すでにやり尽くしてしまったのか?
こうして私は《聖女》としてのミッションを達成した――と言っても良いだろう。
正直、これ以上何をすれば良いのかよくわからなくなってるし。
ちなみに、の話になるがこのハラー村はジャコメッティ伯爵の領に含まれており、その伯爵からじかじかにお褒めの言葉も貰っていたりする。
何せ収穫量が上がってるからね。
それに加えて、父親のテセウスが命懸けでこの伯爵領を守ったこともあって、伯爵家としては私もまたプロパガンダに使えると思ったのかどうか。
すわ、ゲーム的に新しい展開か? とも思ったが、伯爵が私に会いに来たのはその時だけだったので、ここから貴族に見初められて、みたいなルートには入らないようだ。
まず伯爵が結構な年齢だったので「乙女ゲーム」に持ち込むためには、その息子か孫、という感じになるんだろうけど、接触は無いし。
だから、このイベントは「ちなみに」の範囲に留まると思う。
伯爵に会ったという事で、それはそれなりのステータスになるとは思うんだけどね。
そして現在の《聖女》活動によって、もっと実利的な恩恵があることに、私も後から気付いた。
堆肥の発酵は、言ってみれば《聖女》の力を前払いしているようなものらしく、堆肥さえ配ってしまえば、それだけで作物の育成には十分な効果があることが判明したのだ。
つまりいちいち、麦畑や果樹園などに行かなくても良くなったというわけだ。
牧場についても堆肥によって成長した牧草を経由して十分羊毛に効果があるらしく「サイロ」の発酵にも祈りを施してはいたけど、それだって圧倒的に手間が少ない。
よって私は随分暇になってしまったのである。
その上、村全体の収穫量が増えてしまっているので、経済的にはさらに余裕が出てきてしまった。
そんなわけで普段は家の前の小さな畑で、品種改良のまねごとを試みてみたりもしてるんだけど基本的には「家事手伝い」という身分になってしまった。
暇に任せて《聖女》らしく、精神的な啓蒙活動なんかやり始めたら、せっかく手に入れた「悪臭聖女」という評判がおかしくなってしまう可能性がある。
そもそも宗教は気味が悪いし、この方向の活動はしたくない。
だからと言ってやることも思いつかないので、最近は、
――もうゴールしても良いよね?
なんてフレーズが頭の中でリフレイン。
この状態のゴールが何なのかは、これまたさっぱりわからないんだけど。
やっぱり生涯を閉じることがゴールなのか? 何て思い始めた頃、レルが現れた。
そして、こんなことを言い出した。
「ジョー。あなた、わたくしと一緒に礼儀作法を学びませんこと?」




