排泄物扱い?
今、私の目の前にあるのは、便器、である。
人間の営みに欠かせないものだからね。当然我が家にもある。
うちの村では人間の排泄物までも堆肥にはして無くて、その点では江戸時代にもとるという感じです。
けれど例の歪に発達した魔法絡みの道具のおかげで、自動的に浄化される仕組みがあるあたりは、当たり前に江戸時代では及びもつかない。
私の記憶の中の日本だって及ばない気もする。だってこれなら下水道がいらないわけで。
なぜ私はこんなことを考えているのだろう? 「うんこ聖女」と言われたことが実はストレスになっているとか?
いや、これはそうではなく――
「ジョー、あなたさっき掃除してたでしょ? どこか壊れた?」
トイレの扉を開けて、そこで止まっている私はさぞかし奇妙に見えたことだろう。だからこそお母さんが声を掛けてきた。
「ううん、大丈夫。何も壊れてないです」
と、慌てて答えてお母さんの方に振り返る。
「それならいいんだけど……教室に通うのが大変なんじゃない?」
「あ、それは無いです。少しは身についてきた気もしてるんですよ」
私がいじめられている、みたいにお母さんは心配してくれているみたい。そのせいで、ボーっとしてしまったのだと。
……実際、傍から見ていると、いじめられているように見えているのかもしれない。
……それよりもリーン女史の指導の厳しさの方がヤクいかも。
でも、それは言うつもりがないので他の理由を言っておく。
「ただこれから雪になりますし、その意味では確かに通うのは大変そう、だとは考えてます」
「それはそうね。道は大丈夫でも急に天気が変わってしまうと危ないわね」
そうやってやり取りしている間に、お母さんがお茶の用意をしてくれた。
カモミールのハーブティーにアイシングされたクッキーという定番といえば定番のラインナップだ。
今日は休日なので、お母さんと一緒に家事をまとめて済ませたところ。
といっても日頃からこまめにやっているので、さほどのことではないんだけど。
取り立ててやることが無いので、手持ち無沙汰で家事をしてしまった、というのが本当のところだ。
お互いに、趣味がない母娘です。
「ねぇ、ジョー」
「はい?」
改まった感じでお母さんが話しかけてきた。
「あなたやっぱり、この村を出ていくつもりがあるの?」
は?
「全然そんなつもりはないですけど」
ゲームの強制力でそんな展開があるかもしれないけど、私自身の目標としては、この村で平穏に暮らすことだ。
だからこそ、私は即座にお母さんの問いかけを否定したわけで。
すると、お母さんはため息をつきながら、こう続けた。
「うん、私もそうじゃないかって思ってたんだけどね。ハンナさんとかね……村のみんなは、ジョーが出ていくんだろうって考えてるみたいで」
え? そこまで嫌われる状況になっちゃった?




