有閑マダムになりかけている
レルの事になると、どうも説明が前後してしまう。
とりあえず、彼女がそんなことを言い出した時の状況を説明しよう。
まず平日だったことを、お伝えしなければならない。つまりレルを招いた家にはお母さんはいなかったのね。
村全体が経済的に余裕があるせいなのかどうなのか、女性たちがファッションに凝るようになって、お母さんが勤めている仕立て屋も中々忙しい。
そんなわけで、レルをもてなしたのは私。これまた最近余裕が出てきた影響があって、何と家には冷蔵庫があります。
私の解釈的には「冷蔵庫」になる食料入れだね。
魔法の力を道具によって発揮するシステムがこの世界にはあって、それがやってきた、というわけ。
これで昭和三種の神器まであと二つ。
……洗濯機ぐらいはもう出来てそうな気もするけど。
で、レルのもてなしにはシフォンケーキと冷えたミルクの出番になったわけだ。
もっともロート村でも「冷蔵庫」自体は普及しているようで、それで驚かれるということは無いんだけど。
しかし冷蔵システムがある以上、都会での朝市というものも無くなってるんだろうなぁ。あれ冷蔵出来ないからこそ必要だったシステムだから。
長期保存が出来るなら、まず廃れるのは朝市になるだろう。
都会の様子が知らないので、そもそも朝市があるかどうかがはっきりしないんだけど。
で、ここまでの説明は余談。
本当に言いたかったことは、この日が平日ということ。
つまりレルもまた平日に暇だった、という事になる。
馬に乗って――彼女は淑女らしく横乗りだ――ハラー村まで一人で来て、平日なのに出し抜けに私を訪ねてくる。
私のここ最近のスケジュールの《《あたり》》が付いていないと、行動に移せないだろう。
つまり《聖女》認定の二人は、ここ最近暇だった、という事をご理解いただきたい。
しかしそれでもレルの発言が出し抜け過ぎたのは間違いないだろう。
「礼儀作法……ですか? 私、そんなに無礼でしたか」
とりあえず、呼び水代わりにそんな言葉で受け止めてみる。
もちろん、そんな馬鹿な勘違いはしていない。
「い。いえ、そういう事ではなく。あなたが冷たいものを出してくださったのも、わたくしが乗馬でここまで来たことを慮ってくださってのこと。わたくしはちゃんと気付いておりますよ!」
うん。私もレルなら気付いてくれるだろうとは思っていた。
だからさっきの返事は、レルをからかうのが半分。そして彼女に細かいところまできちんと説明してもらうためだ。
何せ私が変に発言すると、どこで引っかかるかわからないから。
私は勘違いをしており、よつば並みに「いちからせつめいしないとだめか?」とレルに察してもらうに限る。
「わたくしが言いたいのは、そういう気遣いが根本にあるとしても、上流階級で通じるような儀礼的な礼儀作法のことですわ!」
うん……やっぱりという感じだったか。
でもレルはもう習っているんじゃないだろうか?




