暇潰しはすべてに優先する
あれでしょ? スカート持ち上げて「ごきげんよう」ってやる「マリみて」みたいな事でしょ?
何となく、イメージは浮かぶけど、それ以上はさっぱりわからない。
「妃教育から逃げたい私」のEDが無ければ、私は「カーテシー」という言葉すらググらなかった。
ググったから、その分は詳しくなったと言えるけど、実際に試したわけでは無いしなぁ。
……あ、そんなに足引くんだ。
現在、レルがやってみせてくれてるから、やはりレルはもう習ってるんだろう。
ただ問題がある。
「それ靴脱いだ状態で、大丈夫ですか?」
「私もおかしいな、とは思ってる」
ロート村も日本に取り込まれたようで、靴を脱いでの生活が広まっていると聞いている。
ちなみにレルが最初にこの村に来た時のような、攻めた服装だったのはあの一回だけだ。やはりあの時、レルはレルで戦闘準備状態ではあったのだろう。
今日は山吹色から若草色へのグラデーションを魅せる生地を使ったドレス姿で、それ以外は落ち着いた装いだ。
あ、リボンを巻き込んだ髪型は健在です。
その上にちょこんと小さい帽子載せてるのは、流行なんだろうか?
「でも大丈夫。ちゃんとした場所で習う事になるから」
つまり靴を脱がない場所で、という事か。
習い事するんだから、それについては文句はない。
問題は私がそういう礼儀作法を覚えること自体が正しいのかどうか? という問題だ。習ったら最後、上流階級との繋がりが増えそうな気がする。
それは果たして正解なのか? わざわざいらないフラグを建てることになりはしないか?
そういう懸念があるわけだ。
そこで試みにレルが私を誘う理由を尋ねてみた。
「あなたね。先日、伯爵閣下とご面会為されたのでしょう?」
私の質問に、レルは呆れたように答える。
「はぁ、そういうことはありましたね」
「どうして過ぎ去った風に答えるのです? これからもそういう機会があるとお思いなさい」
「ありますか」
「あるでしょう」
そうか~
あれでフラグが立った可能性はあるか~
自信満々なレルの言葉に引っ張られている可能性はあるけど、伯爵に会った時に「乙女ゲーム」方向への展開は私も考えたし。
つまり「聖女もの」として次のシークエンスに入っていて、レルはそれを告げるための合図? それともシナリオを進めるための強制力を司っているとか?
現状、私自身も「なにをすればいいのかわからない」状態だったわけで。
「それにあなた、時間が余っているのではなくて? それを有効に使おうとは考えませんこと?」
「それは……」
「簡単に言うと、あなた《《暇》》でしょ」
「……はい」
という感じで、私は礼儀作法を学ぶことになった。




