避けるために戦いの心得を
それは多分、そうなんだろうはと思うけど。実際、最近も堆肥運んできてるしね。
でも何の作物に使うのかまでは知らない。
ロート村の農協? みたいなところに届ければ仕事は終わりだから。
それで何らかの成果があるからこそ購入してくれるわけで。だから役に立っているとは思うんだけど……
「ハラー村と違って、農業が産業のほとんどを占めるわけではない村のようですし、そうなると堆肥の悪臭をより強く嫌がるのもわかります。そういうのって頭でわかっていてもどうしようもないですし」
そして私自身は、どうしようもなくなってくれ、と考えているので、その状況を改善したいとも思ってないのが始末に悪い。
だからこそレルは、余計に苛立つのだろう。
収まる様子もなく、さらに詰め寄ってくる。
「あなたが自分の仕事に誇りを持っていて、揺るがないことは頼もしくもあります。けれどだからこそ、わたくしは自分の村の理解の無さに――」
これは収まりそうもない。
となると、対応の仕方を変えないと。
「それよりもレル」
「こうなったら――え? は、はい、なんですか?」
不穏当なことを言いかけていたレルの注意を、ギリギリのタイミングで引くことが出来たようだ。
「せっかく誘っていただいたのに、さっぱり上手く行きません。上手く歩くコツとかありませんか? リーンさんに、子供のころ具体的に言われた事とか」
そしてさらに踏み込んで、レルの思考を誘導する。
もっともレルは真っ直ぐな人なので、誘導も何も普通に尋ねれば済む話だとは思うんだけど、少しだけポイントを絞ってみた。
レルがもっと子供の頃のならリーン女史でももう少し優しく指導したと思うし、指導方針が固まってない可能性もあると思って。
その狙いは正しかったみたいで、レルは心当たりがあったのだろう。
何かを思い出す表情になった。
そして、しばらく後に……
「ええと確か《《たいかん》》を意識するようにって……」
「《《たいかん》》?」
思わずオウム返しに呟いて、その響きを変換してゆくと、
「あ、もしかして体幹かな?」
「それはなんです?」
「ええとですね……体の真ん中の軸、みたいなものですね。これがしっかりしてると、身体の動かし方が違ってくるとかなんとか……」
純粋な日本人としての知識であることは間違いないので、途中で誤魔化そうとしてみたが……
「あ、それで思い出しましたわ。貴族とは戦いの場に立つ者。礼儀作法には、根本にそれがあると――」
ボロが出そうになってしまったことに危機感を感じていた私だったけれど、レルはさらに昔の記憶を掘り起こしてくれた。
それはリーン女史の職歴が「フローレンシアの猟犬」みたいなものでは? と恐れを抱かせると同時に、私にもある知識を思い出させていた。
(もしかして、ツマヌダ格闘街がヒントになる?)
と。




