子供らしくを心がけて
「ジョー、いきなり吹き溜まりに飛び込むなよ。ちゃんと確認してからだ」
アーベル兄さんがそう言って私に注意を促した。
もちろん私はそんな危険なことは思い付きもしなかったけど、子供らしさを考えるなら、そういう可能性もあるだろう。
だから私も素直に、
「うん、わかった。これ以上近付きません」
と応じておく。アーベル兄さんの注意ももっとなことだしね。
そこから師弟は無言で役割分担し、ゲルトおじさんが弓を構え、アーベル兄さんが吹き溜まりに小石を放り込んだ。
割れ目は結構広かったので、狙いがそれることもなく、小石はかなりの勢いで吹き溜まりの中に飛び込んでいった。
そしてカランカランという空洞音が返って来る。
しかしそれ以上の音は発生しない。
これは――
「多分、今は何にも中にいねぇな。俺が見て確認してくるから、ここでちょっと待っててくれ」
やっぱり何にもいないみたい。
ゲルトおじさんはそれでも慎重に事を進めてゆく。頼りになることだ。
「大丈夫だ! 何にも居ねぇ!」
ゲルトおじさんからGOサインが来たので、アーベル兄さんと頷き合って、私たちも崖の切れ目を潜って、吹き溜まりに入ってみた。
「うわ……中は結構広いんですね」
入った瞬間、私は思わず声を出してしまう。
それぐらい「吹き溜まり」は広かったのだ。
綺麗な芝生が広がっている感じではなく、崖から崩れ落ちたであろう岩があちこちに転がっているけれど、それらは「点在」というレベルでしかない。
「吹き溜まり」の奥は、そういった岩が積み重なってなだらかになっているけれど、これは問題ないだろう。
私の思い付きを頓挫させるには程遠い散らばり方だ。
……いや、これは私にとって都合が良すぎないか?
私が欲しい立地条件過ぎる。元のゲームからこんな地形があったのか?
けれど私の思い付きは「ゲーム」ではまず出てこないはずだ。それが「乙女ゲーム」なら況やである。
どうも不自然さを感じるなぁ。
「ゲルトおじさん、ここ登れるんじゃないか?」
私がそうやって悩んでいると、アーベル兄さんがそんなことを言い出した。
「吹き溜まり」の奥なら、そういうことも出来るだろけど――
「やめとけやめとけ。登っても何にも無いし、狩りに向いているポイントがあるわけでも無かったしな」
「ん? じゃあ、おじさんは登ったんだね」
「だからやめとけと」
経験者語るって奴だね。でもアーベル兄さんは納得してない感じ。
――あ!
もしかしてこの場所は、アーベル兄さんが怪我をするみたいなイベントが発生する場所なんじゃないのか? それなら「乙女ゲーム」でもありそうな気もする。
アーベル兄さんがモブっぽいのは私の主観でしかないし。
「で、ジョー。どうなんだ? この場所は? あんまりお気に召さなかったみたいだが」
「いえ」
私が難しい顔をしているのをゲルトおじさんに見られたらしい。
けれど、私はすぐさまそれを否定した。
なぜなら――
「この吹き溜まりは想像以上にいい場所でした」
――だからだ。




