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京都には及ばない

 そのことについて私の所感を述べさせてもらう前に、もう少しこの状況を説明させてもらおう。


 リーン女史による、この礼儀作法教室はもう十年近く前から行われているらしい。

 リーン女史、いったい何歳(いくつ)なんだ? という疑問は社会通念上スルーすることにして。


 教室が始まったきっかけは、レルが《聖女》認定を受けたから、であるとのこと。

 レルの両親が《聖女》に相応しい礼儀作法を身に付けてもらおう、と越して来たリーン女史に頼んだらしい。


 こう説明されて、初めてハラー村にやって来た時のレルの言動が何となく納得出来た。

 いや、あれが礼儀作法がなっているとは言わないけれど、子供の頃ならああいう感じに拡大解釈しそうだな~と。


 で、最初はマンツーマンで行われていた礼儀作法教育だったのだけれど、やがてそれが知れ渡ってゆくと、受講希望者がたくさん現れた。

 この村からギーガーへと出る者、あるいはもっと遠くに行きたい者。


 そう思う動機は、都会で結婚相手を見つけたい、と一種の花嫁修業みたいな趣があったという事だ。

 そして十年の間に、そういう未来を掴んだ者がいるという実績が出来てしまう。


 そういうチャンスが掴めなくて、ロート村で住み続ける事となっても、礼儀作法を身に付けていることは決して無駄にはならなかったらしい。

 いわゆる民度? そういうものが向上したとの事だが……


 それについては首を捻ってしまう。


 だって今もダンスホールの隅に固まって座り、私を見ながらクスクス笑う、他の受講者たちの姿は到底民度が高いとは思えない。


 民度が高いというよりは「京都」って言う感じだ。

 ドレス姿で、それなりに着飾って――礼儀作法の教室だから、それは実務的なんだろうけど――表面上はにこやかな態度な感じがまさに。


 そんな状態なのに「うんこ聖女」というダイレクトな言葉選びによる悪口は、到底「京都」には及ばないんだけど。


 で、私としては……こういう風評は大歓迎だったりする。

 いやムカつきますけど、こういう状態は私が望んでいたものだからね。ここで私が本気で腹を立てると、話がおかしくなってしまう。


 だからこの場の問題はとことんまで、このリーン女史による体育会系の展開なんだよな。


「――はい、わかりました。席に戻ってくださっても結構です」

「は、はい」


 やっと終わった。

 と、ホッとしていると、


「背筋を伸ばして!」

「は、はい!」


 と、すぐさま叱られて、反射的に謝ってしまった。これ以上は勘弁願いたいので、慎重に歩を進め、私用に用意されていた、壁際の椅子に腰を下ろした。


 それを見計らって、リーン女史は私を見下ろしながら、こう告げた。


「とにかく、あなたは体全体の力が不足しています。最初は背筋を保つことを意識して徹底的に歩く。そこから始めましょう」


 えっと……やっぱりや~めた、はダメな感じですか?

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