情報交換は、差しつ差されつ
「だからそれは、わたくしという《聖女》がいるだけで、恵みは豊かになる。そういうものですから」
私の質問に答える前に、下準備としてレルが《聖女》とは何なのか? を解説してくれる流れになったので、ありがたく受け取っておくことにした。
だから胸を張る前に、ほっぺに付いたパイの欠片を何とかした方がいい。
ナプキンにもパイのクズが乗っているけど、それはそもそもそのための装備なので、いいことにしよう。
「なるほど。そうなんですね。私はそういう事がよくわかってなかったので……」
よくわかってなかったのは本当なので、自信満々に下手に出ることが出来る。
《聖女》ってそういう存在だったのか。
……いや、 ロート村のローカルな解釈かもしれない。この世界のスタンダードはよくわからないままだ。
「わかってない!? あなたはどういうものだと思っていたんですか?」
あ、丁寧語で喋るというのはパブリックイメージ的に正解だったみたい。
「ええと、何となく小麦に祈りをささげる感じ――ですか? やっぱり作物にいい影響を与えると聞いてましたから」
「そ、それはそうなんですけど……」
「じゃあ、コーポさんはどういう風に?」
こちらからも質問してみる。
情報収取は大事。
「で、ですから、わたくしは“そう”あるだけで十分だと……そういうものだと教わってきましたから」
コーポ村にはちゃんと教えてくれる人がいるんだ。
ただ多分、その教えは間違ってるんだろうなぁ。
「ところが、この村は随分豊かになったと聞きまして。それに《聖女》の在り方も随分違うと聞きまして」
やっぱりそういう流れになってしまった。
レルがわざわざ訪ねてきた理由は――
「どこがどういう風に違うのか、この目で確認しなければ、と思い立ったわけですわ」
――うん、そうだろうね。
「でも……うちの娘は、特別なことをしてる感じでは無いのよ? 小麦とか羊に近付くだけで」
おおう。さすがは軍人の嫁。随分現実的な意見で参加してきた。
それに確かに、祈るのと、収穫量が上昇したことの因果関係は証明されてない。
そしてそういう見方を私以外、それも大人から発せられたことはレルの勢いを削ぐのには有効に思える。
「そこです! 羊です! あなた羊にも《聖女》の恵みを与えているんですってね!」
あれ?
勢いが増してしまったぞ。
「この村の羊毛は随分、品質が良いと噂になっています。それも《聖女》のおかげだと。それならわたくしも、出来るはずなのです!」
……ああ、そうだね。
理屈は合っているように思えるね。
でも――
「でも私がやってることは羊に近付くだけですよ」
本当にそれだけなのだ。
他の可能性を探るなら――
「それに連れて牧草に影響があるかもしれませんけど、それは本当にどう祈れば良いのかわかりませんから……」
「それはどうしてです?」
随分、熱心だなぁ。




