意味があって街に出たのか。

 それは確かに全然違う。


 《聖女》の力で不作なんてまずないし。

 それを街で自慢して欲しいなんて心理もあるのかもしれないなぁ。ハラー村全体で街に向かって「ざまぁ」をしてみたいという。


 それに私が街に出たら《聖女》の力が無くなる――という事にはならなくなってしまっているし。ずっとは無理だけど定期的に帰って来て堆肥に祈りを捧げればいいわけだ。


 でも、やっぱり私自身は村から出ていくつもりはないんだよなぁ。

 そのつもりでいれば、何となくそういう雰囲気に入れ替わるんじゃないだろうか?


 ジョーはずっといるみたいだ、みたいな。


 となると元は暇つぶしなのだから、礼儀作法教室はやめることになりそうだな。

 何とか理由を考えてみよう。

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