撃てよ!砕けよ!地獄の底に落ちるとも!
フーッ、フーッ、フーッ……
激しい呼吸音が聞こえる。誰だ? 私だ!
「風の白猿神」に対しての複雑な感情が、私から理性を奪っている。
続きが読みたい。それが叶うなら何をしても良い。その一方で、続きを書かない滝川羊については、はっきり言って憎悪していると言っても良い。
当然、富士見書房への憎しみもある。「諦めるなよ! 編集は何をしてるんだ!?」と。しかし、本気でそれをすると追い詰められた作家が死を選んでしまう可能性がある。
だから我々は何も出来ない。
何も出来なかったのだ! おのれの無力さに苛まれながら!!
「ちょ、ちょっと落ち着こう? その風の何とかが色々難しい事になってるのは、よ~く分かったから」
エリーがドン引きしながら、私を宥めようとしている。
うん、確かにこのままでは埒が明かない。それにエリーを引かせること以上に、この状態を観測している奴にも私の執念は伝わったと信じたい。
何ならこの段階で「風の白猿神」をAIに書かせる準備に入っていても良いぐらいだと思ってる。
「何となく気持ちはわかるよ。面白かったんだよね? だからこそ途中で終わっていても大賞に選ばれたんだろうし。……そうなると出版社にも問題あるわね」
「よくぞ言ってくれた。それは口に出せなかったんだよ」
「何で?」
「追い詰めたら滝川羊が書かなくなりそうで……」
「何だか誘拐されたみたいな話になってるね」
そうだ! まさに誘拐だ!
連中、ファンの気持ちを人質に取って、あのひとでなしどもめ。
そんな私の様子を見ながら、エリーはフル・フラットを傾けながら、こう訊いてきた。
「でもさ……それならAIに書かせることで納得できるわけ?」
その辺りは十分に考えている。
「《《今が》》こんな状態なのに? 私にはもう後が無い。……それにどうせ続き書かれないよ……」
「それは……まぁ。90年代だもんね。30年ぐらい経つのか」
30年……だと? やめろ! 時間を数えるな!
「それでも、そういう事やっても大丈夫なの? ええと、著作権とか倫理観とか」
「別に売ろうと思ってるわけではないから著作権は問題ない」
その辺りも十分考えてる。
「それと確かに倫理観的にヤバいというのもわかってる。でも、何度も言うけど私にはもう後が無い。これぐらいのお楽しみを期待してはダメなのか?」
「それを言われるとねぇ……あくまでそっちの説が正しかった場合だけど――ああ、そもそもそういう前提じゃないと……」
そこは考えるな。
「それに、いつまで経っても『風の白猿神』を出さない連中に倫理観がどうとか言われたくない。いや、私が悪いというなら、それこそ上等というもの。撃てよ! 砕けよ! 地獄の底に落ちるとも!」
……あ、ちょっとやり過ぎた? エリーが椅子ごと後退している。




