当方に迎撃の用意あり
レルの勢いから、こっちは「戦いは数だよ!」理論に従って、フランちゃんとレナちゃんを呼ぼうかとも考えた。
でもフランちゃんは家の手伝いがあるし、大人しいレナちゃんを巻き込むのも気が引ける。
という事でソロモンに籠城、という感じで自宅に招くことにした。
お母さんなら、巻き込むのにあまり気が引けない。子供らしい判断と言えるだろう。それにレルをこの村に連れてきた大人も、この方が安心みたいだったし。
道すがら確認してみると、レルはハラー村の隣にあるロート村出身で、その村で《聖女》認定を受けたようだ。
隣といっても、一体どういったレベルの「隣」なのかはよくわからない。
これは偏見と言われても甘んじて受け入れるけど田舎の人って、直線で進める限りは「すぐ」とか言い出すから。そういう解釈をしがちだと私は思っている。
この場合の「隣」も似たような力が働いてる気がするなぁ。
レルの着ている服から鑑みるに、ハラー村よりは都会に近く、つまり標高が引く場所に位置しているのでは?
で、馬車に乗って真っ直ぐに登って来たから「隣」扱いになった、と私は考えている。
レルを馬車に乗せて連れてきた大人の人――親ではないみたいだった――は村長のアルブさんに会いに行って、多分それが本命の用事っぽい。
そのついでにレルを連れてきた。
――多分これが当たりっぽい。
~・~
「え? ここで脱ぐの? 靴を?」
おお、レルは倒置法で驚きを表現か。
何しろ「靴を脱ぐ生活」はランクアップしているからね。
屋内の床を一段上げて、私が見慣れた段差のある三和土もしっかり装備済み。ハラー村では完全なスタンダードを越えてクラシックスタイルになっている。
カーペットに関しては、まだ村全体に行き渡っていないけれど、我が家は《聖女》認定で優先され、きちんと敷かれているし。
レルの服を見る限り、無地のカーペットぐらいは便宜を図ってもらっても、それほど横暴ではないと確信できたし。
「……もしかしてこれが秘密なのかしら」
続けて放たれたレルの呟きで、彼女の目的についても確信してしまった。
《聖女》の威力偵察に来たんだな。いや「威力」はいらないか。
でも、落ち着くためにもお母さんによる遅滞行動の援護は欲しい。という事で焼き菓子による、おもてなしを受けてもらう事にした。
後々絡まれないように、レルの服を守るためにナプキンも用意して。
突然の来訪でなければ、バタークリームぐらいは用意できたんだけど、無い物ねだりをしても仕方がない。イチジクジャムによる――おい、パイ食わねぇか?
そこから私は波状攻撃を繰り出した。
「それで私にお話があるんですよね? 伺ってもいいですか?」
口いっぱいにパイを詰め込んだレルにそう切り出したのだ。
お腹が減ってたんだね。
……やっぱり「隣」と言っても結構な距離があるのでは?




