二律背反を打ち破るために
まずレルの真面目さが、私に影響を与えたのは間違いない。
この部分は引っかかってない。やっぱり《聖女》という認定を受けたなら、それにも真面目に取り組むべきだと。
それについては今まで、おざなりにしていたつもりはないので改めて。
けれど近く――近いことにしておく――に同じ《聖女》がいることは、私にさらなる覚悟を促した。
それは《聖女》の比較対象が出来るという事。
スーパー小麦の記憶が無いレルは、想像しても上手く行かないだろう、と私も一瞬は考えた。
でもスーパー小麦ではなく、私の祈りで粒が大きくなった小麦の実をレルが見ても、同じように具体的に想像出来るとすぐに思い当たった。
レルの真面目さから考えると、収穫の時には必ずハラー村にやってくるだろうことは想像に難くない。
そして、その真面目さで私以上の成果をもたらす可能性は高い。何しろ今までは彼女は、具体的に何をすれば、何を想像すれば良いのかわからなかっただけなのだから。
そうなると私はレルと比較されて、村の皆から可哀想な目で見られるかもしれない。いや、それぐらいならいいけれど、私の記憶の中では大流行状態の「追放もの」へと舵を切ったら……?
そういう恐れもあって、私はさらに《聖女》として頑張るしかない、と判断したわけだ。
だがしかし、これで私が《聖女》としてネームバリューを獲得してしまうと、それはそれで厄介なことになりそう。
タイトルはよく覚えてないけど、転生して昼寝が大好きな聖女になった女の子が、教会内の派閥に巻き込まれる、みたいな漫画があった。
あれも《聖女》としての力が強すぎたために巻き込まれしまうという設定だ。
言ってしまえばその辺りの展開は王道なので、そういった展開が私に起こる可能性もある。これも避けたいところだ。
つまり、
《聖女》として名を成すか。
目立つことで厄介ごとに巻き込まれるか。
という綺麗な二律背反が成立してしまっているというわけ。
どちらかを諦めるしかないのか? と私が頭を悩ましていた時、ここで引っかかっていたレルの言葉を思い出したわけだ。
その言葉とは「サイロ」。
私の記憶ではサイロとは単純に牧草の貯蔵庫というだけでなく、サイロの中で発酵して……詳細はよくわからないけど、とにかく良い事が起こるようだ。
この発酵に《聖女》の力を加えることが出来るなら――それは《聖女》の祈りを捧げたことになるのではないだろうか?
刈り取ったことで、牧草それ自体は祈りの意味は無くなっているかもしれない。
だが、その周囲の菌の活動についてはどうなるんだろう? 特にちゃんと菌の働きだと《聖女》が認識していた場合は?
そこまで想像して、私は二律背反を成立させる上手い手を思い付いた。
まだ可能性の段階だけど、なんだかイケる気がする。
……だってこの方法はメガンテだもの。実にヤクい。




