色んな可能性を鑑みて同時進行を心掛けた理由
この言い訳を有効にするためには、この世界が「悪役令嬢もの」であるという前提が必要になってくる。
この段階で、随分可能性は薄い気もするんだけど、とにかく説明させてください。
「悪役令嬢もの」であった場合、恐らく私は本来の主人公という役が割り振られると思う。「本来の」なんて説明が頭に付くのだから「悪役令嬢もの」であった場合、私は主人公ではない。
つまり主人公補正を受けるのは「悪役令嬢」という事になる。
そういう補正が仕事をした場合、一番に主人公に言われるのは、
――「礼儀作法がなってない」
なのである。
次点では「妃教育も受けていないのに」だね。
そうやって本来の主人公に対して下げ進行が行われるわけだ。
あれはねぇ~。悪役令嬢の方に分があり過ぎて。あれこそ「残当」って奴になると思う。
なので妃教育はともかく礼儀作法は知っておいた方がいい、としみじみ思うんだよね。
極道も仁義の切り方を知ってるかどうかで随分扱いが違うって「マル暴株式会社」って漫画で言っていたので、多分似たような理屈だろう。
そんなわけで下手に場を騒がせないためにも、礼儀作法は知っていた方が良いのではないか? というのが私の言い訳。
ただこれが「乙女ゲーム」だとした場合、私は行きたくもない方向に向かっている可能性は高い。
ただ「聖女もの」である可能性は、現状最も高いことは確かで。
普通の異世界ものとするなら、礼儀作法を知っていることは決してマイナスにはならないはず。
言い訳を構築するのが始まりとは言え、確率論で考えればやはり礼儀作法を学ぶことは正解になるはず。
……ちゃんとした作法を教えてくれるなら。
とにかく、今はまだ何も始めてないのだ。
部活見学のノリで、そのあたりを確認させてもらうことにしよう。
~・~
「いらっしゃい。迷いませんでしたこと?」
「大丈夫でした。鐘楼は良い目印ですね」
ここが目的地ではないらしいので、馬車から降りるかどうか。そっちの方が悩ましい。それを察してくれたのか、レルが礼拝堂の裏手に回るように指示してくれた。
そこに場所を停めるスペースがあるらしい。
言われてみればそりゃそうだね、という感じで、馬も預かってくれる段取りが出来ていた。
……何だかレルが随分と熱心なんだけど。
これは強制力? それとも何か理由がある?
悩みながら指定の場所に馬車を停めて、馬を預ける。
そこから二人で連れだって歩いてゆくと――
ん? 何だか視線を感じる。レルが注目されてる……って感じではないな。
私が注目されてる? 何でだ?
その時、風の悪戯か抑えが効かなかったのか、こんな声が聞こえてきた。
「……あれよ。うんこ聖女よ」
んん? ……まぁ、理由はわかるけど。




