地価が下がる思い付き
私の思い付きとは――
この「吹き溜まり」で、肥料を発酵させることだ。この場合は堆肥と言った方がいいのかもしれない。
家畜の糞を中心にして「吹き溜まり」に集める。
そうやって集まった糞に、私はたっぷりと《聖女》の力を注ぎ込む。
こんな発想が「乙女ゲーム」に出てくるはずがない。これだけは自信をもって確信できる。
思い付いたのはレルの「サイロ」という発言が発端であることは言うまでもないだろう。
ただ、これが上手く行った場合、とんでもない臭いが発生するのは間違いない。悪臭と言い切っても良いだろう。シムシティで考えると盛大に地価が下がる感じだ。
それがわかっているのに対策せずに始めるわけにもいかない。
そこで私が思い出したのは「吹き溜まり」というゲルトおじさんの言葉だ。
そういった場所なら悪臭の拡散も防げるのではないか?
さらに都合が良かったのは、この場所がパウルおじさんの牧場よりは低い場所にあること。
悪臭の元って空気よりは重いはず。高い場所で発酵させた場合、その悪臭が下に向かって流れてゆく可能性があるはず。
この場所なら、そういう心配はない。崖が近くにあるせいで、民家が周辺にないことも幸いした。
本当に「吹き溜まり」は私の思い付きに適しまくっているわけだ。
……悪臭が空気よりも重い、何て設定がゲーム世界に組み込まれているのかは判然としないんだけど。
それならまず、糞を発酵させようという私の発想をどう処理するのかも、これまた判然としないわけで。
ただこの思い付きをゲルトおじさんとアーベル兄さんに話したところ、発想には開いた口が塞がらないレベルの反応はされたけど、堆肥を作るという発想は否定されなかった。
堆肥自体は設定されているらしい。
農作業でも畜産でもまず出てくる知識だしね。ゲルトおじさんは野生動物の糞を見定めることもあるだろうから、忌避することもないはずだ。
二人が驚いたのは《聖女》の力を糞に、堆肥に施すという発想だけに留まる……と思うが、どうだろう?
違ってもこうなったら私はやめるつもりはないんだけどね。
「それは……大丈夫なのか?」
ようやくの事でゲルトおじさんがそんな風に尋ねてきた。
「何が」大丈夫かどうかはゲルトおじさんもよくわかってないのだろう。
計画自体が上手く行くのかどうか。
堆肥に女神の力が宿るのか。
女神アリスへの冒涜ではないのか。
その辺りが、ゲルトおじさんの心配なのだろう。
それに対しては、
「とりあえずやってみます。上手く行かないなら、やめますから」
と、答えておけばいいはずだ。
だって、誰にも行く末がわからないのだし。
それにこの段階ではっきりしていることはある。
「吹き溜まり」で堆肥を発酵させれば、アーベル兄さんは近付かないはずだ。
つまりアーベル兄さんのイベントは自動的にキャンセルされるはず。
きっとそれは成果のはず……はずだ。




